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消費増税・新型コロナ経済危機の対応③

■量的緩和の手を縛るYCC

 

日銀の量的緩和の手を縛っている要因は、2016年9月に導入を決めたイールドカーブ・コントロール(YCC)です。

 

国債のイールドカーブとは、償還期限ごとの国債の金利を並べたものです。通常、債権は償還期限が長いもののほうが信用リスクが高いことから金利は高くなります(順イールド)。

 

YCC10年物国債の金利を0%近傍にコントロールし、それを基準に短期国債の金利をマイナス、長期国債の金利をプラス水準に維持するというものです。長期国債の金利を維持することで金融機関の運用益確保を図ったものです。

 

需要増により国債価格が上昇すれば金利は低下します。日銀が長期国債の買い入れ額を増やすと国債価格が上昇しますから長期金利がさらに低下してしまうので、YCCが維持できなくなります。

 

YCCを撤廃することは日銀が自ら失敗を認めることになり、政策的にはやりにくいでしょう。

 

 

■日本政府は長期国債を増発すべき

 

そうであれば考えられる手段は政府の長期国債(10年物以上の国債)の増発です。長期国債の増発で財政出動の原資を得るとともに、長期国債価格が下落しますから長期金利のプラスを維持できます。そして、増発分を日銀が買い入れればよいのです。

 

日本に比べて米欧の方が新型コロナの影響が遅れていることから、量的緩和の綱引きは夏まで続くと考えられます。

 

日本はコロナ危機に加え消費増税の影響もあるのですから、最低でも米国並みの政策が必要と考えるのが当然でしょう。

 

個人的には政府・日銀の対応を見ているとかなり嫌な予感がします。安倍政権も末期に入り、安倍首相自身の政治的気力の衰えや求心力の低下も指摘されています。このままでリーマンショック後の経済危機の再来を招きかねません。

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消費増税・新型コロナ経済危機の対応②

■あまりにしょぼい日銀の金融緩和

 

次にマクロ経済政策の2つめの柱である日銀の金融政策についてです。リーマンショック後に金融政策を行わずに不況を脱した国はありません。

 

日銀はコロナ危機への対応として、ETF(上場投資信託)の購入目標額を12兆円に倍増することを決めましたが、あまりも小粒すぎると言わざるを得ません。

 

FRBは実質ゼロ金利政策の導入と7000億ドル(約77兆円)の量的緩和を決めました。ECB(ヨーロッパ中央銀行)も7500億ユーロ(約89兆円)の緩和を決めています。

 

 

■速やかに量的緩和を拡大しないとリーマンショックの二の舞

 

為替レートは各国の金融政策の綱引きで決まります。より強い力で引く国の通貨が減価します。たとえばリーマンショック後に米国は3倍以上貨幣量を増やしましたが、日本はかなり遅れて1.5倍程度に増やしたにすぎません。相対的に多い通貨は減価し、少ない通貨は増価するので、円高になってしまいました。

 

これまで黒田日銀総裁は会見の場で繰り返し「年間で80兆円を目処にした量的緩和を継続する」としてきましたが、実際の買いオペ額は20兆円程度にすぎず(最近は少し増やしていますが)、このままいくとリーマンショック後の急激な円高の再来になりかねないでしょう。80兆円ペースへの回帰が必要に思われます。

消費増税・新型コロナ経済危機の対応①

■リーマンショック級の危機迫る

 

昨年10-12月期のGDPの二次速報値が3月9日に発表され、実質でマイナス1.8%(年率換算で7.1%)で2月の一次速報値から下方修正されました。増税前から予想されたこととはいえかなり衝撃的な数字です。言うまでもなくこれは新型コロナウイルスの影響を含みません。

 

近年の大幅な実質GDPの下落率は次のとおりです。

 

・リーマンショック(2008/10-12)-2.4%(年率換算-94%)

・リーマンショック(2009/1-3)-4.8    (年率換算-17.7%)

・東日本大震災(2011/1- 3)-1.4%(年率換算-5.5%)   

・消費税8%への引き上げ(2014/4-6)-1.9%(年率換算-7.4%)

 

消費増税に新型コロナの影響を加えると、2014年の消費税率8%への引き上げ時を遥かに超え、リーマンショック級であることは間違いないでしょう。

 

 

■日本政府の緊急経済対策はかなりお粗末では?

 

コロナショックを受け、トランプ政権は1人当たり現金給付10数万円を含む約2兆ドル(220兆円)の財政支出を決めました。GDP比で約10%の規模となります。

 

一方、日本政府は無利子・無担保融資制度の導入などを決めました。現時点での報道では1人当たり2万円程度の現金給付や商品券の配布、ポイント還元、資金繰り支援の拡充などを検討中とのことで、4月に追加の対策をまとめるとしています。規模は30兆円程度と報道されています。

 

あまりにも遅いし30兆円という規模(対GDP比で5%強)はまだしも、内容もイマイチとに思います。米国にならい支援内容は真水(直接の支給額)でGDP10%程度は必要ではないでしょうか。

 

具体的には国民1人当たり10万円の給付プラス消費減税5%くらいの思い切った対応が必要に思います。これで対GDP比で10%程度になります。安倍首相は「リーマンショック級であれば消費税引き上げは行わない」としていましたが、それが起きた以上は引き下げは当然でしょう。

 

検討されているという商品券支給では実務的に煩雑で時機を逸するし、ポイント還元では効果が薄いことは前回の増税後の消費の落ち込みで既に実証済です。

 

財源は国債の発行で賄えばいいでしょう。嘉悦大学の高橋洋一教授は「現在のマイナス金利下においては国債増発は政府の金利負担がないどころか収益を生むのでどんどんやるべきだ」といいます。

良い経営理念・ビジョンの条件④

■優先順位をつける

 

前回取り上げたジョンソン・エンド・ジョンソンのクレドを読むと、顧客、社員、株主の4つのステークホルダー別に段落を分けて、各段落でステークホルダーに対して同社が負っている責任、やるべき事を書いています。

 

同社のクレドの画期的なところは、各段落が「我々の第一の責任は」「我々の第二の責任は」・・といったように、顧客⇒社員⇒社会⇒株主の順で明確に優先順位をつけていることです。

 

 

■異物混入時の対応

 

同社ではこの信条がトップから社員に至るまで浸透しているといわれています。ここで有名な事件が起きます。1982年、ジョンソン・エンド・ジョンソンの主力商品の1つである解熱鎮痛薬であるタイレノールを服用した一般消費者7人が、何者かによって混入されたシアン化合物(青酸カリ)で死亡したのです。タイレノールはアメリカでトップシェアの解熱鎮痛薬でした。

 

アメリカのどの家庭にも常備されている国民薬とも言えるような医薬品に問題が生じたことで、アメリカの消費者はパニックに陥りました。このとき、同社は即時に生産を中止し、小売店から全品を回収するという対応をとったのです。

 

採算を度外視し、回収に1億ドル以上を費やしました。さらに、直ちにホットラインを開設し、電話での問い合わせに対応できる体制を整えています。当時のCEOだったジェームズ・バークはマスコミに対し、現時点でわかっていること、わかっていないことを何1つ隠すことなく、迅速かつ真摯に説明しました。そして事件直後から、異物混入が不可能な新パッケージの開発に着手しています。

 

タイレノールはその後、三重密封構造の容器で販売を再開し、2ヶ月後には事件前の売上の80%にまで回復することができました。9月29日に最初の死亡事件が起こった後、10月6日にタイレノール全商品をリコールし、11月11日に三重密封構造の容器を数週間以内に発売すると発表したのですが、こうした素早い対応に一役買ったのがクレドでした。

 

もちろんトップからも速やかに指示が出されていたのですが、それより前に、前線の従業員が上司の支持を待たずに即座に動いたのです。自分の判断で顧客である薬局に飛び込んで販売中止を働きかけ、商品回収を始めた営業担当者もいたそうです。

 

同社のクレドが「何よりも顧客を最優先せよ」と示していたので、多くの社員が自分で考えて対応したのですが、そのほとんどが適切な行動だったのです。

 

【参考】

『全社戦略がわかる』菅野寛著 日本経済新聞出版社

 

良いビジョンの条件③

ビジョンがお題目ではなく成果を上げた例として有名なのが、ジョンソン・エンド・ジョンソンのクレド(我が信条)でしょう。

 

我が信条

我々の第一の責任は、我々の製品およびサービスを使用してくれる医師、看護婦、患者、そして母親、父親をはじめとする、すべての顧客に対するものであると確信する。顧客一人一人のニーズに応えるにあたり、我々の行なうすべての活動は質的に高い水準のものでなければならない。適正な価格を維持するため、我々は常に製品原価を引き下げる努力をしなければならない。顧客からの注文には、迅速、かつ正確に応えなければならない。我々の取引先には、適正な利益をあげる機会を提供しなければならない。

 

我々の第二の責任は全社員―世界中で共に働く男性も女性もーに対するものである。社員一人一人は個人として尊重され、その尊厳と価値が認められなければならない。社員は安心して仕事に従事できなければならない。待遇は公正かつ適切でなければならず働く環境は清潔で、整理整頓され、かつ安全でなければならない。社員が家族に対する責任を十分果たすことができるよう、配慮しなければならない。社員の提案、苦情が自由にできる環境でなければならない。能力ある人々には、雇用、能力開発および昇進の機会が平等に与えられなければならない。そして、その行動は公正、かつ同義にかなったものでなければならない。

 

我々の第三の責任は、我々が生活し、働いている地域社会、更には全世界の共同社会に対するものである。我々は良き市民として、有益な社会事業および福祉に貢献し、適切な租税を負担しなければならない。我々は社会の発展、健康の増進、教育の改善に寄与する活動に参画しなければならない。我々が使用する施設を常に良好な状態に保ち、環境と資源の保護に努めなければならない。

 

我々の第四の、そして最後の責任は会社の株主に対するものである。事業は健全な利益を生まなければならない。我々は新しい考え方を試みなければならない。研究開発は継続され、革新的な企画は開発され、将来に向けた投資がなされ、失敗は償わなければならない。新しい設備を導入し、新しい施設を整備し、新しい製品を市場に導入しなければならない。逆境の時に備えて蓄積を行わなければならない。これらすべての原則が実行されてはじめて、株主は正当な報酬を享受することができるものと確信する。

 

【参考】

『全社戦略がわかる』菅野寛著 日本経済新聞出版社

良いビジョンの条件②

良いビジョンとは、企業成果をあげられるビジョンです。具体的にはそのビジョンを聞いたステークホルダー(利害関係者)がある一定の認識や価値観を持つようになり、そのビジョンを知る前と後ではステークホルダーの行動が変化し、その変化した行動の結果、企業が目指している成果(売上や利益など)が達成できる場合です。

 

たとえばわが社はどのような価値を提供するために存在し、そのために何をどう達成するかを示したビジョンがあるとします。そのビジョンに説得力があり、そのビジョンを聞いた社員が心底納得すれば、「これは望ましい行動だからやろう」「これは相応しくないからやめよう」と判断して行動するようになります。その結果。企業成果につながるのであれば、よいビジョンということになります。

 

逆にステークホルダーの行動に何ら影響を及ぼさないビジョンは悪いビジョンです。

 

そのためには、ビジョンの設定の際に、次のことを決める必要があります

 

ビジョンによって

・どのステークホルダーに?

・どんな認識・価値観を持ってほしいのか?

・どんなアクションをとってほしいのか?

・どんな成果を達成したいのか?

 

ステークホルダーには、従業員、株主、顧客、仕入先、広く社会全般などがありますが、すべてに良い顔をすることはできません。よって、誰をメインに置くのか、どういう優先順位にするのかを明確にする必要があります。

 

【参考】

『全社戦略がわかる』菅野寛著 日本経済新聞出版社

良いビジョンの条件①

「企業のあり方」については、ビジョン、ミッション、理念、バリュー、価値、モットー、WAYなど表現は多々ありますが、ここではビジョンに統一し、良い経営ビジョンの条件について触れてみたいと思います。

 

ビジョンの構成要素は一般的に次のとおりです。

 

理念/ビジョン

存在意義/提供価値

・何のためにわが社は存在しているのか

・誰にどんな価値を提供するのか

 

目標

何を達成したいのか

・定性目標

・定量目標

 

戦略

どうやって達成するのか

・事業領域/ビジネスモデル/戦い方 など

 

経営インフラ

どんな形・仕組みでわが社は動くのか

 

価値観/文化/行動規範

何がわが社にとって「正しい考え方(やり方)」なのか

 

ビジョンを設定するということは、「何をやるか」を規定すると同時に「何をやらないか」を定めることでもあります。

 

【参考】

『全社戦略がわかる』菅野寛著 日本経済新聞出版社

TOC(制約条件の理論)②

TOC(制約条件の理論)で用いられる集中の5段階の後半です。

 

■制約条件以外のすべてを制約条件に従属させる

 

システム全体の処理速度は結局ボトルネックに依存しますから、それ以外の部分がボトルネック以上のスピードで処理しても無駄になります。

 

第1工程:20秒に1個処理できる

第2工程:30秒に1個処理できる

第3工程:15秒に1個処理できる

 

たとえば上記の生産ラインの例でいえば、第2工程の前に仕掛品の山が築かれるだけですし、第3工程は第2工程の処理待ちですから待機時間(手待ち)が増えるだけです。第1工程および第3工程の処理速度を上げるとこれがもっと顕著になります。よって、両工程は第2工程の処理速度である「30秒に1個」に合わせるべきなのです。

 

 

制約条件の能力を高める

 

ボトルネックを徹底活用したら次にボトルネックの能力を高めます。たとえば最新設備を導入したり、他の工程に負荷を分散したりします。

 

 

■制約条件が解消されたら、惰性を避けて①に戻る

 

上記の結果、ボトルネックが他にシフトすることが考えられます。

 

第1工程:20秒に1個処理できる

第2工程:30秒に1個処理できる⇒17秒に1個処理できる

第3工程:15秒に1個処理できる

 

新たなボトルは第1工程です。よって、これまでと同様のプロセスを繰り返します。

 

 

ドラム・バッファー・ロープ

 

制約条件の理論では、上記の取り組みをドラム・バッファー・ロープと表現します。ボトルネックのペースで(ドラムを叩く)、適度にバッファーを持ちながら、全体の処理速度を合わせる(ロープでつなぐ)わけです。

TOC(制約条件の理論)①

■制約条件の理論とは?

 

TOCTheory Of Constraints:制約条件の理論)とは、「どんなシステムであれ、常に、ごく少数(たぶん唯一)の要素または因子によって、そのパフォーマンスが制限されている」という仮定から出発した包括的な経営改善の哲学であり手法です(日本TOC協会)。物理学者であるエリヤフ・ゴールドラットが1984年に執筆、出版した小説『ザ・ゴール』で理論体系が公開されました。

 

TOCでは、集中の5段階というプロセスを用います。

 

  システムの制約条件を見つける

  制約条件を徹底活用する

  制約条件以外のすべてを制約条件に従属させる

  制約条件の能力を高める

  制約条件が解消されたら、惰性を避けて①に戻る

 

 

■システムの制約条件を見つける

 

制約条件とはシステムで最も脆弱な部分をいい、ボトルネックといったりします。ある生産ラインを例にします。

 

第1工程:20秒に1個処理できる

第2工程:30秒に1個処理できる

第3工程:15秒に1個処理できる

 

これを1日中毎日繰り返すとします。生産ラインの処理速度(完成品を生産するペース)は、もっとももたもたしている第2工程のペースに依存しますので、30秒に1個ということになります。この場合、制約条件(ボトルネック)は第2工程になります。

 

 

■制約条件を徹底活用する

 

最も避けなくてはいけないのは、ボトルネックが遅れてさらに全体の足を引っ張ることです。よって、第2段階ではボトルネックの徹底活用を図ります。

 

たとえば上記の例で言えば、第2工程に不良品を回さない、万が一でも第2工程がヒマにならないように、第2工程の前にバッファー在庫を設ける、第2工程内の不必要な手順を改める、収益性が高い製品を生産する、必要な生産に絞るといったことです。

危機管理初動の3C

危機が起きた場合、直後の初動でその後の結果が決まると言われています。危機管理初動の3Cというものがあります。

 

Command(指揮・命令)

その危機について、誰が指揮・命令をするかを決めること

Control(制御)

最初に打てる手を即座に打つこと

Communication(発信)

指揮官が分かりやすい言葉で危機に対する方向づけを表明すること

 

新型コロナウィルスの影響で自宅勤務やイベントの中止、休校といった事態が相次いでいます。担当者個人の判断に委ねることは困難であり、企業として3Cを意識することが必要です。

 

さて、3Cの観点から今回の日本政府の対応を簡単に検証してみると、残念ながら初動対応の遅れが気になります。WHOの緊急事態宣言の遅れがあったとはいえ、厚労省に対応を任せ一類感染症指定や入国厳格化といった措置を講じなかった点は問題に思えます。オリンピック延期の可能性や習近平主席来日延期が取り沙汰される中でようやく2月末に政府の基本方針が出ましたが、もっと早くから官邸主導で手を打つべきであったように思えます。

 

【参考】

『ビジネス・フレームワークの落とし穴』山田英夫著 光文社

 

リサイクルの本当のねらいは?

(問題)

ファッション業界ではユニクロもHMも洋服の青山も「古着を持って来ればリサイクルします」と宣伝しています。このリサイクルには地球環境への配慮以外にもビジネス上大きな狙いがあります。それは何でしょうか?

 

 

 

(答え)

タンスに空きができるのでまた服が売れる。

 

ビジネスは「元手に対してどれくらい儲けるか」で評価されます。これは「利益÷投下資本」で表され、投下資本利益率と呼ばれます。

投下資本利益率は「利益率(利益÷売上高)」×「商品回転率(売上高÷投下資本)」に分解されますが、ファストファッションは後者の商品回転率を重視するものです。リサイクルには商品回転率を上げる狙いがあります。家電販売店などでリサイクルを行っているのも同様のねらいがあると考えられます。

 

 

【参考】

『戦略思考トレーニング2 』鈴木貴博著 日本経済新聞出版社

おまけ付きの商品を買わせるには?

(問題)

小売店で売られる食品におまけが付いていることがよくあります。コンビニではおまけは商品と同梱されているのが普通ですが、スーパーの場合、あのおまけは食品メーカーの販売員がスーパーの店頭で1つ1つ商品に取り付けることも少なくないそうです。

さて、その際に販売員にはある指示が出ているそうです。おまけ付きの商品がよく売れるようにするために、販売員が気をつけるべきある工夫とは一体何でしょうか?

 

 

 

(答え)

わざとおまけの付いていない商品を一部残しておく。

 

その方が消費者が「あと少しでおまけが終わってしまう」と思って買い急ぐからです。おまけ付きの商品が売れたら、後で販売員がまた残りの商品のおまけを取り付けます。

これは希少性の原則(人は希少なものと認識したものに価値を見出す)に沿った行為といえます。

 

【参考】

『戦略思考トレーニング2 』鈴木貴博著 日本経済新聞出版社

 

コ・クリエーション②

コ・クリエーションは、現在、多くの分野で製品開発に応用されています。たとえば、ボーイング社は、787ドリームライナーの開発にあたり、世界中の12万人のボランティアの力を借りてそのデザインをつくりあげました。

 

コ・クリエーションは、顧客と企業とどちらが主導的な役割を果たすか、また、両者の関係が固定的(特定の人と行う)かオープン(様々な人々から成る集団と行う)なものかによって、4つのタイプに分類されます。

 

  コラボレーション(協同)

顧客主導型で、かつオープンな関係で行われる。たとえば、Linuxに見られるオープンソースソフトウェア開発はその典型例。

 

  ティンカリング(改良)

企業主導型で、かつオープンな関係で行われる。すでにできている製品を改良する目的で行われる。コンピューターゲーム開発で行われる例がある。

 

  コ・デザインニング(協同デザイン化)

顧客主導型で、かつ固定的な関係で行われる。一例として、顧客が考え出したデザインの人気投票をオンラインで行い、そのデザイン案を企業に提案するようなケース。

 

  サブミティング(提案)

企業主導型で、かつ固定的な関係で行われる。企業が主催するデザインコンペなどが一例。サブミティングでは、顧客は企業に直接、様々なアイデアを提供する。


コ・クリエーション

【参考】

『基本から最新まで マーケティングキーワードベスト50』田中洋著 U-CAN

 

コ・クリエーション①

■コ・クリエーションとは?

 

以前は、新製品開発というとメーカーの仕事であり、メーカーが技術や仕様を決定し、それを顧客に与えるものであるという考え方が支配的でした。しかしながら2000年代以降、顧客と企業とが手を携えて新しい製品を作ったり改善したりするプロセスの有効性が指摘されるようになりました。これをコ・クリエーション(共創)といいます。

 

レゴ社のハッカー事件

 

コ.クリエーションが着目されるようになったある事件があります。

 

レゴ社は1998年に「レゴ・マインドストーム」を発売しました。これはロボットの組立キットで、でき上がったロボットをコンピュータで動かすことができる、レゴ社の本格的なエレクトロニクス製品でした。

 

しかしマインドストームが発売されてからすぐにある事件が起きました。ハッカーたちがマインドストームのソフトウエアのコードを解読し、インターネット上で発表してしまったのです。その結果、誰でもマインドストームのソフトウエアを書き換えて思いのままロボットを作ることができるようになり、様々なロボットが世界のあちこちで動かされるようになりました。C言語やJAVAを使ってプログラミングが書けるようになったのです。

 

レゴ社からすれば、これは自社の意図と異なった結果であり、違法行為に他なりません。レゴ社はハッカーを訴えたのでしょうか?実はレゴ社はまったく逆のことを行ったのです。マインドストームのプログラミング・ソースコードをネット上で公開したのです。そしてこの対応の結果、マインドストームの売上は急上昇しました。プログラミング言語をオープンソース化することで、この製品の可能性を大幅に広げることになったのです。

 

近年では、マインドストームを使って、思いもよらない創造的なロボットが作られています。たとえば、スウェーデンのハッカーは、日本人が発明し世界に広まった数学パズルである「数独」を自分で読み解き、さらに数字をパズルに書き込んで完成してくれるロボットを作り出しました。

 

 

■創造的な顧客たちを味方につけて利用する

 

顧客と企業との関係は、考え方によっては敵対関係にある場合もあります。たとえばハッカーを自社の敵とみなす場合です。しかしレゴ社の場合、彼らは友好的なハッカーでした。友好的なハッカーたちが自社の製品のもつ可能性を引き出し、より多くの機会を作ってくれたことになります。

 

その結果、こうした創造的な顧客たちがマインドストームの宣伝をしてくれたのみならず、売上にも大きく貢献してくれたのです。

 

 

【参考】

『基本から最新まで マーケティングキーワードベスト50』田中洋著 U-CAN

プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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連絡先:rsb39362(at)nifty.com
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(お急ぎの場合は携帯電話までご連絡ください)

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