fc2ブログ

良い経営理念・ビジョンの条件④

■優先順位をつける

 

前回取り上げたジョンソン・エンド・ジョンソンのクレドを読むと、顧客、社員、株主の4つのステークホルダー別に段落を分けて、各段落でステークホルダーに対して同社が負っている責任、やるべき事を書いています。

 

同社のクレドの画期的なところは、各段落が「我々の第一の責任は」「我々の第二の責任は」・・といったように、顧客⇒社員⇒社会⇒株主の順で明確に優先順位をつけていることです。

 

 

■異物混入時の対応

 

同社ではこの信条がトップから社員に至るまで浸透しているといわれています。ここで有名な事件が起きます。1982年、ジョンソン・エンド・ジョンソンの主力商品の1つである解熱鎮痛薬であるタイレノールを服用した一般消費者7人が、何者かによって混入されたシアン化合物(青酸カリ)で死亡したのです。タイレノールはアメリカでトップシェアの解熱鎮痛薬でした。

 

アメリカのどの家庭にも常備されている国民薬とも言えるような医薬品に問題が生じたことで、アメリカの消費者はパニックに陥りました。このとき、同社は即時に生産を中止し、小売店から全品を回収するという対応をとったのです。

 

採算を度外視し、回収に1億ドル以上を費やしました。さらに、直ちにホットラインを開設し、電話での問い合わせに対応できる体制を整えています。当時のCEOだったジェームズ・バークはマスコミに対し、現時点でわかっていること、わかっていないことを何1つ隠すことなく、迅速かつ真摯に説明しました。そして事件直後から、異物混入が不可能な新パッケージの開発に着手しています。

 

タイレノールはその後、三重密封構造の容器で販売を再開し、2ヶ月後には事件前の売上の80%にまで回復することができました。9月29日に最初の死亡事件が起こった後、10月6日にタイレノール全商品をリコールし、11月11日に三重密封構造の容器を数週間以内に発売すると発表したのですが、こうした素早い対応に一役買ったのがクレドでした。

 

もちろんトップからも速やかに指示が出されていたのですが、それより前に、前線の従業員が上司の支持を待たずに即座に動いたのです。自分の判断で顧客である薬局に飛び込んで販売中止を働きかけ、商品回収を始めた営業担当者もいたそうです。

 

同社のクレドが「何よりも顧客を最優先せよ」と示していたので、多くの社員が自分で考えて対応したのですが、そのほとんどが適切な行動だったのです。

 

【参考】

『全社戦略がわかる』菅野寛著 日本経済新聞出版社

 

スポンサーサイト



プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
「中小企業診断士のための経済学入門」※絶賛在庫中!
連絡先:rsb39362(at)nifty.com
※ (at) は @ に置き換えて下さい
(お急ぎの場合は携帯電話までご連絡ください)

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR