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ストーリーを経営に活かす⑪

前回の商品のマーケティングを行なう場合の物語設定のフォーマットの例です。

 

<対象商品>

ゼリー状スポーツ飲料「しこたまゼリーZ

 

<世界観設定>

・スポーツコミックまたはスポーツ小説

・地方都市の中小企業が舞台。女性の登用とは掛け声ばかりの男性社会。

 

<登場人物設定>

●主人公設定

・池田コズエは高校を卒業し、地方の信用金庫に就職したばかりの新入社員。

・やる気まんまんだが、その意欲は空振りしがちである。

・学生時代に陸上(長距離)の選手であったが、その才能はまだ開花していない。

●敵対者設定

犬飼=総務部長兼会社の陸上部長(40代後半のオヤジ)

●協力者設定

鷹野=陸上部コーチ(30代前半でイケメン)

 

<タイトル案>

「走れ、コズエ!」

 

<物語の流れ>

●越境

六角信用金庫に就職したコズエは、犬飼総務部長の勧めで意気揚々と陸上部の門を叩く。陸上部員全員から歓迎される。

●危機

しかし蓋を開けてみると、実は女子チームとして実業団に登録されておらず、コズエはマネージャーとして起用されたに過ぎなかったことを知る。くさるコズエ。ジャンクフードのやけ食いに走り体脂肪も急激に増えてしまう。コズエは退部届けをコーチの鷹野に持っていく。

●成長

鷹野は学生時代に前途を嘱望されたが、怪我で引退。弱小実業団チームのコーチに就任していた。「くさらずにチャンスを待て」という鷹野の助言で、コズエは密かにトレーニングを再開する。コズエのトレーニングの傍らにはいつも「しこたまゼリーZ」があった。その姿を鷹野が偶然発見。コズエの才能に改めて驚愕する。間もなく実業団駅伝の日がやってこようとしていた。

●勝利

ランナーの1名が交通事故で骨折というアクシデント。7区間を7人で走らなければならないこの弱小チームにとって1名の欠落は、同時に欠場を意味していた。困惑するチームメンバー。しかし鷹野は女性であるコズエの起用を決断する。コズエは男子ばかりは走る実業団駅伝に唯一の女子ランナーとして出場する(ルール違反だがあくまでフィクション)。ラストシーン。コズエはお気に入りの「しこたまゼリーZ」を飲み、区間を颯爽と走り抜ける。

 

<ブランドインサイト>

勝負の本番で、その人の持っている潜在能力を全開させる飲料。

 

<物語の伝達方法>

レディースコミックの人気漫画家に作品を描いてもらい、雑誌でのプロダクトプレースメント・タイアップを図る。

 

【参考】

「事例でわかる物語マーケティング」山川悟著 日本能率協会マネジメントセンター

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ストーリーを経営に活かす⑩

商品のマーケティングの際の物語の設定のフォーマットは次のとおりです。

 

<対象商品>

自社の商品・ブランド

 

<世界観設定>

・どのような感じの物語か?

・ジャンル、時空間、背景、登場人物の行動様式、雰囲気などを想定してみる。

 

<登場人物設定>

●主人公設定

・対象商品の特性から判断して、どのような利用者層が主人公として適切か?

・典型的な利用者層、象徴的な利用者層を主人公として設定する。

・デモグラフィック特性だけでなく、心理的特性まで踏み込むこと。

・彼(彼女)にとって生活上の課題や悩みは何か?

・彼(彼女)の最近の状況変化は何か?

・彼(彼女)の最も良い面、優れた面は何か?

●敵対者設定

・主人公の行く手を遮る人、主人公のアイデンティティを否定する人は誰か?

社会制度や世論など、具体的な人物でなくても構わない。

 

<タイトル案>

「○○○○」

 

<物語の流れ>

●越境

・主人公はどのような世界に移行するか?

あるいは、どのような状況変化が訪れるか?

・そこでは以前と比べてどこがアンバランスか?

●危機

・新たな世界・状況の中で、主人公にどのような危機が訪れるか?

・主人公を危機に陥らせる敵対者とは、どのような存在か?

あるいは克服しなければならない課題は何か?

●成長

・主人公にどのような転機が訪れるか?

・主人公に協力する人、成長を後押ししてくれる人は誰か?

・主人公が誰かに助けてもらえる理由は何か?

・主人公はどのように課題に対応し、どのような成長を見せるか?

●勝利

・最後にどのような終わり方をするか?

・主人公にとって勝利の意味合いは何か?

・主人公は勝利によって何を(どんな価値を)得るか?

 

<ブランドインサイト>

対象商品は、物語の中で主人公をいたわったり、強化したりする重要な役割を持っている。ここでは、どんな役目を果たすものと言えるか?

 

<物語の伝達方法>

物語の効果的な伝え方を考える。実際にこの物語がそのままの形で消費者に触れることがなくても構わない。

 

【参考】

「事例でわかる物語マーケティング」山川悟著 日本能率協会マネジメントセンター

ストーリーを経営に活かす⑨

■ストーリーの例

 

商品やサービスのマーケティングで使う客を主人公としたストーリーの作り方は、以前取り上げたペルソナ、カスタマージャーニー、シナリオなどと同じです。

 

「周囲の人と共有しフィードバックが得られるスケジュール管理のためのアプリ」を例にしてみます。

 

<越境>

ユキはインターネットメディア会社に入社して3年目になり、一人前に仕事を任されるようになってきた。学生時代のまましばらく紙の手帳を使っていた。

 

<危機>

ミーティングの機会も増え、しかもミーティングの日程がコロコロ変わるようになった。先日、手帳が手元に見つからずついうっかり変更し忘れ、ミーティングをすっぽかしてしまったことが2回ほどあり、上司や同僚から冷ややかに見られてしまった。

 

<成長>

そんなとき、学生時代の友人からモバイルでも管理できるスケジュール管理サービスを薦められ、変えてみることにした。変更記入の手間も楽になり、スケジュール管理がしやすくなった。この管理サービスは、自分のスケジュールを友達にシェアして、友達からコメントがもらえる機能がある。スケジュールをシェアすると、深夜残業の予定に対して、早速友達から励ましのメッセージが届いた。残業はちょっと憂鬱だったけど、友達からの言葉で前向きに。商品開発ミーティングの予定に対しては、その領域に詳しい友達から参考情報が届いていた。

 

<勝利>

早速ミーティングで上司や同僚に薦めると、みんな「いいね」と言ってくれた。チームのメンバーの管理やフィードバック、サポートにちょうど良いといいことになり、上司が管理部に全社的な導入を提案するという。ユキの社内での評判があがった。

 

 

■ストーリー表現の注意点

 

ストーリーを作る際には、マーケティングのメッセージを「客観的な情報」ではなく、「あなたに関係する情報」に昇格させる魔法が必要です。物語の世界に消費者を招き入れ、自分があたかも主人公であるかのような意識を持たせること、消費者にとって「自分の存在」を見出す表現であることが必要です。

 

【参考】

「事例でわかる物語マーケティング」山川悟著 日本能率協会マネジメントセンター

ストーリーを経営に活かす⑧

■物語のパターンは6つだけ

 

さてストーリー(物語)といってもそう構えるものではありません。ネブラスカ大学のマシュー・ジョッカーズ教授らは、何千もの小説のデータを分析して物語を6つのタイプに分類しました。

 

1.   貧民から富豪型:不運から幸運へと上昇する、立身出世

2.   富豪から貧民型:幸運から不運へと下降する、悲劇

3.   イカロス型:一度は上昇するものの、その後に下降する

4.   オイディプス型:下降した後に上昇し、また下降する

5.   シンデレラ型:上昇した後に下降し、最後は上昇する

6.   穴の中の男型:一度は下降するものの、苦境を脱して上昇する

 

ビジネスで使う物語ではハッピーエンドが望ましいですから1、5、6でしょう。

 

 

■ユーザーを主人公としたストーリー展開

 

商品やサービスは顧客の抱える問題解決することが価値です。よって、顧客を主人公としたストーリーを描くと次のような展開になります。

 

越境:主人公に大きな環境変化が訪れる

危機:主人公は新たな世界で敵対者に叩きのめされどん底に落ちる。

成長:主人公はパートナー(自社の商品やサービス)に出会い危機を克服し成長する

勝利:主人公は目的を達成し報酬を得る

 

 

【参考】

「事例でわかる物語マーケティング」山川悟著 日本能率協会マネジメントセンター

ストーリーを経営に活かす⑦

私は仕事柄、事業プランを拝見することが多いのですが、その中で感じることがあります。少し前に創業者を対象としたあるビジネスプラン・コンテストの審査で多くのビジネスプランを拝見しました。金融機関や支援機関等の支援もあり、どれも上手くまとまっています。「自社の強み」具体的な「ターゲット層」「売上・利益の見通しとその根拠」「実現できる社会貢献」「自社の弱みを克服するために活用できるネットワーク」が綺麗に述べられています。

 

しかし感じるのは「まとまりすぎていて面白くない」ということです。経営者の想いが見えず、審査する側としてもイマイチ入り込みにくいです。

 

事業プランの書き方はおおよそフォーマット化されていますし、また客観的・論理的でなければならないという思いが強いためかもしれません。

 

確かに金融機関から融資を受けるといった場合は、事業プランに客観性・合理性・論理性は求められるでしょうが、それだけだと審査する側としても刺さらないのではいでしょうか。

 

わざわざリスクをとって起業するわけですから、何か強い想いはあるはずです。それは何も「社会に貢献したい」といった立派なものでなくてもよいと思います。「こんなのがあれば受けるんじゃないか」といった山っけのある話でも「どうしてもやりたかった」といった個人的な願望だけでもいいと思います。もう少し主観の部分を強調していいと思います。その主観の部分を語るのが物語です。

 

「高校生向け職場体験申し込みサイト」でグランプリを取られた若い企業家の方を例にしたいと思います。この方は「非常勤の高校の進路指導をして感じたことは、高校生には就職の自由がないということです。学校推薦でほぼ1社しか受けず、その会社に入ります。そして半分以上が2~3年で辞めてしまいます。私はそれはおかしいと思います。高校生にもっと就職の選択肢を与えたい、そんな想いで高校生向け職場体験申し込みサイトを始めました」と最終プレゼンで語っていらっしゃいました。

 

そもそもプレゼンがお上手ということもあるでしょうが、圧倒的に人を惹きつけるものがありました。自分の物語を自分の言葉で語ったからだと思います。

 

フォーマットどおり事業プランを書けば減点は防げるでしょうが、多くの中から選ばれるためには物語を語ることが必要ではないでしょうか。

ストーリーを経営に活かす⑥

「良い経営理念・ビジョンの条件④」で取り上げたジョンソン・エンド・ジョンソン(異物混入時の全品回収)の例や、「ストーリーを経営に活かす①」で取り上げたノードストローム(自社で扱っていないスノータイヤの返品)は、ストーリーとして半ば伝説となっています。人々の間で語り継がれ、その結果、ブランド価値の向上に貢献しました。

 

今回はもう1つアメリカのホールフーズ社の例を挙げてみます。同社はアメリカの自然食品小売業界を代表する小売チェーンです。1978年に小さな自然食品店として開業した同社は、卓越したカスタマーサービスで急成長を遂げ、現在店舗数465店、従業者数8万7千人、売上高157億ドルを誇る大企業です。

 

2007年、アメリカ・コネチカット州のある店舗で突然、レジがすべて故障してしまうというアクシデントが起きました。新しいコンピューターシステムを導入したのが原因のようでした。困惑するレジのスタッフの目の前には来店客の長蛇の列。

 

それを見た副店長のテッド・ドノヒュー氏は、すぐさま現場で決断し、スタッフにこう伝えました。「故障が治るまで、全ての商品を無料にしてください」

 

レジのスタッフは、「レジが壊れていますから、そのままお持ち帰りください」と袋に詰めた商品を次々に渡し、顧客を驚かせました。

 

店の損失は合計4000ドル(45万円)程度だったようですが、副店長のドノヒュー氏の決断を責める人は誰もいませんでした。むしろこの対応に感動した顧客から感謝の手紙が山のように届き、それが地元の新聞に大きく取り上げられ、「ホールフーズは顧客を大切にする会社」という評判をますます広める結果となりました。

 

このストーリーのマーケティング効果は、ざっと見積もっても数万ドル以上になるでしょう。45万円の費用でこれだけの効果が得られるのであれば安いものです。

 

 

【参考】

「スタンフォードでいちばん人気の授業」佐藤智恵著 幻冬舎

ストーリーを経営に活かす⑤

■物語のコミュニケーション効果

 

物語をマーケティング・コミュニケーションに取り入れることで、消費者側に次のような効果があると考えられます。

 

・興味・関心喚起効果

「聞いてみよう」という気になる

・感情訴求効果

気持ちが揺れ動く

・文脈理解効果

話の流れでメッセージを理解できる

・潜在意識刺激効果

自分でも気づかなかったことが発見できる

・行動誘発効果

主人公と同じことをしたり、同じものを持ちたいと思う

 

 

■ブランド価値につなげる

 

「ストーリーを経営に活かす②」でも触れましたが、名ブランドには必ずといってよいほどストーリーがあります。ブランドのバリューをブランドコンテンツ(ブランドの世界観を表現した広告やショートフィルム)とブランドエピソード(ブランドに関して市場に伝達されるべき事実)に乗せて語ることで、消費者側の共感を生み、コンフィデンス(ブランドに対する信念・思い込み)を醸成したり、口コミによる伝播を可能にしたりすることができます。

 

 

【参考】

「事例でわかる物語マーケティング」山川悟著 日本能率協会マネジメントセンター

ストーリーを経営に活かす④

ブランデッドエンターテイメントとは、ブランドの補完・強化のために制作されるエンターテイメントを使ったマーケティング手法です。エンターテインメントには物語が必要です。おおよそ次のような類型があります。

 

<物語開発型ブランディング>

オリジナルの物語を創作し、その世界観をブランドコンセプトにする手法。

 

<ブランドキャラクター開発>

オリジナルキャラクターを開発してブランディングを強化したり、広告コミュニケーションに活用したりする。

 

<物語広告>

テレビCM、新聞広告などのマス広告を物調で制作し、ブランドの世界を伝えていく。

 

<オウンド・エンターテインメント>

ブランドの世界観で独自コンテンツを開発し、それを軸にしたコミュニケーションを展開する手法。

 

<タイアップ商品開発>

物語の中に登場する架空商品、小道具などを実際に商品化する。あるいは物語の世界観そのものを商品化する手法。

 

<プロダクト・プレースメント>

ドラマや映画などの中に、実在する商品を意図的に登場させる手法。

 

<ブランド・インテグレーション>

商品の使用が重要性をもつ物語とタイアップする手法。プロダクト・プレースメントをより進化させたもの。

 

<シチュエーションコピー広告>

実在するコンテンツの設定やシーンをそのまま広告に使用し、タイアップ効果を上げる手法。

 

<アドバゲーミング>

ゲームやバーチャルコミュニティの中に広告的要素を入れ込む手法。

 

<プロマーシャル>

プロモーションフィルムの延長上でCMを制作する手法。

 

 

【参考】

「事例でわかる物語マーケティング」山川悟著 日本能率協会マネジメントセンター

ストーリーを経営に活かす③

■物語を生かしたマーケティング手法であるナラティブ・プランニング

 

著名なマーケティング作家のセス・ゴーディンは次のように語っています。

 

「マーケターは優れた物語の語り部であれ」

 

ストーリー(物語)を生かしたマーケティング手法をナラティブ・プランニングといいます。ターゲットとする消費者を想起させるキャラクターを主人公とした物語風の映像や文章などを発信し、消費者の心の中に「このサービスを使いたい!」「こうなりたい!」という思いを芽生えさせるものです。サントリー「伊右衛門」やソフトバンク「白戸家」、auの「三太郎」などをイメージして頂ければよいです。

 

ナラティブ・プランニングのメリットとしては次のようなことが挙げられます。

 

【創作プロセスにおいて】

・ターゲットユーザーに対する理解が深まる

・ブランドの深層の意味(インサイト)が浮かび上がる

・プランニングそのものの充実感

 

【創作された物語の活用において】

・マーケター同士のブランド理解の共通項が広がる

・消費者に対してブランド価値を伝えやすくなる

 

 

■物語で売る時代

 

企業戦略アドバイザーのロルフ・イエンセンは、製品・サービスを問わず、ほとんどの企業活動が人々に物語の喜びや感動を提供する競争になるとし、その市場のあり方を挙げました。

 

  冒険売ります。

  一体感・友情・愛

  思いやり

  私は誰

  心の安らぎ

  信念

 

物語に乗せて商品やサービスを売っていく時代なのです。

 

 

■ナラティブ・プランニングにおける記述要素

 

物語を創る上で必要となる記述要素は次のとおりです。

 

<対象商品>

自社が扱う商品・ブランド

 

<物語の世界観>

物語のジャンルや雰囲気、設定

<登場人物>

主人公:典型的なターゲットユーザー層

敵対者:主人公を否定し立ちはだかる人

協力者:主人公に協力したりアドバイスしたりする人

 

<タイトル>

物語のテーマから考案されたタイトル

<物語の流れ>

越境:主人公の状況変化

危機:主人公の危機と敗北

成長;主人公の転機、援助と成長

勝利:主人公の勝利

 

<ブランドインサイト>

この物語から読み取れる商品の真の意味

 

<物語の伝達手段>

この物語の伝え方

 

 

【参考】

「事例でわかる物語マーケティング」山川悟著 日本能率協会マネジメントセンター

『コンテンツマーケティング』新井範子、福田敏彦、山川悟著 同文舘出版

ストーリーを経営に活かす②

■ストーリーの効用

 

スタンフォード大学経営大学院のジェニファー・アーカー教授によれば、ビジネスにおけるストーリーの効用には3つあると言われます。

 

1つめはストーリーは製品や自社のブランドを売るのに大きな威力を発揮することです。情報も製品もサービスも増え続ける現代社会において、何とかして自社の製品を選んでもらうには、とにかく他社よりも目立って差別化することが必要です。

 

数多くの競合の中から選ばれるには、特別な理由が必要で、その特別な理由になりえるのがストーリーなのです

 

2つめはイノベーションの指針となることです。アーカー教授は「大きな指針を示すためにはストーリーが必要だ。ストーリーはイノベーションを加速させる。ストーリーは人の考え方、感じ方、行動を変える力がある」と述べています。

 

3つめは、ストーリーは社員のやる気を刺激するのに効果的だということです。たとえば同僚のストーリーが社内報に掲載されれば「自分も頑張ろう」と思うでしょう。

 

 

■老舗ブランドにはストーリーあり

 

老舗ブランドの商品には必ずと言ってよいほどストーリーがあります。

 

<ルイ・ヴィトン>

1912年、あのタイタニック号の事故の際に、ルイ・ヴィトンのトランクにつかまり、命が助かった人もいたと言われます。さらに、沈没から数十年後、タイタニック号の船室から遺品が引き上げられたとき、ルイ・ヴィトンのトランクの中身は水に濡れず、当時のままの姿で残っていた、という逸話まで残されているのです。

 

<とらやの小形羊羹>

小型羊羹は、15代当主・黒川武雄が考案したものです。大正時代、六大学の野球をよく観に行っていた武雄は、観戦の帰り道にいつも、「こんなに大勢の人にたやすく買ってもらえるお菓子をつくりたい」と考えていました。そんな折、たまたまフランスのコティ社の香水をもらい、化粧箱の大きさや洒落たデザインを見て「これだ!」と思いつきました。こうして、昭和5年、『夜の梅』と『おもかげ』を1本ずつアルミ箔に包んで小さな箱に入れた小形羊羹が誕生。香水から発想を得ただけあって、清楚でありながら、どこか華やかさもあるパッケージでした。

 

 

【参考】

「スタンフォードでいちばん人気の授業」佐藤智恵著 幻冬舎

 

 

ストーリーを経営に活かす①

近年、マーケティング、人事、経営企画など様々な分野で戦略的にストーリーを取り入れる企業が多くなっています。ビジネスで使われるストーリーとは、物語、実話、エピソード、逸話、伝説などを含みます。経営者がプレゼンテーションでストーリーを語るというスタイルも定着しつつあります。

 

人が感動したり興味を持ったり、共感したりするとき、そこには必ずストーリーがあります。たとえば「オリンピックで金メダルを獲った」とだけ言われるよりも、「大会前に病気を患い、一時は出場すら危ぶまれたが、我が子に金メダルを獲る父親の姿を見せたいと奮起し、つらい治療と練習の二重苦に耐え抜いた末の金メダルだった」というほうが心を動かされるでしょう。

 

経営・マーケティングにおけるストーリーの代表例として、徹底的な顧客主義を掲げるアメリカの大手デパートチェーンのノードストローム社の例を挙げてみます。

 

1970年代のある日、年老いた鉱山労働者が、スノータイヤを2つ持って、ノードストロームのアラスク・フェアバンクス店を訪れた。数年前にここで買ったが気に入らないので2つとも返品したいという。

 

スノータイヤはボロボロ。しかもノードストロームではスノータイヤを販売していないし、過去に販売したこともない。ところが、彼は「ここで買った」と言い張る。ノードストロームに買収されて模様替えをする前は、この場所でタイヤを売っていたのだという。相手をした新入店員のクレイグ・トランスはそうすれば一番良いかを考えた。その結果、地元のタイヤ店に電話をかけて、中古タイヤの適正販売価格を聞き、合計25ドルを返金することにした。なぜなら、そうすることが「カスタマー・ファースト」だと思ったからだ。

 

同社には他にも「顧客がメイシーズで買った商品を喜んでギフト包装した」「顧客が午後の会議に着るといって買った新品のシャツに、アイロンをかけてくれた」「顧客が買い物をしている間に、車を暖めておいてくれた」といった話が都市伝説のようにあります。

 

その結果、同社は顧客主義の企業としての名声を確固たるものにしたといいます。

 

【参考】

「スタンフォードでいちばん人気の授業」佐藤智恵著 幻冬舎

交渉の4つのステップ②

前回の交渉の4つのステップの続きです。具体的な内容は当ブログでも以前触れましたが振り返っておきます。

 

■交渉すべきかどうかを算定する

 

まず交渉した場合のメリットとデメリットを挙げて、「そもそも交渉するに値するか」を検討します。たとえば「相手の機嫌を損ね、人間関係を失う」といったデメリットのほうが大きく、交渉しないほうが良い場合もあります。また、交渉というと「どうしても話をまとめなければならない」と考えがちですが、自分にとって利益がないのであれば、交渉は打ち切るべきです。

 

■情報を集めて準備する

 

交渉すると決まったら、次のことを考えましょう。

 

・自分はこの交渉で何を得たいのか。

・得たい利益の最高目標と最低目標はどこか。

 

この範囲をZOPAZone Of Possible Agreement:ゾーパ、交渉が妥結する可能性のある条件範囲)と言います。できるだけ最高目標に近づけたいですが、相手の出方を見ながら譲歩します。最低目標を下回るのであれば、交渉を打ち切ります。

 

なお、利益の最低目標の基準となるものに、BATNA(バトナ:Best Altenative To a Negotiated Agreement)があります。これは、「交渉が決裂した時の対処策として最も良い案」のことです。たとえば転職活動での条件交渉で言えば、現在の勤め先の労働条件がBATNAになるでしょう。BATNAが貧弱だと交渉力は弱くなります。

 

・この交渉は、3つのパターン(分配型・価値交換型・利益創造型)のどれか

 

交渉には次の3つのパターンがあります。

 

分配型交渉:限られたパイをめぐって、相互が自分の取り分(利益)の最大化を図るために行う交渉のこと。

利益交換型交渉:パイは限られているが、自分が重要でない部分は譲り、その代わり自分にとっては重要だが相手にとっては重要でないものを引き出すというもの。

創造的問題解決型交渉:交渉当事者が協力し合ってパイを拡大するというもの。

 

できるだけ価値交換型や利益創造型の交渉にならないか検討します。

 

・協議事項を整理する

ビジネスの交渉では、協議することが1つということはまずありません。たとえば売買交渉であれば、価格、納期、支払い条件、オプション対応など協議することはいくつもあります。協議(あるいは自分にとっての利益)をできるだけ多く挙げ、優先順位や話し合う順序を考えます。

 

 

■相手の意見を聞く

 

交渉の過程で、相手の事情を多く引き出し、判断の材料にします。交渉のエキスパートは、みな「聞き上手」です。できるだけ多く相手にしゃべらせて情報を集め、こちらはあまりしゃべらず手の内を明かさないようにします。

 

 

■パッケージで提案する

 

準備段階で挙げておいた自分の複数の利益のうち、譲れるものは譲り、代わりに相手にも譲ってもらいます。ここで大事なことは「自分と相手に利益の違いはないか?」「自分には価値がないが相手には価値があるものはないか?」考えることです。

 

売り手側の優先順位が「価格>納期>支払い条件」の順で、買い手側の優先順位が「納期>支払い条件>価格」の順であれば、売り手が納期や支払い条件で譲り、買い手が価格で譲ることで、お互いが納得できる取引にまとまるでしょう。

交渉の4つのステップ①

交渉が上手な人というと、パワーネゴシエイター、すなわち押しが強かったり、その場の駆け引きが上手だったりする人をイメージするかもしれません。

しかしこれは誤りです。上手な交渉の条件は、「よく準備をする」ことです。交渉の成否は8割がた準備段階で決まるといっても過言ではありません。今回は、交渉にあたり準備すべきことを、順に取り上げていきます。

 

交渉は、次の4つのステップに分かれます。

 

①交渉すべきかどうかを算定する(ASSESS

②情報を集めて準備する(PREPARE

③相手の意見を聞く(ASK

④パッケージで提案する(PACKAGE

 

交渉の目的は、「自分の利益を最大化すること」です。よって、準備段階で自分の得たい利益を明らかにしておく必要があります。

 

交渉では相手との利害の対立があり、自分の主張がそのまま通るわけではありませんから、「譲れる部分はどこか、譲れない部分はどこか」を想定しておく必要があります。また相手の情報を多く知っていれば、交渉の過程でそれだけ様々な選択肢を提案しやすく、対立を解消しやすくなります。

 

【参考】

「スタンフォードでいちばん人気の授業」佐藤智恵著 幻冬舎

雑誌連載記事のご案内

「世相を読み解く 診断士の眼」というコラムの連載をさせていただいています月刊誌「企業診断4月号」が発売されました。今回のテーマは、「貿易赤字は悪ではない

――むしろ輸出に頼らない経済構造への転換が必要」です。


企業診断4月号


輸出から輸入を差し引いた2019年の日本の貿易収支は,米中の貿易摩擦などを背景に輸出額が5%余り減少したことから,1兆6438億円の赤字となりました。貿易赤字は2年連続とのことです。

さて貿易収支が発表されると,いまだに「赤字に転落」といった報道がされます。つまり「赤字なのだから悪いことだ」というわけです。

しかしながら,「貿易赤字は悪いことだ」という認識を持った経済学者はおそらくいないでしょう。 今回はマクロ経済学の基本的な知識を使って貿易赤字について考えてみました。

 

機会がありましたら是非お読みいただければ幸いです。

 




プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
「中小企業診断士のための経済学入門」※絶賛在庫中!
連絡先:rsb39362(at)nifty.com
※ (at) は @ に置き換えて下さい
(お急ぎの場合は携帯電話までご連絡ください)

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