メンタル・アカウント
人間は消費活動をする際に、場合に応じて様々な基準を適用します。「給料は大切に遣うが、あぶく銭は散財する」「水道光熱費はケチるがブランド品は衝動買いする」などいろいろです。人間のもつ様々な非合理的な会計勘定をメンタル・アカウント(心理的会計)といいます。
この消費者が持つメンタル・アカウントを企業が無視するとトンデモないことになります。アメリカの大手小売業者のJCペニーを例にします。同社ではほぼすべての商品の値札に希望小売価格を提示しつつ、それを端数価格にディスカウントしたり、クーポンを発行して値引き販売をしたりしていました。
これでは希望小売価格など何も意味がないと考えたCEOは、端数価格への値下げやクーポンを廃止して、値下げの上でキリの良い実際の販売価格だけを値札に提示することにしたのです。消費者の負担は変わらず、管理効率も良いと考えたわけです。なるほど合理的な判断です。
しかしながら、結果は散々で、売上は激減し株価は急落、そのCEOは更迭されました。これは顧客の取引効用を無視したケースです。JCペニーの顧客は、店での掘り出し物やクーポンによる割引を楽しみにしていたのです。