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ブランドのキャラクター①

ブランドが生まれた背景や特徴、顧客にとっての便益などをストーリーでまとめたものをブランド・ストーリーといいます。自社ブランドを買い手に印象付けるためには、自社ブランドに人格を持たせ物語を語ることが有効です。

『ストーリー・ブランディング』(ダイレクト出版)の著者であるジム・シグノレリはブランドのキャラクターを12にまとめました。ブランディングにあたっては、自社ブランドをどれに位置づけるかが求められます。

 

(1)THE PURIST(ピュアリスト)

純粋で高潔。高度に倫理的で健全かつ模範的。善い人間であること、善い振る舞いをすることを大切にする。

<指針となる言葉>

「すべてのものを思いやりのまなざしでみる」

「善い人が最後は勝利を収める」

「誰も見ていなくても正しいことをする」

<重視する価値観>

調和、平和、楽観主義、シンプルであること、清廉、無邪気、正直、幸福、誠実

<体現する人>

ジュリー・アンドリュース、ミスター・ロジャース、ダイアナ妃、マイケル・J・フォックス、オードリー・ヘップバーン

<ブランドの価値観>

飾り気のないこと、純粋、健康、簡素で心地よい暮らし

<具体的なブランド>

ディズニー、ダヴ、H20、メイク・ア・ウィッシュ基金、セサミストリート、ブリタ・ウォーター・ビュリファイアー、ホールフーズ

 

(2)THE PIONEER(パイオニア)

個人主義で、自由や冒険、魂を満たす経験を自分1人で追求する。エベレストに登るにしろ、シープ・ラングラー(本格的クロスカントリーカー)で遠出するにしろ、自分の人生を満喫するのに役立つブランドを求める。発明品にいち早く飛びつくのもこのタイプ。

<指針となる言葉>

「私が眠るのは私が死んだときだ」

「旅で重要なのは目的地ではなく旅のプロセスである」

「なぜならそれがそこにあるからだ」(エベレスト登頂を目指した冒険家の言葉)

<重視する価値観>

探求、自由、冒険、独立心、実験、自恃、覇気、挑戦、勇敢、大胆

<体現する人>

アメリア・イア・ハート、クリストファー・コロンブス、ニール・アームストロング、ジーン・キング、スティーヴン・ホーキング

<ブランドの価値観>

発見を促す

<具体的なブランド>

グルーポン、トレーダー・ジョーズ、ザ・ノース・フェイス、ジープ、ディスカバリーチャンネル

 

(3)THE ENTERTAINER(エンターテイナー)

典型的なおどけ物あるいはおふざけ屋。楽しいことが大好きな自由な魂の持ち主。今という瞬間に生きることだけを望み、それを楽しむ。相手や聴衆の心をつかむ無類の能力を持つ。ユーモアと楽しい時を提供してくれるブランドを好む。

<指針となる言葉>

「笑うのが一番の薬」

「一番価値のない日は笑いのない日」

「笑える人は貧しくない」

<重視する価値観>

ユーモア、自然さ、人を引き付ける魅力、若々しさ、笑い、社交性、軽さ、幸福、楽しさ

<体現する人>

ジェリー・ルイス、ロビン・ウィリアムズ、スティーブ・マーティン、ジェリー・サインフェルド、ジム・キャリー

<ブランドの価値観>

楽しいことやユーモアを通して顧客を楽しませる。

<具体的なブランド>

バズーカ・バブル・ガム、ドクターペッパー、ジャック・イン・ザ・ボックス、ルーニー・テューンズ、ドリトス、M&MS、コメディ・セントラル、スニッカーズ、バドライト

 

 

【参考】

『ストーリー・ブランディング』ジム・シグノレリ著 ダイレクト出版

 

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雑誌連載記事のご案内

「世相を読み解く 診断士の眼」というコラムの連載をさせていただいています月刊誌「企業診断7月号」が発売されました。」です。今回のテーマは、「不測事態に対応するために企業ができること――経営理念で優先順位を決めておくことの重要性」です。

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4月7日に新型コロナウィルスに伴う緊急事態宣言が発令され,多くの企業が営業自粛に追い込まれました。休業要請に応じないパチンコ店が話題になりましたが,自粛の判断が早かった企業とそうではない企業が見られました。

このような差が出るのは,企業としての優先順位のつけ方の違いであろうと思います。今回は不測事態における企業の意思決定について,経営理念の観点から考えてみました。

機会がありましたら是非お読みいただければ幸いです。

値上げの公平性②

■値上げの条件

 

経済学では「需要が供給を上回れば価格は上昇する(値上げは容認される)」と考えます。実際に、商品やサービスの価格を需要と供給の状況に合わせて変動させるダイナミック・プライシングは多く見られます。たとえば天候等の需要にあわせて料金を変動させるuberや季節需要にあわせて料金を変動させる航空会社などです。

 

しかしながら、前回触れたように特に値上げすることには大きなリスクが伴います。値上げが許容されるためには、次の2つの条件があります。

 

・値上げが正当であると消費者に理解させること

たとえば原材料費などコストが上がったので、遺憾だが値上げに踏み切るしかないといったことです。以前、赤城乳業のガリガリ君が60円から70円に値上げした際、「25年間頑張りましたし、値上げには消極的ですが、やむをえず年内に値上げする」というCMを打ちましたが、消費者からはあまり反発を持たれませんでした。

コストアップ要因がどれくらいなのか明示するなど値上げの根拠を客観的に示すといった透明性がもとめられます。

 

・業界全体が値上げに踏み切ること

特に業界のリーダー企業が値上げに踏み切れば、消費者もそれはやむを得ないことと受け止めます。旅行会社や航空会社の需要期の値上げが正当化されるのは、業界全体でそれを行っているからです。逆に業界全体が値上げに踏み切らない場合には、値上げは大きなリスクになります。

 

 

■どれくらいまで許されるのか?

 

需要超過で供給が追いつかない場合、値上げはどこまで正当化されるのでしょうか。行動経済学者のリチャード・セイラー教授は、個人的な経験として、おおよそ3倍くらいだろうといいます。

 

しかしながら、個人的には3倍の値上げでもかなりの反発は招きそうな印象です。先の2つの条件を満たしたとしても、3倍がぎりぎりというくらいに考えておいたほうがよいかもしれません。

 

 

【参考】

「行動経済学の逆襲」リチャード・セイラー著 早川書房

 

 

値上げの公平性①

■経済学とは異なる消費者の反応

 

行動経済学者のリチャード・セイラー教授らは、次の質問を調査対象者にしました。

 

「金物屋はこれまで雪かき用のシャベルを15ドルで売っていました。大雪が降った翌朝、この店はシャベルを20ドルに値上げしました。この金物屋の行為を容認できますか。」

 

調査の結果、「容認できる」は18%、「不公正である」は82%でした。まったく同じシャベルが日が変わった途端に値上がりしたのですから、自然な回答でしょう。

 

一方、経済学では「需要が供給を上回れば価格は上昇する(値上げは容認される)」と教えられます。実際にMBAコースの学生に同じ質問をしたところ、「容認できる」は76%、「不公正である」は24%となりました。

 

 

■人は通常価格を基準に考える

 

また次のような調査もあります。

 

「自動者の人気モデルが品薄状態になっていて、いま購入しても納車まで2ヶ月待たなければなりません。あるディーラーはこのモデルを店頭表示価格で販売していましたが、今は店頭表示価格に200ドル上乗せして売っています。」

 

「容認できる」は29%、「不公正である」は71%という回答結果でした。

 

「自動者の人気モデルが品薄状態になっていて、いま購入しても納車まで2ヶ月待たなければなりません。あるディーラーはこのモデルを店頭表示価格から200ドル値引きして販売していましたが、今は店頭表示価格で売っています。」

 

「容認できる」は58%、「不公正である」は42%という回答結果でした。

 

どちらも200ドルの値上げという点では変わりません。この調査から言えることは、それが妥当かどうかはともかくとして通常価格が参照価格(基準となる価格、アンカー)となっているということです。それよりも値上げされれば消費者は不公正に感じるということです。

 

 

■通常価格は高めに設定するべき

 

こうした結果から企業は最初にどのような価格を設定すべきでしょうか。それは、どの企業も、想定される価格設定のうち最も高い価格を「通常価格」とし、そこから外れるときは「セール」か「割引」を表示すべきです。そうすれば割引をやめても、割増をするときのようには反感をもたれずにすみます。

 

売り手も買い手も、自分たちが慣れ親しんでいる取引の条件は、当然受け取るべき権利だと思っており、そうした条件が少しでも悪化すれば、それを損失と受け止めます。この感覚がとりわけ強く表れるのが、売り手がこれまで無料で提供してきたものや、価格に含まれていたものに対して料金をとり始める時です。たとえばこれまで各種手数料や配送料がタダだったのに新たに徴収するといった時です。

 

 

【参考】

「行動経済学の逆襲」リチャード・セイラー著 早川書房

 

ハウスマネー効果とブレークイーブン効果

■ハウスマネー効果とブレークイーブン効果

 

特別定額給付金10万円をみなさんはどう使うでしょうか。貯蓄や必需品の購入ではなく、ぱっと衝動買いに使ってしまった方も多いのではないでしょうか。これをハウスマネー効果といいます。

 

ハウスマネー効果とは、苦労して少しずつ稼いだお金よりも、幸運で得られたお金のほうが、いっぺんに使われやすいというものです。「ハウス」とはカジノなどの賭博場の意味で、カジノで儲けたお金は自分のお金とは信じられず、カジノのお金でギャンブルしているように感じてしまい大胆に使われるのです。

 

またギャンブルというと、損失を一気に挽回しようと大胆な賭けにでる人がいます。

 

ブレークイーブン効果とは、損失をすると、取り戻そうとして普段よりもリスクのある行動をとろうとする心理状態のことです。

 

 

■損失を挽回できると思うと大胆になる

 

行動経済学者のリチャード・セイラー教授とマーケティング学者のエリック・ジョンソン教授の実験を見てみましょう。括弧内の数値は回答率です。

 

問題1

あなたはいま、30ドル勝ったばかりです。ではここで、次のどちらかを選んでください。

A)50%の確率で9ドルもらえて、50%の確率で9ドル失う。(70%)

B)何ももらえないし、何も失わない。(30%)

 

問題2

あなたはいま、30ドル負けたばかりです。ではここで、次のどちらかを選んでください。

A)50%の確率で9ドルもらえて、50%の確率で9ドル失う。(40%)

B)何ももらえないし、何も失わない。(60%)

 

問題3

あなたはいま、30ドル負けたばかりです。ではここで、次のどちらかを選んでください。

A)33%の確率で30ドルもらえて、67%の確率で何ももらえない。(60%)

B)何ももらえないし、何も失わない。(40%)

 

問題1の回答にはハウスマネー効果が表れています。人は利得についてはリスクを避ける傾向があるので、被験者のほとんどが普通なら、当たれば9ドルもらえて外れれば9ドル失なうギャンブルは選ばないでしょう。それが、「30ドル勝ったばかりです」と言われたら、そのギャンブルに走ろうとしました。

 

また人は損失についてはリスク追求的になるとされますが、問題2と問題3を見るとやや複雑です。問題2を見ると、損を取り戻す可能性がないときには、30ドル負けていても、リスク追求的にはなりません。しかし、問題3のように損失を挽回するチャンスが与えられると、被験者の過半数がギャンブルを選択します。

 

ハウスマネー効果もブレークイーブン効果もギャンブルのみならずビジネス上の意思決定でも見られるものす。いずれも合理的な判断ではありませんから、自分が陥っていないか冷静に振り返ることが大切です。

 

 

【参考】

「行動経済学の逆襲」リチャード・セイラー著 早川書房

 

 

顧客ロイヤルティの測定方法

顧客が「満足している」というレベルでは不十分で「感激・感動」しないとリピートまではしないと言われています。ライバルとなる商材が多く存在したり、必需性が低い奢侈品(アミューズメントなど)については特にそのことが言えます。

 

顧客のロイヤルティはどれくらいあれば望ましいのでしょうか。顧客ロイヤルティを測定するスコアにネットプロモータースコア(NPS)があります。

 

NPSでは、「この製品・サービスを親しい知人に紹介しますか?0点から10点で答えてください」という質問をし、0点から6点をマイナス1、7点から8点をゼロ、9点と10点をプラス1として計算します。そしてトータルの結果がプラスでないと顧客のロイヤルティは低く、リピートにはつながらないと判断します。

 

よく顧客アンケートで5点満点で評価させるものがありますが、それで平均が4点であったとしても、NPSに換算するとほぼゼロになります。つまり絶対リピートしたいラインより低いということです。自社の製品・サービスがリピートしてもらえるだけの満足度にあるのか注意したいところです。

 

 

【参考】

「ダークサイドオブMBAコンセプト」グロービス、嶋田毅著 東洋経済新報社

 

時短や有給取得を促す制度設計

コロナの影響で強制的にできてしまった感のある働き方改革ですが、一般的に日本は残業が長く、有給消化も少ないと言われています。徐々に会社側の意識も変わりつつありますが、残業しないことや有給を取得することへの抵抗感もあるとされています。では、時短や有給消化を促すためにはどうすればよいでしょうか。

 

日本は、超過勤務手当の割増率が低く、残業することが会社に対する貢献、もしくは忠誠心の証と受け取られます。また有給休暇を取得しないことも同様です。

 

よって、超過勤務手当の割増率を上げ、未消化の有給休暇について企業側が買い取ることを義務付ければ、残業の抑制や有給取得につながるという考え方があります。

 

残業をすればそれだけ会社に多くの残業代を強いることになるので、会社への貢献どころか負担の証に見られかねないからです。また有給を所得しないことも同様です。

 

もちろん一方で残業代が上がればそれだけ無駄に残業しようとする人が増える、有給の買取を進めれば有給を取らずに買い取ってもらおうとする人が増えるという懸念もあります。しかしながら、残業や有給未消化が会社への貢献ととらえられていることが理由だとしたら、残業代の割増率の引き上げや有給の買取は、むしろ時短や有給取得につながりやすいのではないかと思います。

 

特にホワイトカラーは一定の時間での成果を求められますから、まずはそれを認識させることが重要ですが、時短や有給取得というとどうも掛け声だけで終わってしまい、働き方改革のブームが去ると元にもどりかねません。職場への貢献や忠誠心を重視するといわれる日本人のメンタリティーを上手く活用し、社員のメリット(時短したり有給を取得したほうが会社から認められる)となるような制度設計が必要です。

 

 

部下がプレッシャーで潰されないための期待のかけ方

■期待されれば伸びるというわけでもない

 

一般的にいえば、人は期待されるほど伸びると言われます。しかしながら、周囲の期待がプレッシャーとなり、押しつぶされてしまうケースもあります。

 

エリートの親から過剰な期待をされた結果、途中で道を外してしまった、担当者としては優秀だったけれど昇進して管理職になったらから回りになってしまった、現場での結果が認められ、花形部署に移動したものの活躍できなかったといったケースはよく見られます。

 

同志社大学の太田肇教授は、周囲からの期待のプレッシャーを次の式で表しています。

 

プレッシャー=(認知された期待-自己効力感)×問題の重要性

 

認知された期待:本人が知覚している周囲からの期待の大きさ

自己効力感:自分ならできるという感覚

問題の重要性:期待に応えることが自分にとって重要なことかどうかの程度

 

自分が感じている周囲の大きさが高く、それに応えることができる自信がなく、期待に応えることが重要だと感じているほど、周囲の期待はプレッシャーとなります。

              

 

■期待すると同時に自己効力感を高めさせる

 

この式に従えば、単に「君には大いに期待している」と言って部下を励ますことは、部下にとってプレッシャーを高めてしまい、逆効果になりかねないことになります。

 

よって、同時に自己効力感を高めるような言い方をする必要があります。具体的には「君の能力があれば努力すれば達成できる」というような言い方です。

 

「問題の重要性」については、それを下げさせるような言い方は難しいかもしれません。「この仕事は大したものではないから気にしなくていい」ということは、「君には期待していない」と捉えられかねないからです。しかし、「仮にこの仕事が上手くいなくても、君のキャリアの致命的なダメージにはならない(再チャレンジの機会はある)」というような言い方は「問題の重要性」を軽減させる上手い言い方であると思います。間違っても「君の今後のキャリアがかかっているので、全力でやるように」という言い方はするべきではないでしょう。

 

【参考】

『「承認欲求」の呪縛』太田肇著 新潮社

 

人は固定的な費用には目を配らない

パブロ・ピカソにまつわるこんな話があります。ピカソが公園にいると、女性が近づいてきて、自分の絵を描いてほしいとせがみました。ピカソはしばらく女性を観察し、たった一筆で素晴らしい絵を描きました。

「私の本質を一筆でとらえてくださったのね。驚きましたわ!いかほどお支払いしましょうか?」

5,000ドルです」とピカソは答えた。

「なんですって、そんなに?ほんの数秒でしたのに!」

「いや、そうじゃありません。これまでの全人生と数秒かかったのですよ」

 

2分でカギを開けて100ドル請求する錠前屋と、1時間かけて同じ100ドルを請求する錠前屋とでは、どっちがトクでしょうか。時間が長いほうが労力がかかっていると考え、多くの人が後者のほうが得だと考えるかもしれません。しかし前者のほうが腕は確かですし、後者の腕の悪い錠前屋によって自分の時間を1時間余計に奪われているのですから、それは誤りです。

 

私たちは価値判断を下す際に、労力をもとにする傾向があり、専門性や知識、経験に対する関心を見過ごしがちです。これは限界費用(その場で追加的に発生する費用)に偏重し、固定費を軽視しているという言い方もできます。専門性や知識、経験には莫大な初期投資がかかっていますから、固定費です。たとえば専門性の高いサービスには、そのノウハウを獲得するための莫大なコストがかかっています。よく弁護士の費用が高すぎるといった話がでますが、彼らからすれば、資格取得やノウハウ獲得には莫大なコストがかかっていますから、その後の高い報酬でそれを回収しようとするのは自然なことです。

 

製品と異なり、サービスという実態が伴いにくい仕事をしていると、相手も「ちっとくらいタダで教えてくれてもいいだろう」と考えがちですし、こちらもなかなか請求できないという雰囲気がありますが、本来はそれまでにかかった固定費を回収するような料金を請求するべきでしょう。製造業が機械設備を回収するのと同じなわけですから。

 

しかし相手がなかなか応じないということであれば、1つ1つの仕事にいかに労力をかけたかをアピールするしかないかもしれません。よく無駄に厚い資料や提案書を目にしますが、顧客に価値をアピールするためには、それはそれで合理的なことなのかもしれません。

 

いずれにせよ、1つ1つの仕事に対し、どれくらいのコストがこれまでにかかっているのかを開示しなければ顧客は妥当な報酬を払わないということは理解しておいたほうがよいでしょう。

 

【参考】

『アリエリー教授の「行動経済学」入門-お金篇-』ダン アリエリー、ジェフ クライスラー 著 早川書房

過去の投資が将来を縛る(サンクコスト)

<ケース1>

あなたは自動車メーカーのCEOで、コストが1億ドルの新車の開発計画を進めている。必要な1億ドルのうち9,000万ドルを投資したあとで、競合他社がより環境に優しく、燃費が良く、手頃な車の開発を終えようとしていることを知る。あなたは新車の開発を進めるだろうか、それとも中止するだろうか?

 

<ケース2>

あなたは自動車メーカーのCEOで、新車の開発計画を予定している。開発の総コストが1,000万ドルで、まだ1ドルも投資していない。計画を開始しようというまさにそのとき、競合他社がより優れた車を設計したことを知る。この場合、1,000万ドルを投資するだろうか?

 

このような質問をすると、ケース1では「投資を継続する」、ケース2では「投資しない」という回答が圧倒的に多いといいます。しかしながら、両者とも「これから1,000万ドルを投資するか」という意味では同じあり、回答は同じでなければならないはずです。

 

ケース1の判断を迷わせているのが、過去への投資です。「ここでやめてしまっては、今までの投資が全て無駄になってしまう」という恐れが投資を継続させてしまいます。これをサンクコスト(埋没費用の罠)といいます

 

サンクコスト(埋没費用)とは、すでに投資をしてしまい、後から回収できない(埋没してしまっている)コストのことです。

 

過去の投資のせいで今後も同じ道を歩む必要はありません。合理的に考えれば、以前の投資は何も意味をもちません。さらにそれが失敗したとあっては、それはもう取り戻せない費用です。

 

より重要なのは、ゼロベースで考え、未来の価値をどう予測するかです。インテルのゴードン・ムーアやアンディ・グローブが事業の撤退やトップ人事の見直しを決めるときに、「もし新しいCEOだったら」「もしこれから参入(あるいは採用)するのだったら」どうするか?という視点を持っていたといいます。ケース1でいえば、「競合他社がすでに優れた車を出している段階で、新車開発を手がけることが妥当なのか」という観点です。

 

【参考】

『アリエリー教授の「行動経済学」入門-お金篇-』ダン アリエリー、ジェフ クライスラー 著 早川書房

メンタル・アカウント④

前回、「売り手としては先払いで一括で支払わせる」ことが合理的だと述べました。しかしながら、消費者の立場で考えると、後払いの方がよいと考えるかもしれません。たしかに現金払いよりクレジットカードでの支払いの方が財布の紐は緩みがちです。

 

大学生を対象にしたある研究によれば、学生はクレジットカードの請求額を、実際の消費額より30%も低く見積もったそうです。またMBAの学生は、クレジットカードを使うとき、商品に最大で2倍の金額を支払ったそうです。

 

クレジットカードでの支払いは後払いですが、前回取り上げた「お金が財布を離れるタイミングと、お金を払って手に入れたものを消費するタイミングとの時間差が大きいほど出費の痛みは小さい」「出費に向ける注目が小さいほど出費の痛みは小さい」を満たすのです。

 

クレジットカードで支払うことで、あとで支払うような気にさせ、かつ既に支払った気にもさせます。よって、売り手側としてはクレジットカードでの支払いを薦めることが合理的ですし、消費者としては都度現金払いのほうが無駄使いをしなくて済むでしょう。

 

では、電子マネーについてはどうでしょうか?これについては研究成果を見たことがありませんが、おそらくこれまでの話から、消費者にとっては余計な出費を伴うことになりそうです。チャージ(先払い)と実際の消費のタイミングの時間差が大きくなるし、都度の消費の際に出費を意識しなくなるからです。

 

【参考】

『アリエリー教授の「行動経済学」入門-お金篇-』ダン アリエリー、ジェフ クライスラー 著 早川書房

メンタル・アカウント③

■先払いと都度払いではどちらがよいか

 

あなたは新婚旅行で南の島に出かけるとします。次の2つのパターンのうちあなたならどちらを選ぶでしょうか。

 

<パターン1:先払い>

費用の全額をパッケージツアー会社に払い込む。かなりの高額である。しかしまとめて費用を払っているので、飲食代、ビーチタオルの使用料、ボートの使用料、島巡りの参加料などの追加費用は発生しない。

 

<パターン2:都度払い>

飛行機代、宿泊代、飲食代、ビーチタオルの使用料、ボートの使用料、島巡りの参加料など都度支払う。

 

結論からいうと、どちらがよいかというわけではありまん。しかし概して「先払いパターン」のほうが支払総額が大きいものの、全体で見た支払いの痛みも少ないようです。一度支払ってしまえば、あとは無料で提供されたかのように感じられるからです(実際には前払いで費用は発生しているのですが)。その結果、消費の満足度も高くなります。

 

一方、「都度払いパターン」はいちいち出費を気にするので、財布の紐が固くなり、支払総額は小さくなるものの、出費について都度考えさせられるため支払いの痛みが大きくなり、消費の満足度も低くなりなます。

 

 

■出費の痛みを引き起こす要因

 

出費の痛みを引き起こす要因には、次の2つがあります。

 

  「お金が財布を離れるタイミング」と「お金を払って手に入れたものを消費するタイミング」との時間差

  出費に向ける注目

 

①の時間差が小さいほど、②の出費に向ける注目が高いほど出費の痛みは大きくなります。

 

「先払いパターン」では確かに支払い時の痛みは大きいですが、実際に消費するときには、それは遥か過去の話になっており(時間差が大きい)、出費の痛みから完全に癒えています。また先払いですから、消費の都度、出費が発生しないので、出費に向ける注目もありません。

 

一方、「都度払い」では、時間差が小さく、かつ都度出費が伴うため、支払い時の痛みは大きくなります。

 

このような傾向が消費者にあるとしたら、企業としてはどのような手段を講じるべきでしょうか。もちろん、「先払いで一括で支払わせる」ことが合理的です。たとえばアマゾンプライムに一旦加入してしまえば、その後のオプションはすべてタダのように感じられるので、満足度は高くなります。

 

【参考】

『アリエリー教授の「行動経済学」入門-お金篇-』ダン アリエリー、ジェフ クライスラー 著 早川書房

 

メンタル・アカウント②

前々回、人間のもつ様々な非合理的な会計勘定について触れました。これをメンタル・アカウント(心理的会計)といいますが、他にもいくつか例を挙げてみます。

 

■割合で考えるのは正しいか?

 

新型コロナの影響による休業で、アパレル商品などではセール時期を前倒しし、オンラインショッピングでのセールを4月くらいから行っています。私たちは○○%引きという言葉に非常に弱いです。次の質問に答えてください。

 

Q1:あるシューズ店で7000円でお気に入りのスニーカーを見つけた。買おうとすると、親切な他の来店客から、「この通り沿いの別の店で同じスニーカーが5000円で売られていましたよ」と教えてくれた。その店はここから車で5分の距離にある。あなたは車を走らせるだろうか?

 

Q2:あなたはガーデンストアであなたの庭にちょうどいいパラソル付きのテーブルとイスのセットを見つけた。値段は106,000円である。ここでも親切な他の来店客から「ここから車で5分の距離の店で、同じものがセールで104,000円で売ってますよ」と教えられた。あなたは車を走らせるだろうか?

 

おそらく多くの方は、Q1ならイエス、Q2ならノーと答えるのではないでしょうか。前者なら約30%のお得、後者ならわずか2%のお得にすぎないからです。

 

しかし注意しなければならないのは、ともに2000円の得であることには変わらないということです。「5分車を走らせて2000円得する価値が有るか」という基準で判断する必要があります。

 

○○%引きという割合で考えることに私たちは慣れてしまっていますが、出費は絶対値で考えるべきでしょう。

 

 

■真面目に稼いだお金と、あぶく銭は異なる勘定に入る

 

わたしたちは、同じお金なのに心の中で別の仕分けを行っています。たとえば、溜まったポイントやギフトカードをもらうと、おそらく自分が仕事で得た報酬では使わないようなことへの出費に廻すのではないでしょうか。必定品に回すのではなく「せっかくだから、奮発して前から気になっていた○○を買おうかな」といった具合です。

 

これは、真面目に稼いだお金と、あぶく銭は異なる勘定に入るからです。先ほどと同様に経済的価値は同じであることに注意する必要があるでしょう。

【参考】

『アリエリー教授の「行動経済学」入門-お金篇-』ダン アリエリー、ジェフ クライスラー 著 早川書房

雑誌連載記事のご案内

「世相を読み解く 診断士の眼」というコラムの連載をさせていただいています月刊誌「企業診断5月号」が発売されました。」です。今回のテーマは、「AD-AS分析で考える新型コロナ経済危機――――前例のないタイプの恐慌に立ち向かわなければならない困難」です。

 

6月号ダウンロード



前回に続き,新型コロナ経済危機の対応について取り上げました。経済学のAD-AS分析を用いて,今回の経済危機がどのようなタイプのもので,どのような政策が必要かを整理しました。

機会がありましたら是非お読みいただければ幸いです。

プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
「中小企業診断士のための経済学入門」※絶賛在庫中!
連絡先:rsb39362(at)nifty.com
※ (at) は @ に置き換えて下さい
(お急ぎの場合は携帯電話までご連絡ください)

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