差別化しすぎると失敗する④
カナダのヨーク大学のノーズウォーティーらは、「ビタミン入りコーヒー」という、一般的なスキーマと完全に不一致な製品に対するイネーブラーの効果を検証しました。このとき、彼らがイネーブラーとして用いたのが「色」でした。ビタミンは野菜と意味的に強い結びつきがあるため、彼らは野菜の「色」をイネーブラーとして使ったのです。
実験では、ビタミン入りコーヒーとして、緑、赤、黒のコーヒーを用意し、それぞれの製品の評価(受容度)を測定することにより、イネーブラーとしての「色」が不一致度を和らげるかを検証したのです。
その結果、黒いビタミン入りコーヒーは、通常のコーヒーと比べて評価が有意に低かったのですが、緑や赤のコーヒーではビタミン入りコーヒーのほうが、通常のコーヒーよりも評価が高くなりました。つまり、ビタミンと意味付いた色である緑や赤をイネーブラーとして提示することによって、コーヒーにビタミンも「あり」だと理解が促進されたのです。
革新的な新製品が既存カテゴリーと「極端な不一致」をもたらす可能性のある場合、消費者の理解、受容を高めるために企業には2つの選択肢があります。
1つは、これまで説明したように、適切なイネーブラーを提示することです。「Crystal
Pepsi」が天然水から作られていれば、消費者は受け入れていたかもしれません。イネーブラーは、製品コンセプトの説明や広告に含めるメッセージ、製品そのものに関する材料・素材、色や形状などのデザインなど、様々な形態をとりえます。
もう1つは、そもそも「極端な不一致」を生み出さない他のカテゴリーや新しいカテゴリーの製品として売り出すことです。たとえば「Crystal Pepsi」の商品名を変えて、Cokeではなく7upやスプライトと直接競合させることです。
【参考】
『東大教授が教えるヤバいマーケティング』阿部誠著 KADOKAWA