私のような中小企業診断士は中小企業の事業計画書の作成支援をすることが多いです。その際には,基本的にはSWOT分析を使って外部環境と内部資源のマッチという形で書きます。「うちにはこういう強みがあって、こういったビジネスチャンスがあるからこういうプランでいきます」という書き方です。拝見する中小企業の事業計画書もそのパターンですし、一般的な経営書でも、外部環境と内部資源をしっかり分析することを勧めています。
特に公的機関や金融機関に提出する事業計画書はフォーマットが決まっていたりするので仕方がないのですが、個人的には,中小企業の事業というのは経営者の想いでなさるものと思っていますので,杓子定規にSWOT分析やPEST分析で外部環境分析の内容を盛り込んでいくのがナンセンスな気がしています。特に外部環境分析は、商圏分析が必要な場合を除いて、本当にしっかり分析するものなのか疑問を感じます。
先日、月刊誌の「企業診断」の仕事で、早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授にインタビューさせていただく機会がありました。入山教授にそのことをぶつけてみました。ちなみに入山教授は、最新刊の「世界上旬の経営理論」(ダイヤモンド社)がベストセラーになったおり、テレビ東京系列のワールドビジネスサテライトのコメンテーターを務めていらっしゃるのでご存知の方も多いかと思います。
要約すると次のようにおっしゃっていました。
・外部環境は関係ない。
・大事なのは意思なので,「自分がやりたいことをやる」ということが一番重要。
・事業を行うのは大変だが、やり抜かないといけない。やり抜かないといけないときに,外部環境と内部の強みを評価してマッチしたものをやるといったって,やりたくないものはやりたくない。自分の創りたいものへの意思がすごく重要。
・一般的に足りないのは「自分の意思への腹落ち」と「その言語化」と「(金融機関や投資家など利害関係者への)説明と説得」。
・それが弱いと、つまらない5フォースとか,PEST分析に頼ってしまう。
「事業プランは『自分の創りたいものへの意思』にこだわる」ということは、「強みと機会のマッチング」というお決まりのパターンに違和感を感じていた自分にとって思わず膝を打つ言葉でした。
ちなみに入山章栄教授へのインタビューは、月刊誌「企業診断」の1月号からおそらく3月号にかけて掲載されます。その他にも貴重な内容をお話いただいていますので、ぜひご購読をお願いいたします。