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相関関係と因果関係⑦(ビジョンに共鳴していると社内で顔がきく?)

今回は経営について次のケースを考えてみましょう。


Q1:
A社では最近、従業員に対して「ビジョン共鳴度サーベイ」を行いました。その結果、A社のビジョンに共鳴している人材ほど、社内の人脈が広い傾向にあることが判明しました。

A社はこの結果から、「ビジョンに共鳴している人材ほど、ネットワーキングに熱心である」という結論を導き出しました。

さて、この結論は妥当でしょうか?



Q2:
企業の海外進出には、「独自資本でまったく新しい現地企業を設立する」と「現地企業を買収する(あるいは合弁企業を立ち上げる)」の2つの選択肢があります。

それぞれの場合の利益率について多くのデータを確かめたところ、独自資本での進出のほうが利益率が高いことが分かりました。

さて、あなたがコンサルタントなら、海外進出を検討している経営者に独自資本での進出を薦めるでしょうか?



今回も「他の原因の排除(XがYの原因と考えられ、さらにX以外にYの原因を合理的に説明できるものが何もない場合にのみ、XがYの原因と認められる)」の例です。

A1:
社内人脈は社歴が長い人や上位者であるほど広いのではないでしょうか。この場合、「ビジョンと社内人脈の関係」のほかに、「社歴と社内人脈との関係」「職階と社内人脈との関係」なども調査した上で、もっとも社内人脈の広さと相関が強いものに着目すべきでしょう。

A2:
「独自資本か買収か」は単に手段の話で、その決定に至るなんらかの理由があるはずです。たとえば独自の技術的な強みを持っているのであれば、海外進出にあたっても、技術漏洩の可能性を回避するために独自資本を選択するのではないでしょうか。つまり利益率に影響を与えるのは、「独自資本か買収か」ではなく、「独自の強みかどうか」ということです。

実は1990年代末までは、過去のデータから「海外進出は独自資本のほうが望ましい」とされてきました。これが現ミネソタ大学のシャイバー教授の論文によってひっくりかえってしまったのです。


このように経営や経済についてデータを使ってさもこれが結論だと主張している場合でも、よくよく考えると時間的順序関係が前後していたり(原因と結果の関係が逆さま)、他の原因について考慮していなかったりといったケースはかなり見られます。まずは疑ってみるという姿勢が求められるでしょう。

【参考】
『改訂3版 グロービスMBAクリティカル・シンキング』グロービス経営大学院著 ダイヤモンド社
『世界の経営学者はいま何を考えているのか』入山章栄著 英治出版
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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
「中小企業診断士のための経済学入門」※絶賛在庫中!
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