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実現しない未来(予言の自己破壊)

■予想は裏切られる

今回は「行為の意図せざる結果」のもう片方、自己破壊的予言について取り上げましょう。自己破壊的予言は「予言がなされることで、予言がなされなかったら辿ったであろうコースから人間行動を外れさせ、その結果、予言の真実さが証明されなくなる現象」のことです。

たとえば年初に専門家が「今年は農産物が過剰になる」と予想すると、農家側では値崩れを恐れて減産するようになり、その結果、農産物の過剰状態が実現しなくなるといったケースです。

またマルクスは、資本家の搾取により労働者階級が窮乏化するため社会主義革命が実現するとしましたが、労働者保護の制度が整備されることで、西側諸国では革命が回避されたというのもこのケースでしょう。


■実現しなかった食料危機

1960年代末に「人口爆弾」という本がベストセラーになりました。これは「このままのペースで人口が増加すると1970年代には世界的に飢饉となり、数億人が餓死するだろう」というものです。確かに実際1961年から2000年にかけて世界の人口は2倍になったわけですから人口爆発による飢饉は現実味があり、1980年代に至るまで本気で人口抑制を主張する知識人が数多くいました。

しかしながらその後の品種改良や農業技術の劇的な改善(緑の革命)により食糧増産が実現し、少なくとも世界規模での飢饉は発生していません。これも将来の飢饉が迫る中でその回避にむけたイノベーションが実現したという解釈では自己破壊的予言の例と言えるかもしれません。


■資源危機は回避できるか?

石油危機も同じような話です。1970年代末、石油は1980年代には完全に不足し、2000年頃までに枯渇するだろうというのが専門家の一般的なコンセンサスでした。しかしながら省エネルギー化、代替エネルギーの開発、新たな油田の開発などにより、少なくとも当時の予測より石油枯渇のタイミングは後ずれしています。

人間の歴史は愚行の繰り返しですが、それでも少しずつ進歩しています。特にテクノロジー面では飛躍的な進歩を遂げており、今後も大いに飛躍するでしょう。地球温暖化についてはあまり知識がないので言及しませんが、これまで同様、技術の力で克服できるのではと私は期待しています。


■予想に基づいて行動すると当てが外れることも


これまで見てきたのは「予想を聞いてそれを回避するために人々が行動する結果、予想が実現しなくなる」というケースですが、「人々が予言の内容を信じて行動するために、かえって予言が外れる」ケースもあります。たとえば穴場情報がそうです。「A店は大人の隠れ家的な存在である」という情報がマスメディアによって流されると、あれよあれよと人が押し寄せて、もはや隠れ家ではなくなるといったケースです。


【参考】
「悪循環の現象学」長谷正人著 ハーベスト社
「専門家の予測はサルにも劣る」ダン・ガードナー著 飛鳥新社
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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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