fc2ブログ

経営戦略におけるいろいろなジレンマ②(オープン・アーキテクチャ戦略:後編)

前回「経営戦略におけるいろいろなジレンマ②」で、オープン・アーキテクチャ戦略とは、予め独立性の高いモジュールに分解し、モジュール間のインターフェースを社会的にオープンにする戦略であり、ハイテク分野で採用される傾向があることについて触れました。

オープン・アーキテクチャ戦略には幅広い協働を促すという効果があるものの、その一方で完成品メーカーの収益性を圧迫するという副作用が生じる場合があります。今回もパソコン市場を例に考えていきましょう。


■オープン・アーキテクチャ戦略の落とし穴

アップルやインテルなどのモジュール・メーカーは、その後、IBM以外のパソコンメーカーにも採用されることで急速に事業を拡大し、業界内での影響力を増していきました。言い換えればモジュールはどの企業でも調達できます。

さらにどのように各モジュールを完成品に組み立てるのかのノウハウ・設計図(システム統合技術、リファレンスデザイン)もモジュール・メーカーを通じて販売・公開されています。つまりどのような企業でも組み立て可能で(注)、その結果、市場への参入が激化することになりました。

一方、力をつけた一部の有力なモジュール・メーカーは、完成品メーカーよりも力関係で上になり、高めの価格を完成品メーカーに請求することになります。このことと市場への参入激化が合わさって完成品メーカーの収益は急速に悪化することになります。


■オープン・アーキテクチャ戦略のジレンマ

IBMがパソコン事業をレノボに売却したことが典型的であるように、価格競争力で劣る多くの日本・米国メーカーのパソコン事業は不採算化しており、同様の構造が見られるデジタル家電・デジタルカメラ分野でも日本メーカーの撤退が相次いでいます。

早期に高付加価値の製品を開発するために、完成品メーカーはオープン・アーキテクチャ戦略を採用するしかありません。前回「経営戦略におけるいろいろなジレンマ①」で見たVTRでのデファクト・スタンダード競争においても、クローズド・ポリシーを採ったソニーに対し、オープンポリシーを採った日本ビクターが勝利したことも同様の例です。

しかしその一方、採用しても「庇を貸して母屋を取られる」で収益基盤が確保できないというジレンマが生じることになります。
 

注:
完成品メーカーは、単にモジュールを組み立てるだけの存在にすぎず、セットメーカーとかアセンブラーと呼ばれることが多いです。

【参考】
『MOT“技術経営”入門』延岡健太郎著 日本経済新聞社
スポンサーサイト



コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
「中小企業診断士のための経済学入門」※絶賛在庫中!
連絡先:rsb39362(at)nifty.com
※ (at) は @ に置き換えて下さい
(お急ぎの場合は携帯電話までご連絡ください)

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR