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経営戦略におけるいろいろなジレンマ④(イノベーションのジレンマ:中編)

イノベーションのジレンマとは、リーダー企業は主要顧客からの要望に対応するために持続的なイノベーション(インクリメンタル・イノベーション)に邁進し、破壊的イノベーション(ラディカル・イノベーション)に対応できなくなることを言いました。今回はカメラ業界を例に考えていきましょう。


■ミノルタの躍進

1986年はカメラ市場において1つの転機になりました。α-7000の大ヒットで一眼レフカメラの国内市場シェアで初めてミノルタがキヤノンを抜きトップに躍り出たのです。当時の国内生産量での一眼レフカメラ市場のシェアは、次のとおりです・

 1 ミノルタ 35.6%
 2 キヤノン 20.0%
 3 日本工学 14.7%
 4 旭光学  10.9%
 5 オリンパス 7.4%


■デジタルカメラの登場

市販のデジタルカメラの登場は1986年のキヤノンのRC-701ですが、ボディのみで39万円(システム全体で500万円)と高額でとても一般に受け入れられるものではありませんでした。

現在のデジタルカメラの原型といえるのは、カシオ計算機が1995年に発売したQV10になります。当時増加しつつあったパソコンユーザーの、自分で撮影した画像をパソコンに取り込んで年賀状などに加工したいというニーズを掴みヒットしましたが、画像は荒く、それまでの銀塩カメラ(スチルカメラ・フィルムカメラ)を代替するものとは考えられていませんでした。

カメラの一般ユーザーの多くは素人でデジタルカメラの発展性を見抜いていたわけではなく、むしろ銀塩カメラの改良を望んでいたわけですから、リーダー企業のミノルタは銀塩カメラの改良、具体的には自動焦点・自動露出、フィルム装填の容易さなどに邁進していくことになったのです。


■入れ替わる市場シェア

しかしながらデジタルカメラが銀塩カメラと同等あるいはそれ以上の性能を持ち始めるとどうなったでしょうか。デジタルカメラと銀塩カメラでは多くの共通技術がありますが、基本的には異なる技術体系に属します。よってデジタルカメラ市場で出遅れたミノルタは、カメラ市場でその地位を凋落させていくことになったのです。

国内出荷台数で初めてデジタルカメラが銀塩カメラを上回った2003年のデジタルカメラ市場のシェアは次のとおりです(国内出荷量ベース)。

 1 キヤノン 16.6%
 2 富士フィルム 15.0%
 3 ソニー 14.6%
 4 カシオ計算機 13.0%
 5 オリンパス 12.0%

先に挙げた1986年の市場シェアと比べると、メインプレイヤーが大きく変わったことが分かります。1986年にシェアがトップだったミノルタは、2003年にコニカと経営統合し、2006年にはすべての写真関連分野から撤退することになります。


■スマートフォンの普及

その後、スマートフォンの普及により、コンパクト型デジタルカメラの出荷台数は2010年の1億858万台から2013年は4571万台に沈み、レンズ交換式も2012年の2016万台から2013年は1713万台に減少しています。スマートフォンはデジタルカメラにとっての破壊的技術であったことが分かります。


【参考】
『技術経営―未来をイノベートする』山田肇著 NTT出版
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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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