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悪魔の証明

■ないものをないと証明するのは悪魔の証明だ

甘利前経済再生担当相の金銭授受問題について、2月3日の衆院予算委員会で安倍首相と岡田民主党代表との討論がありました。(以下、要約)


岡田氏:甘利氏はグレーだ。甘利氏が、大きな権限を持ってアベノミクスの司令塔、TPPの最終交渉をした。きちんと検証すべきではないか。

首相:週刊誌報道がTPP交渉や経済財政政策に影響するのか。するはずないじゃないですか。そんなことは一切ないということははっきりと申し上げたい。

岡田氏:TPPは農家に死活問題だ。週刊誌報道ではなく、こうしたお金にルーズな事務所、あるいは本人が大きな権限を持っていたことに、危機感を持つべきだ。しっかりと確認すべきだ。

首相:公党の代表として嫌疑をかけるなら、具体的にどの品目に影響を与えたか言わないと、ただの誹謗中傷だ。週刊誌報道に頼らず、具体的な案件をいってほしい。

岡田氏:政策が政治献金で影響されることがないと断言したのはあなただ。断言した以上、その根拠を示す責任がある。

首相:ないものをないと証明するのは悪魔の証明だ。あると言うのなら、あると主張するほうに立証責任がある。ないものはないと言うしかない。あると言うなら1つでも具体的なことを言ってくださいよ。


■悪魔の証明とは

悪魔の証明とは、「ある事実が『全くない(なかった)』」というような、それを証明することが非常に困難な命題を証明すること」です。

たとえば「東京都内にデング熱を持った蚊がいる」ということを証明するとしたら、東京都内でデング熱を持った蚊を1匹捕まえてくればいいですが、「東京都内でデング熱を持った蚊はいない」ということの証明は都内全域を探査しなくてはならず事実上不可能であるというような場合、悪魔の証明と言います。

「していないこと」「存在しないこと」の証明は、そもそも不可能に近いということですね。よって、通常は「ある事実が存在する(した)」と主張する側に立証責任があります。


■無罪を証明できないかぎり有罪?

刑事事件において、「被告が無罪を証明できないかぎり有罪である」ということは、もちろんありません。あくまで検察側に当該被告によって犯罪が行われたことの立証責任があるわけです。

最初に検察側が当該被告による犯罪を立証したら、それに対して被告側は反対立証(アリバイ証明や物理的な困難さの提示)を行う必要がありますが、あくまで検察側の立証が完全ではないということを示すだけで、絶対に犯罪していないことそのものを証明しなくてもよいわけです。


■否定できないから正しいわけではない

今回の国会の議論は、当初、岡田氏は「甘利氏に確認したらどうか」というレベルで止めようと思っていたのに、思わぬ首相の反撃でつい「影響がなかったことの立証」を求めてしまい、逆に「影響があったことの立証」を求められてしまったということでしょう。

「あると主張する側に立証責任がある」という前提を考えれば、攻め方が甘かったので立証責任が入れ替わったケースと言えます。事実、岡田氏は金銭授受の影響を証明できずに議論が終わったという印象が残ります。証明できないことに立ち入ってしまったということでしょう。

ただし、「悪魔の証明」はあくまで立証に関する議論であり、「していないこと」「存在しないこと」の証明が難しいとしても、実際に「していないかどうか」「存在しないかどうか」はわかりません。

「神は存在する。なぜなら神が存在しないことを証明できないからだ」というのはおかしな話で、せいぜい言えるのは神は存在するかもしれないという程度です。「否定できないから正しいわけではない」というわけです。


【参考】
『科学研究とデータのからくり』谷岡一郎著 PHP研究所
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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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