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寡占市場における競争②

前回(寡占市場における競争①)http://bgeducation.blog.fc2.com/blog-entry-118.htmlに続き、携帯電話市場の企業行動について考えてみましょう。各携帯電話メーカーは何が何でも価格競争を回避したいはずです。そのためにはおおよそ次のような方向性が考えられます。


■価格協定を結ぶ

どこかが価格競争をしかけると他社もそれに追随し業界全体が価格競争になってしまうのであれば、事前に値下げしないよう価格協定を結んでしまえばよいわけです。

しかしながら業界企業間の価格協定はカルテル(談合)であり、示し合わせて高い価格を維持すれば消費者利益に反することになります。よって独占禁止法(自由競争を阻害する要因を取り締まる法律)違反になります。

また自社だけ抜け駆けして値下げすれば需要をひとりじめでき短期的には利益が増えることは自明なので、各社は常に協定を破ろうとするインセンティブがあります。たとえばOPEC(石油輸出国機構)で価格維持のための石油の減産が決まっても、必ずどこかの国が裏切って増産してしまい、結局、協定が反故にされてしまったといったケースがあります。

このように価格協定の締結は現実的ではないのですが、一定期間の競争を通じて企業間で「価格競争をしない」という暗黙の了解が形成されることがあります。これは事実上の価格協定といってよいと思います。


■価格比較できないようにする

製品やサービスの客観的な比較ができる場合、価格競争になります。たとえばA社とB社で同内容ということが客観的に分かれば、消費者はより安い方を選ぶことになり、供給側としては値下げせざるを得ません。そうであるなら、最初から客観的に比較できないようにすればよいわけです。

たとえば各携帯電話会社で少しずつ内容が異なるサービス・パッケージを提供すれば、消費者は客観的な価格比較ができないようになります。
経済学者の飯田泰之氏(明治大学准教授)は、値下げさせるためには業者間でサービス・パッケージを統一させればよいと主張しています。


■機能面やイメージ面での差別化競争

価格以外で競争するのであれば、機能面やイメージ面での差別化競争を行うことになります。たとえばスマホの新機種をいち早く販売する、魅力的なコンテンツを提供する、ブランドイメージを確立するといったようなことです。機能やイメージは、価格と比べて、あまり客観的な評価・比較ができませんから、より高い金額をユーザーに請求しやすくなります。

価格競争に陥っていないものとしてブランド商品があります。これはブランドに対する消費者の好意的なイメージを醸成する(消費者の主観的・情緒的・感情的価値に訴求する)ことで客観的・合理的な商品比較を回避している例と言えます。

言ってしまえば、「価値が客観的によく分からないもののほうが比較されずに高い価格をふっかけやすい」ということですね。

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No title

TEHL先生  いつも勉強になるブログ楽しみにしています。
今回のなかで「経済学者の飯田泰之氏(明治大学准教授)は、値下げさせるためには業者間でサービス・パッケージを統一させれば・・・」というのは面白い観点ですね。一方 寡占市場の大手は なんとか差別化を図るためにあの手この手の4P戦略を展開しとくに販売促進面では膨大な広告宣伝費をかけてブランドイメージアップをはかっていますね。ビール業界、銀行業界、生保業界、石油元売り、などなど寡占化がどの業界でもますますすすんできてるなかで規模の利益を享受できない
中小企業が生き残っていくあるいは活躍していくのはニッチな市場で顧客満足のための知恵と実行力、スピードチームワークなどが必要でしょうね。 テーマをもとにもどすと
寡占かの進んでいる銀行業界でも今回の金利の引き下げなどの事態でも お互いの出方をみていつのタイミングでどれだけどの金利を(定期預金、普通預金、ローン
企業向け貸出金利ほか)下げるかを それぞれの
銀行担当者が頭を痛めているところです。これも
もし情報をお互い交換して協調行動というのは法律で
厳しく規制されています。  などなど
脈略のないコメントでした。

No title

原田様
コメント有難うございます。
実際は他社(リーダー)をみて価格を決めるというところが大きいでしょうね。
講義でも少しお話しましたが、当事者ではない立場で言うと今回のマイナス金利問題はネガティブ面での報道が多すぎ、銀行側の対応としてもセンシティブすぎるような気がします。
さて日銀当座預金に金利がつくのも変ですし、260兆円の中でマイナス金利が適用されるのは10兆円しかないわけで、当座預金金利がないとすごく困る銀行経営って?という気がしてしまうのです。
といいつつそういえば診断士は銀行系の受講生の方が多かったなあとあとで後悔してみたりも(笑)。

No title

先生のいつものロジカルでわかりやすい分析でぜひ今回の
マイナス金利のねらい、予想効果(中長期の期間での) たとえば 日本金利↓→海外投資増→円安→輸出増→Y↑などなど いろいろな
仮説をもうけて ご説明いただくと幸いです。もちろん個人的意見ということで。

No title

当座預金へのマイナス金利導入から、長期国債のマイナス金利までの流れは、個人的に一度整理したいと思います。どこまでやれるか分かりませんが。こういうことになると流動性の罠とか説明しにくくなっちゃうんですよね(笑)。
プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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連絡先:rsb39362(at)nifty.com
※ (at) は @ に置き換えて下さい
(お急ぎの場合は携帯電話までご連絡ください)

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