FC2ブログ

価格競争を避けるためのコミットメント①

前回(寡占市場における競争②)http://bgeducation.blog.fc2.com/blog-entry-119.htmlに続き、価格競争の回避策について考えてみます。今回はゲーム理論で取り上げられるコミットメントについて見ていきましょう。


■ゲーム理論とは

ゲーム理論とは、2人以上のプレイヤー(個人・企業・国家など)の意思決定や行動を分析するものです。自分にとっての利害は自分がとる行動だけでなく、他の様々な人々の行動の影響も受けることになります。よって自分の利益を高めるためには、他人がどのようなインセンティブを持ち、どのように行動するかを予め分析する必要があります。

ゲーム理論の考え方は、ミクロ経済学で取り上げられてきた経緯がありますが、経営学(経営戦略)をはじめ社会科学全般での応用も進んでいます。

以前の経営戦略論では、相手の出方を見るというより、どちらかと言えば、「市場環境を分析して頑張って業界内で独自の地位を築き上げる(ポーターらのポジショニング・アプローチ)」「他社を圧倒する何らかの組織的な能力を身に付ける(資源アプローチ)」という主張が優先されました。

しかしながら自社の戦略は他社の戦略によっても影響を受けるでしょうし、自社も他社もいくつかの戦略オプション(選択肢)を持っているのが普通です。このような状況の中で他社の出方を見つつ自社の戦略を考えるのは合理的であり、さらに他社に働きかけて自社にとって都合が良い状況を築き上げることさえ可能となります。


■コミットメント

コミットメントとは、「自分が将来にとる行動を表明し、それを確実に実行することを約束すること」です。決意を言葉で表明するだけでなく、他の行為によって代替する場合もあります。

たとえば背水の陣があります。自軍の兵士の士気を鼓舞するためのもの(自分に対するコミットメント)と捉えがちですが、敵に対して退却しない(最後まで戦う)という意思を示すことで敵の動揺を誘う(相手に対するコミットメント)というねらいもあります。

業界内で他社が低価格をしかけることを止めさせるために、自社が「他社が低価格をしかけてきたら我が社は必ずそれよりも低い価格にする」というコミットメントを示せば、他社に対する威嚇になります。
ただしコミットメントのポイントは「必ず守る」ということです。単なるコケ脅しでは威嚇にはなりません。低価格にする覚悟がないと相手に見透かされたら効果はありません。

このようなコミットメントを行うことが有効なのは、寡占市場の中で少し頭1つ抜きでたリーダー企業が存在する場合です。リーダー企業は経営規模からして低価格化を行うだけの余裕があるので、その表明には説得力があるからです。

一方、コミットメントを見透かされた例は、昨年夏のギリシャ債務危機問題でしょう。当初は、ユーロ離脱すらほのめかしてEUやIMFの要求する緊縮財政案を拒否していたギリシャ側が、結局はEU・IMF側の緊縮案を受け入れざるを得なかったのは、ギリシャ側の揺さぶりが本気ではないと見透かされたからでしょう。ギリシャの当時のバルファキス財務相がゲーム理論の専門家であったことが興味深いところです。


【参考】
『戦略的思考の技術』梶井厚志著 中央公論新社
『競争戦略論』青島矢一、加藤俊彦著 東洋経済新報社
スポンサーサイト



コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
「中小企業診断士のための経済学入門」※絶賛在庫中!
連絡先:rsb39362(at)nifty.com
※ (at) は @ に置き換えて下さい
(お急ぎの場合は携帯電話までご連絡ください)

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR