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日銀の量的・質的金融緩和政策②(そのねらい)

今回は金融緩和政策のねらいを中心に見ていきましょう。


■量的・質的金融緩和とは何か?

「量的・質的金融緩和」とは、日本銀行が、黒田総裁就任以降の2013年4月に導入した政策です。消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現するため、マネタリーベースおよび長期国債・ETF(上場投資信託)の保有額を2年間で2倍に拡大し(世の中のお金の量を増やす)、長期国債買入れの平均残存期間を2倍以上に延長するなど(多様な金融資産を買い増す)というものです。


■どうやってお金を増やすのか?

テレビ等では「ジャブジャブお金を増やす」「ヘリコプターからお金を撒く」という言い方をされますが、これはかなり誤解を生む表現だと思います。「単にお金をジャブジャブ刷って大丈夫か?」と普通の人が思うのも無理はありません。

金融緩和策には様々な手段がありますが、現在、その中心は買いオペ(買いオペレーション)です。つまり中央銀行が市中の債券を買ってその代金を民間金融機関に支払うことにより世の中の貨幣量を増やすのです。


■金融緩和のねらいは何か?

金融緩和政策のねらいは、早い話が「物価が継続的に下落する⇒企業の売上・利益が低下する⇒賃金が下がるなど雇用環境が悪化する⇒消費や投資が低下する」というデフレスパイラルを断ち切り、逆の好循環に持っていくというものです。

前回「日銀の量的・質的金融緩和政策①(なぜ日本は出遅れたのか)」http://bgeducation.blog.fc2.com/blog-entry-124.htmlで触れたように、デフレはモノに対してお金が不足しているからです。よってお金の量を増やす政策を取ればインフレになります(注)。

金融政策の実体経済への効果は、通常、実施から半年から2年程度のタイムラグがあるとされ、段階的に効果が現れます。これは実体経済を考える上でとても重要です。簡単に説明すると、次のとおりです。

<第1段階:資産価格の上昇>
お金の量が増えることにより円安になる。予想インフレ率が上昇し(企業の業績改善が予想され)手元の余剰資金が株式市場に流れることで株価が上がる。

<第2段階:総需要の拡大>
株価上昇の資産効果により消費や投資が増える。円安により輸出が増加する。

<第3段階:雇用環境の改善と設備投資の拡大>
企業業績の改善により雇用が増加する。また景気の先行きが明るくなることで設備投資のための貸出が増加する。


■実質金利で考える

経済学の講義では、「金融政策の目的は利子率(名目金利)を下げること」と説明されます。買いオペを通じて銀行に供給されたお金の量が増えれば、銀行は手元に現金を抱えていても儲からないので、安い金利にしてでも借りてもらおうとするからです。

ただし2008年末以降の日本は「ゼロ金利」と言われるほどの低金利状態が続きました。その場合は、物価変動を差っ引いた実質金利で考える必要があります。実質金利は次の式で示されます。

  実質金利=名目金利-期待インフレ率

 ※名目金利=額面の金利
 ※期待インフレ率=人々が予想する物価上昇率
  (ブレーク・イーブン・インフレ率で計測)

金融緩和を行えば期待インフレ率が上昇しますから、名目金利が一定ならば実質金利は下がることになります。それだけ企業や家計はお金を調達しやすくなり、設備投資や住宅投資が伸びることになります。

この実質金利の考え方は、今回のマイナス金利の導入でも重要なポイントになります。


注:ただしインフレ政策では聞こえが悪いので、リフレーション(リフレ)政策(緩やかなインフレを目指す政策)と呼ばれるようになった経緯があります。

【参考】
『アベノミクスのゆくえ』片岡剛士著 光文社

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No title

大変わかりやすく参考になります。
「銀行は手元に現金を抱えていても儲からないので、安い金利にしてでも借りてもらおうとするからです。」その通りですね。
いまときどきお金をおろしに銀行のATMコーナーにいくと
住宅ローン相談会、金利キャンペーンなどなど
個人貸についても運用強化に必死のようですね。
一方法人貸のほうは 流動性のわな?かどうか
笛吹けど踊らずで なかなか設備投資の需要が
もりあがらず運用難に悩んでいるのでしょうね。
現場を離れているので実際の状況はわかりませんが。今度
状況を聞いてきます。

No title

おはようございます。いつも有難うございます。

先日のマイナス金利の件ですが、よく調べたところ、現時点で効果測定をするものではなさそうです。
後日、ブログに上げますのでご参照頂ければと思います。

企業の資金需要は景気の見通しがよければまず内部留保を崩し、その後、借入をするという順ですから、気の長い話でしょうね。
結局は追加緩和+消費税スキップ+補正予算で先行きを明るくしないと厳しいのではないでしょうか。

もっとも国債の運用に頼るのもどうなのかなとは思いますが。

プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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連絡先:rsb39362(at)nifty.com
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