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日銀の量的・質的金融緩和政策⑥(マイナス金利への批判をどう考える?)

日銀のマイナス金利については、批判的な立場の意見が目立ちます。今回はそうした意見を検証してみたいと思います。これまでのまとめ的な位置づけになります。


■マイナス金利導入のねらい

今回の日銀のマイナス金利については、仕組みがややこしいので再確認しておきましょう。

マイナス金利の対象は、今後、銀行が追加で日本銀行に預けるお金だけであり、これまでの預金分については引き続き銀行へ金利(0,1%)が支払われます。

マイナス金利導入のねらいは、主に名目金利を下げることを通じて実質金利を下げること、さらに追加の量的金融緩和による効果を高める環境を整備することでした。


■民間銀行の業績が低下する?

確かに民間銀行は日銀当座預金からの金利がもらえなくなりますので、その分は収益悪化要因となります。

しかしながら、繰り返しになりますが、今回のマイナス金利は、今後、民間銀行が日銀に預けるものに対してであり、今まで預けていたものに対しては原則的に0.1%の金利がつきます。よって、銀行の収益を悪化させないための配慮を十分にしており、その点ではバランスが取れたものといえます。

ただし今後、企業への融資や各種ローンの金利の下げ圧力にはなりますから、その点については銀行の経営は厳しいものとなります。貸出や運用金利の低下幅の方がゼロ以下にはならない預金金利の低下幅より大きいからです。

一方、全国銀行協会の調べによれば、現在の銀行の当期純利益水準は、リーマンショック後では最高水準に近い状態にありますので、今回のマイナス金利が直ちに銀行経営を圧迫するものだとは考えにくいのではないでしょうか。

いずれにせよ金融行政と金融政策は峻別する必要があるでしょう。

余談ながら日銀政策決定会合で反対した4人(全員民主党時代に任命)のうち3人が金融機関出身(賛成派に金融機関出身者はいない)であることは興味深いところです。


■マイナス金利は日銀の量的緩和の限界を示す?

「日銀は限りある国債を買い続けるわけにはいかない。量的緩和が限界に来たから、禁じ手であるマイナス金利を導入した」との見方があります。

ただし昨年12月の補完措置で、日銀は購入する長期国債の範囲を拡大させています(償還までの期間をこれまでの7~10年程度から7~12年程度まで長期化)から、量的緩和が限界に達したわけではありません。

また今回はじめて金利低下という手段を講じたわけで、今後、さらなる金利の引き下げ、日銀当座預金の金利引き下げ対象の拡大という選択肢を新たに得たと捉えることもできます。


■マイナス金利を導入しても株価は下がった!?

マイナス金利導入によって、一度は上昇した株価も直後にすぐに下がり円高傾向が進みました。よってマイナス金利は失敗だという声があります。

ただし前回『日銀の量的・質的金融緩和政策⑤(マイナス金利のねらい:後編)』http://bgeducation.blog.fc2.com/blog-date-20160303.htmlで触れたように、今回のマイナス金利のねらいは、今後の追加緩和の効果を高めるためのものであり、現段階で効果を確かめられるものではありません。少なくとも即効的な株価や為替対策をねらったものではないと言えます。株価や為替は対外要因によって決まる部分が大きいので、マイナス金利とは分けて考えるべきでしょう。

またゼロ金利導入発表以来、日銀の思惑通り、コールレート、国債金利(イールドカーブ)は低下(場合によってはマイナス化)しており、その点では効果が出ています。(予想)実質金利(=名目金利-期待インフレ率)を下げるためには、名目金利以外に期待インフレ率を上げる必要がありますが、これについては今後の金融緩和次第です。


■ECBは一昨年から導入しているが効果がない!?

ECB(ヨーロッパ中央銀行)は一昨年から導入しているが効果がないとの指摘があります。

ECBのマイナス金利の対象は、当座預金のほぼ全体です。よって銀行の収益環境が急速に悪化し、さらにユーロ圏全体での景気が悪い中では、積極的な資金の循環が出にくい環境にあります。

一方、日銀のマイナス金利の対象は、これから銀行が日銀当座預金口座に預け入れるお金が対象であり、銀行へのダメージが限定的となるように配慮されています。つまり銀行の経営を安定化しつつ将来の資金循環を高める仕組みとなっており、ECBのものとは異なるものとなっています。よって効果を比較するのは、繰り返しになりますが今後の日銀の追加緩和を見てからになるでしょう。
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No title

最近の経済関連時事問題の中で最も話題になっている
トピックスをいつものように
わかりやすく整理し明快なロジックで解説いただきありがとうございます。
書かれたブログの内容じっくり考えてみます。
昨夜は酔っぱらって帰ってきてコメントを間違えて④の
ところに書いてしまいました。

No title

こんばんは。
コメントありがとうございました。

なかなか臨場感のある、というか一般人では正気の沙汰とも思えない(笑)情景ですね~。

確かにケタ間違えて売り出してしまう(大和銀行でしたか)だろうなあという素人丸出しの感想ですいません。

また一杯やった時に当時の喧騒をお聞かせ頂ければと思います。

今日は経験者向けの経済の講義だったのですが、いつものように試験とは無関係な日銀独立性批判をしておしまい(苦笑)。
プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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連絡先:rsb39362(at)nifty.com
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