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交渉のための準備②(ミッションと協議事項を設定する)

■ミッションを考える

まずミッションとは「共通の目標あるいは究極のゴール」のことであり、「交渉をまとめること」がミッションではありません。ビジネス交渉における合意は、ゴールではなく出発点です。

たとえば2社の間で提携交渉が行われるとします。この場合、交渉の究極的な目標は「市場で競争力をつけること」であり、提携合意はあくまでそのための手段に過ぎません。つまり交渉のミッションは「市場で競争力をつけること」です。

ミッションを設けることで交渉のイメージがつきやすくなり、首尾一貫した交渉が可能になります。またミッションを共有することで互いに譲り合えることは譲り合い、合意に向けての推進力が高まるといった効果も期待できます。

しかしながら、いざ交渉するとなると「いかに自分にとって有利に交渉をまとめるか」に関心が集中しがちで、目的と手段が入れ替わってしまうことがしばしばあります。

交渉担当者には成約重視型と履行重視型の2つのタイプがあります。成約重視型は「とにかく契約をまとめること」を重視しますが、履行重視型は「契約は始まりに過ぎず、双方が価値を生み出せるようにすること」を重視します。履行重視型が望ましいことは言うまでもありません。

そのためには契約を締結してから1年後を想定し、「契約はきちんと履行されているか」「そのためには何を話し合うべきか」「何を成功の指標とするか」を念頭に置いて交渉に臨むとよいでしょう。

また交渉術では「WIN-WIN」「関係性の構築」が原則ですが、誤解してはならないのは、これらはあくまでミッションの達成という目標のための手段です。目標ではありません。

本来はミッションからスタートする交渉ですが、交渉自体が目的化してしまうことを回避するためには、次のような形でミッションを整理して折に触れて振り返ることもオススメです。

「Aというミッションを達成するために、BとCについて交渉する」

例えば「(A)製品Xを5年以内に量産化に持ち込むために、(B)欧州のY製薬会社と(C)共同研究開発契約について交渉する」といった具合です。


■協議事項を整理する

ミッションが決まったら次に協議事項(アジェンダ)を整理します。協議事項の整理は、次の3つのステップで進めます。

①協議事項を抽出して分類する
法人間の商品取引において、自社にとっての利益は通常1つではありません。価格以外にも、ベネフィット、納期、支払条件、品質保証、その他付帯サービスなど様々です。こうした複数の利益(協議事項になる)を漏れなく抽出してグループごとに整理するということです。

②協議(利益)の優先順位を考える
①に基づいて複数の利益の優先順位を付けます。合わせて自社にとってはそれほど価値がないが相手にとっては価値があるものはないか整理しておくと後の交渉で役に立ちます。

③話し合うべき順序を考える
協議は互いの優先順位が高いものから始めるのではありません(そもそも優先順位が違う場合も多いです)。また重要だがすぐには合意できそうにないことからではなく、合意しやすいところから始めるのが望ましいです。
合意できそうにない事項から始めると、すぐに議論が紛糾して交渉そのものがデッドロックに乗り上げてしまうからです。
合意しやすい事項から始めると、相手との関係性も構築しやすくなり、さらにその過程で相手のニーズや事情を入手することができます。


【参考】
『ハーバード×慶應流 交渉学入門』田村次朗著 中央公論社
『「交渉」からビジネスは始まる』DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集部編 ダイヤモンド社
『プロフェッショナルの戦略交渉術』隅田浩司著 日本経団連出版
『ウォートン流 人生のすべてにおいてもっとトクをする新しい交渉術』スチュアート・ダイアモンド著 集英社
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No title

ミッションをつくるという点 非常に大切だと思います。
先日お話した日本の銀行とアメリカのJ○M○○○○
両者で日本で資産運用会社を設立交渉をした
ときに最初に行ったあたりのことを思い出し
いつもながら雑談を少し展開しますので
がまんしてください。
①両者でスティアリングコミティーという それぞれ
10名程度のメンバーを選びました。
トップはそれぞれ代取レベルで 私は日本側の
事務局の責任者をしていました。
週に一度程度半年間、先方の日本オフィスと
日本の銀行のオフィスでかわりばんこで
交渉会議を設定しました  交渉内容については
日本側の事務局と先方事務局で事前に詳細な
打ち合わせをしてアジェンダという 交渉対象項目を
事前に決めて会に両グループが望みました。
2.まず行ったのは新会社の設立ミッションをきめることでした。
その後の交渉で 交渉がつまずくつど このミッションに立ち戻って 交渉の打開の共通の方向性を
みつけることができ ミッションがあることの
大切さを実感しました。両者のベクトルを一致させるのに大変重要だと思います。
3.また交渉中に社内や 外部に提携などの
情報が漏れないように 先方を○○ 当方を
羽田(空港) など コードネームを使って
交渉や電話やメールのやりとりをするなど
交渉中内容が外部に事前にもれて
交渉に営業がないようにも大変注意しました。

と 話がずれすぎるといけないのでこれくらいにして
ミッションというのは2者以上の交渉で最初に
時間をかけて丁寧にきめ両者がはらにおとしておくと
その後の展開がスムーズにいくような気がしました。


No title

こんばんは。
臨場感のあるコメントありがとうございます。
特にコードを使うというのは外交交渉のようで感じ入りました。
大掛かりの提携や買収になるとライバル社もいるでしょうから、当然なのでしょうか。

ひとくちで交渉といっても単なる売買交渉から企業買収・外交まであり、売買交渉ならミッションも何もないでしょうが、大掛かりになるとミッションを意識しないと大変なことになりそうですね。

企業買収の8割は失敗すると言われる理由は、このあたりにある気がします。
プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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連絡先:rsb39362(at)nifty.com
※ (at) は @ に置き換えて下さい
(お急ぎの場合は携帯電話までご連絡ください)

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