FC2ブログ

交渉のための準備④(創造的選択肢を考える:前編)

■交渉パターンの再確認

「この交渉はどういうゲームなのか?(交渉の基本パターン)①」http://bgeducation.blog.fc2.com/blog-entry-74.htmlで触れたように、交渉には大きく3つのパターンがあります。

(1)分配型交渉
限られたパイをめぐって、相互が自分の取り分(利益)の最大化を図るために行う交渉のことです。

(2)利益交換型交渉
パイは限られていますが、自分が重要でない部分は譲り、その代わり自分にとっては重要だが相手にとっては重要でないものを引き出すというものです。

(3)創造的問題解決型交渉
交渉当事者が協力し合ってパイを拡大するというものです。

ともすれば交渉は「相手からいかに多くを取るか」に囚われがちですが、利益交換型交渉や創造的問題解決型交渉によってWIN―WINの状態を目指すことが望ましいです。

そのためには、自らの交渉の選択肢(カード)を増やすとともに、相手の真の利益を探ったり、相手の利益についてもできるだけ多く洗い出したりすることで、柔軟な交渉を行うことが求められます。



■相手の真の利益は何か?

企業間の交渉においては、双方とも主に経済的利益を追求することになりますが、必ずしも経済的利益だけが利益だけとは限りません。また相手が個人(部下や消費者など)になると、経済的利益で折り合わなくても情緒的な配慮を示すことで合意に至る可能性は高いでしょう。利益には大きく3つがあります。

①経済的利益
実質的な利益のことで、価格、納期、品質、支払条件などが該当します。

②過程についての利益
メンツを保ちたい、自己主張したい、尊重されたい、公平に扱ってほしいといった利益のことです。

③関係についての利益
相手と良好な関係を構築したいという利益のことです。

ただし②や③は情緒的な利益であり、交渉時にこれを優先すると経済的な利益の面で大幅な譲歩を余儀なくされる可能性が高くなります。


■自分には価値がないが相手には価値があるものは?

こと交渉の場面では、共通の利益ではなく利益の違いに着目するとよいとされています。「利益の違い」はむしろ歓迎すべきです。「利益は複数あること」「利益は人によって異なること」を念頭に、交渉過程を通じて相手の利益を洗い出すことが求められます。

その際は「自分側の負担が少なくて相手側に大きな利益をもたらすもの」と「相手側の負担が少なくて自分側に大きな利益をもたらすもの」を組み合わせることになります。

また利益の違いを上手く噛み合わせるためには、「こちらが受け入れ可能な、同程度の価値があるものをいくつか考え、相手に提示してみせてその中からベストなものを選んでもらう」というプロセスを踏むのもよいでしょう。


【参考】
『ハーバード×慶應流 交渉学入門』田村次朗著 中央公論社
『ハーバード流交渉術』ロジャー・フィッシャー、ウィリアム・ユーリー著 三笠書房
スポンサーサイト



コメントの投稿

非公開コメント

No title

交渉についてパターンとポイントが
大変よくまとめられており勉強になり有難うございます。
いつもの通り、自分のキャリアでそれぞれの
交渉パターンで印象的なシーンを思い出してみます。

①分配型  十数年前に銀行3行が合併したときに
合併の発表から実際の合併まで2年以上かけ
それぞれの分野で3行の間で交渉が行われました。
まず私がある銀行の本社の個人向け業務分野の次長をしていたときのこと、それぞれの銀行の個人業務の分野のチームは トップが同分野の担当役員(専務、副頭取)以下
部長、次長(当時同ポジションにいました。)、担当者が参加し
1年以上にわたり 週に一度 30名程度会議室に集まり
①個人向け商品はどの3行のどれを採用するか
銀行の名前はどうするのか、キャラクターはどうする
通帳はどうする
②事務の流れはどの銀行のものを採用するか
③システムはどこのものを使うか
(基幹系、情報系、DB、営業店端末、ATM、
ネットほか)
などなど数百項目以上のものを交渉対象としました。
毎回激論になり交渉が中断することが多く、大変
往生したのを今でも思い出します。なぜ 交渉に手間取ったかというと それぞれの銀行の人員の人数やポジションを確保できるかという点がバックにありました。ある商品を採用したりある事務の仕組みやシステムを採用するとそれに精通した銀行の担当は残り関係していない人員はリストラ対象になる可能性がある などでそれぞれ
の銀行が自分の銀行の人員をできるだけ良いポジションに残せるように 本来の銀行の合併の目標と別の
利害で統合のそれぞれの分野の交渉で
自分の利害確保で必死になったことでした。
などなど いろいろあり 最終的には
この合併で スタート時から大きなシステムトラブルを
起こし世間に大変迷惑をかけてしまいました。
これは合併の進め方、プロセスが それぞれの
トップから下にいたるまで 分配型の考え方
プロセスで交渉をすすめたためあらぬ方向に
いってしまいました。(現在同行は大幅修正をかけているところです。)
一方私は統合交渉の途中である大型海外支店
(3行併せて600名)のある銀行のNO2で海外赴任となり
(日本の交渉があまりに低レベルでいやになり
無理をいって海外にいかせてもらいました)
その後数か月 統合までの交渉を 残り二行の
NO2(そのうちの一人がめぐりめぐって今の銀行の頭取になっています。よく大喧嘩をしました。)とすすめました。これも結局 それぞれの銀行の
人員の誰を残し 誰をリストラするのかという
分配型のどろどろの交渉となり大変な展開になり
3行で600名いた行員を結局200名程度リストラをし
弁護士をまじえながら 心を鬼にして3行でてわけし私は数十名に直接リストラをいいわたしたときの それぞれの顔を今でも思い出し
忸怩たる思いをもっています。
このように 分配型の交渉というのはそれぞれの
利害の真正面からのぶつかり合いで 力の強さ、
声の大きさ、スピード、狡猾さなどなど大変エネルギーを消耗するものだと思います。先生のコメントされていた
ミッションや シェアドオブジェクティブ(形だけでなく本音ベースの共通目標)の段階に
もっと時間をトップ3人がさき どのように交渉をすすめるか入念に決めていれば 泥仕合にならなくて済んだと
思っています。トップがしっかりしないと皆犠牲になります。
利害交渉型 銀行卒業後の会社で MA案件に十件ほど
直接からみましたがこれは 分配型にくらべると
失敗もたくさんありますが良い思い出がたくさんあります。いわゆるwinwinを完全に達成というのは
ありませんでしたがそれに近いものもあり
精神衛生上は 交渉としては分配型より
少し楽な気がします。詳細はまたの機会に。
問題解決型は 先日コメントした共同出資子会社を
設立というのは 問題ではなく課題ですが
両社の課題に対し共通のミッションをたて
共通のミッションを追及ということなので
一番前向きな交渉ができるパターンだと
思います。・・・・・
いつものように雑談だらけで すみません。

No title

こんばんは。
いつもながら臨場感のあるコメントありがとうございます。

3行合併はまだ駆け出し社会人だった私にとっても、かなり衝撃的で印象に残っています。
当時の都銀主要行の間でも「どこと組んだら一番得か(自行が主導権を握れるか)」で駆け引きが噂ベースで流れたりしていた記憶があります。

その後の救済色が強い合併とは異なり、なかなか1つにまとまりにくい環境であったのでしょうか。

ブログで書いていてなんですが、やっぱり交渉はパワーゲームの部分が大きいのは事実でしょうね。
価値交換型も要は貸し借り的な感じがありますしね。本を読んでいても、そんな上手くいくかいなというのは正直あります。

ただパワーゲームだからいろいろ知恵(悪知恵も含め)が働くのでは?と思ったりも。

さて、いまさらで申し訳ありませんが、ふと以前、生産関係での書籍についてお尋ねがあったことを思い出しました。

正直、あまり読んでないのですが、2つだけ挙げさせて頂きます。

・「生産マネジメント入門 Ⅰ・Ⅱ」藤本隆宏著 日本経済新聞社
⇒もの作り論で有名な藤本教授のスタンダードのテキストですね。

・戦略的生産システム」玉木欽也著 白桃書房
⇒概論的にはなかなかまとまっていると思います。


No title

おはようございます。生産管理の参考図書
アドバイス有難うございます。早速本屋さんで
のぞいてみます。中小企業診断士の勉強は
大変実務に直結し、大変役立っております。
生産管理しかり、経済しかり ほかも同様です。
現在 授業は法律の6回中 2回目です。ちょうど
会社の機関のろところにはいっています。
まださらっとしか復習していませんが きちんと
確認しようと思っているのは次の点です。
、昨年から監査法人およびその報酬を決定するのは
取締役会(テキスト記述)から監査役会に変わっていると思います。
そのため 監査法人が昨年半ばから正式な定期報告会を
監査法人代表者などが監査役会メンバーに
定期的(2-3か月に一度)に丁寧に行うようになっています。
やはり自分たちの食いぶちと 報酬を決める
機関に気をつかったりおべっかをいったりというのは
不思議ではないですね。ここのところ
東芝はじめ 色々な不祥事が起こっていますが
会社の執行部門と監査法人がつるまずに
第三者的な監査役会がきめるような仕組みにしたほうが
内部監査上ベターということなのかもしれませんね。
 法律の変更などの背景を踏まえ、いま つとめているところは 監査役会設置会社から 監査等委員会設置会社に移行します。今度は 委員に変更で自分の立ち位置をいろいろ勉強しているところです。またまた
雑談になりました。
取り急ぎアドバイスお礼まで申し上げます。

No title

おはようございます。

監査法人の選定および報酬の決定については、法務のテキストが手元になく、また私自身がこの分野についてはまったく知識がないので、休み明けに教材担当者に確認しておきますね。

第三者委員会については私も同じ印象です。
日本の場合は、プラス甘いと言われている法制度面での規制強化もあるんでしょうか。

話変わって行政面での第三者委員会ということになると、経済財政諮問会議の委員のように、選定者(省庁)の利害代弁者が委員に選ばれ、機能していないように思われます。
今回のスティグリッツ教授らを招いた国際金融経済分析会合も、結局、官邸側が経済財政諮問会議をまったく信用していない証左とも言われていますしね。

一般論ですが、形ばかりでないきちんとしたインセンティブ設計に基づく制度設計が必要ということなんでしょうね。

プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
「中小企業診断士のための経済学入門」※絶賛在庫中!
連絡先:rsb39362(at)nifty.com
※ (at) は @ に置き換えて下さい
(お急ぎの場合は携帯電話までご連絡ください)

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR