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消費税引き上げに関する動向①

消費増税に関する報道が活発化しています。安倍首相は「リーマンショック級のことがなければ予定どおり来年4月の消費税率10%引き上げを実施する」と発言しています。
しかしながら、スティグリッツやクルーグマンら消費増税に反対の立場のノーベル経済学受賞者の金融経済分析会合への招聘などを見ると、少なくとも10%への引き上げはないだろうとの見方が主流となってきました。
今回は、2014年度4月の8%への消費増税後の国内消費の推移について確認しておきます。


■8%への消費増税後の影響が続く国内消費

消費増税にもろに影響を受けるのが個人消費(実質家計最終消費支出)です。四半期別の実質家計最終消費支出の推移を見ると、8%の増税前の2014年度1~3月期に駆け込み需要で約2.1%増加した後、増税後の4~6月期に一挙に5%以上急落しました。

その後、増減を繰り返し直近の2015年度10~12月期にはマイナス0.9%となっており、8%への消費税率の引き上げの影響が未だに続いていることが確認できます。


■国内消費の低迷はリーマンショック級!?

さて現在の日本の経済状況がリーマンショック級の危機に見舞われているとは誰も思わないでしょう。ただし国内消費(実質家計最終消費支出)だけ見ると、そうではないとの指摘があります。これについては三菱UFJリサーチ&コンサルティングの主任研究員である片岡剛士氏が3月4日にレポートを出しています。

実質家計最終消費支出は下図のように短期的な増減を繰り返しながらも、緩やかに上昇傾向を描きます。甚だ簡単なものですが、下図のようなイメージです。

傾向線

統計的な処理では、変動がある一定の幅(上図で言えばXとYの幅)にどれくらい収まるかを分析し、それからはみ出したものは外れ値(異常値)として扱います。ある一定の幅のことを信頼区間と言います。

たとえば信頼区間が95%だとすると、「XとYの区間に収まっているデータは95%正しいデータと見做せ、収まっていないデータは異常なデータとして除外する」というような感じで考えてください。そして信頼区間内にあるデータから回帰分析して傾向線というトレンド線(図の破線矢印)を導出することができます。

話を実質家計最終消費支出に戻すと、2003年度から2015年度までの間で、95%信頼区間(XからY)に当てはまらない異常値が3回あります。

まず上限(X)を超えたのが8%への増税前の2014年1~3月期の駆け込み需要です。下限(Y)を超えたのがリーマンショック直後の2008年末と直近の2015年10~12月期の2つです。ちなみに2011年3月の東日本大震災後も消費は大きく落ち込みましたが、実は95%信頼区間からははみ出してはいません。

以上から実質家計最終消費支出だけ見ると、現在はリーマンショック級の落ち込みとも解釈でき、消費増税は実質家計最終消費支出に致命的な打撃を与える可能性が高いと考えられます。(つづく)


【参考】
三菱UFJリサーチ&コンサルティング/片岡剛士レポート/「消費低迷の特効薬」を考えるhttp://www.murc.jp/thinktank/rc/column/kataoka_column/kataoka160304.pdf



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非公開コメント

そういう見方があるとは驚きです
毎週の日経月曜日の経済統計を何とはなしにみていてそんなに実態経済がよくないのではと思っていたところでした
いま法律の養成とうれんを終えたところです 77点でまあまあでした そろそろ60点台だつた経済のリベンジをはかるタイミングです 引き続きご指導宜しくお願いいたします きちんと経済を勉強しないとこのブログにコメントする資格がないですね しっかり復習していきます

No title

コメントありがとうございます。
法務も上首尾でなによりです。

雇用関係以外はよくないです。

日経は財務省寄りで増税推しで、前回の増税時も
何も影響ないと言ってましたしね。
子会社化したFTは増税延期なんですがねえ。

経済の興味が高まるにつれマスメディアの報道が信用できなくなりました。
やっぱり自分で違う主張も調べて検証しないとダメですね。
プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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連絡先:rsb39362(at)nifty.com
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