fc2ブログ

消費税引き上げに関する動向②

■引き上げ延期ではほとんど効果がない?

さらに片岡氏は1985年から1995年のデータを用いて実質家計最終消費支出の傾向線(前回の「消費税引き上げに関する動向①」の図を参照)を求めています。それによると1985年から1995年の実質家計最終消費支出は年率で約0.8%の上昇傾向があったが、2002年度から2012年度はそれが約0.2%に低下してしまったことを指摘しています。

つまり1997年度の消費税率5%への引き上げ後、国内消費の伸び率が大きく毀損されてしまったということで、2014年度の8%への増税後の動きを見ると、伸び率はさらに低下する見込みが高くなります。

以上から言えるのは、国内消費の伸び率を正常状態に回復させるためには、10%への消費増税の延期ではほとんど効果がないということです。
8%への増税で消費の伸びが押されられてしまった状態が続くだけですし、さらに将来の増税予想が消費マインドを硬直化させるからです。

将来の増税予想が消費マインドを硬直化させることは、2014年度11月の消費税10%引き上げ延期の際に、安倍首相が2017年度4月の引き上げを明言したことで、その後の消費態度が硬化したことからも推測できます。

よって最低でも凍結(再増税の時期を定めない)、本来であれば5%への減税が求められることになります。

ちなみにこの片岡氏の分析は本田悦朗内閣参与もテレビ討論で使用していました。また消費減税については金融経済分析会合でクルーグマン教授も指摘しています。


■消費税率は8%据え置きで軽減税率品目は減税対象に?

以上のように本来は減税が望ましいわけですが、政治的にはかなりの困難が予想されます。さて先週半ばのラジオ番組で独立総合研究所社長の青山繁晴氏が興味深い発言をしていました。

それは「官邸側では消費税率8%据え置きで、軽減税率対象品目(食料品や新聞など)については2014年前の5%に戻すことを検討している。来年4月の消費増税を止めることを国民の信を問うために6月1日に衆院解散する」というもので既に官邸高官の確認済だというものです。

なかなか大胆な発言でこのとおり事が進むかは分かりませんが、確かにこの案であれば軽減税率を強く主張している公明党の支持を得やすく、かつ事務処理が煩雑化するため軽減税率の導入を嫌がっている財務省も飲みやすいのかもしれません。


■まずスタンスありきの政治家・マスコミ・経営者

民進党や公明党からは「3党合意で決めたのだから増税すべきだ」との声が上がっています。「決めたのだからやる」というだけでは思考停止としか思えません。経済政策に限らず政策は状況に応じた判断でしょう。

また日本経団連の榊原会長や経済同友会の小林幹事が予定どおり消費増税をすべきだと会見で述べていますが、企業団体の代表がなぜわざわざ企業の首を絞めるようなことを言うのか私には理解できません。

4月2日放送のNHK時事公論「日本経済 好循環の転換点か?」で、経済担当の解説委員が2014年度の8%の消費増税で消費が大きく落ち込み、低迷が長く続いているという事実を指摘しつつ、それは国民が財政危機を不安視しているからではないかと述べていました。だから10%に消費増税して不安を払拭すべきだと。

そもそも国民が財政危機(年金不安)を感じているのなら、8%の増税で少しは安心して消費が増えるはずで、経済知識云々を抜きに常識的に考えてもこれはまったくの誤りであることが分かります。

NHK・民法の夜間のニュース番組を見ていると、相変わらず「まずは消費増税ありき」のスタンス優先の報道・解説が目立ちます(新聞も同様)。データや理論はほとんど無視しているとしか思えません。前回の増税時にも影響はないと言っていましたが、今回も同じスタンスなのでしょうか。

「消費増税推し」で報道してきた路線を今更変えられないという事情があるように感じますが、多少は勉強するなり、データを検証するなりして発言することを希望してやみません。


【参考】
三菱UFJリサーチ&コンサルティング/片岡剛士レポート/「消費低迷の特効薬」を考えるhttp://www.murc.jp/thinktank/rc/column/kataoka_column/kataoka160304.pdf
スポンサーサイト



コメントの投稿

非公開コメント

No title

大変勉強になりました
財政赤字だけに単純に着目していましたがお陰さまで目が開かれました
表面的にニュースを見ていても消費税増税は先送りの流れの方向のような気がしていました
そろそろ経済の復習開始します ので引き続き宜しくお願いいたします
原田

No title

コメントありがとうございます。

多少、興奮気味の内容で恐縮なのですが、時事公論はあまりに醜かったのでついつい。

さて基本講義も最後の中小ですね。毎年のことながら早いものです。
プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
「中小企業診断士のための経済学入門」※絶賛在庫中!
連絡先:rsb39362(at)nifty.com
※ (at) は @ に置き換えて下さい
(お急ぎの場合は携帯電話までご連絡ください)

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR