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シャープが経営不振に陥ったのは?

4月2日にシャープと鴻海(ホンハイ)精密工業の間で買収契約の調印が行われました。今回はシャープが経営不振に陥った理由について、考えてみたいと思います。
2000年代の初頭から経営戦略の書籍を読み始めた私からすると、現在の苦境に陥るシャープに対する論評を見ると、少し複雑な気分にもなります。
シャープが経営不振に陥った理由については、それこそキリがないほど挙げられていますが、「池に落ちた犬を棒で叩く」かのような感想を持ってしまうのは私だけではないのではないでしょうか。


■コア・コンピタンス経営のスターとして

たとえば1990年代後半以降、一世を風靡した経営書であるゲイリー ハメル、C.K. プラハラード著のコア・コンピタンス経営(日本経済新聞社)では、優れたケースとして、ソニーの小型化技術やキヤノンの光学技術、ホンダのエンジン技術と並んでシャープの液晶パネル技術が挙げられていました。

2000年代前半にコモディティ化(機能面での差別化がもはや困難で、低価格化が加速化する状態)に喘ぐ日本のエレクトロニクス・メーカーに対し、当時、脚光を浴びていたMOT(Management of Technology:技術経営)関連の書籍では、脱コモディティ化のお手本としてシャープがよく取り上げられていた記憶があります。


■シャープ衰退の理由は?

取り沙汰されているシャープ衰退の要因を集約すると、おおよそ①液晶パネルにこだわりすぎたこと②さらにその液晶パネルが急速にコモディティ化したこと③亀山工場や堺工場など身の丈に合わない大規模な設備投資を行ったことで財務体質の悪化を招いたこと④リーダーシップ不在で経営革新が遅れたことになるかと思います。

液晶事業出身のトップが3代続き、コモディティ化が見られ始めたのもかかわらず、液晶事業への巨額の設備投資を止められる雰囲気が社内にはなかったとの指摘もあります。

リーマンショック後、日立やパナソニックが業績を回復させる中で、シャープは取り残されたのですから、シャープ固有の問題があったことは間違えありません。これについては回を改めるとして、今回はマクロ環境要因、つまり為替レートに着目したいと思います。


■為替レートとシャープの業績を見ると…

年度別の粗いデータですが、試しに2001年以降のドル・円為替レートの推移とシャープの連結当期純利益の関係を示したものが下のグラフです。連結当期純利益は翌年3月期決算のもので(億円)単位です。

シャープ・為替
円ドル

日本の輸出型製造業は、円安になると業績が改善し、円高になると業績が悪化します。両図を見ると、おおよそ1ドル100円以上の円安時には業績がよく、100円以下の円高時にはほとんど黒字がないか赤字ということは言えそうです。

2008年度のリーマンショック以降の急速な円高は、亀山や堺など国内に最新鋭工場を建設したシャープにとってはかなり痛手であったことは間違いないでしょう。そして、それが響いてアベノミクス以降の円安の波にも乗れなかったというのが私の印象です。

もちろんシャープ固有の問題はあるものの、為替が急激に円高に振れなかったら、おそらくここまで危機的な状況にはならなかったのではないでしょうか。


■もともとサムスンと戦える状況ではない?

一方、同時期(2008年度から2012年度)のドル・ウォンレートの推移を見ると3割程度のウォン安ですから、25%程度の円高と比較すると、ドルベースで6割近い価格差(企業業績差)が生じることになります。

こうなっては多少の技術優位性があってもライバルのサムスンとほとんどまともに戦えなかったというのが実情でしょう。



■当たり前だが企業業績はマクロ環境次第

最近10年間の日経平均株価と為替レートの推移を見ると、0.87程度の相関がある(円安になると8割がた株価が上がる)との指摘があります(注)。

また円安傾向が続いた中での2015年度9月中間決算で、東証1部上場企業が過去最高の経常利益・純利益を更新したことを考えても、為替と企業業績との関係は無視できるものではありません。


当たり前ですが、マクロ環境が良ければ業績は上がるし、悪ければ業績は低下します。以前、本ブロクでも「日銀の量的・質的金融緩和政策①(なぜ日本は出遅れたのか)」で触れたように、円高は以前の金融政策(マクロ経済政策)の失敗の結果です。業界への利益誘導のようなものはともかく、経営者もマスコミも、もっとマクロ的な視点に立った政策提言を行うべきではないでしょうか。


注:
http://yopitore.info/archives/636.htmlを参照して下さい。

【参考】
『合理的なのに愚かな戦略』ルディー和子著 日本実業出版社

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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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