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コア・コンピタス再考②(コア・コンピタンスの罠)

「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残ることが出来るのは、変化できる者である。」チャールズ・ダーウィン

コア・コンピタンスに基づく経営は何ら否定できないように思われます。しかしながらシャープが陥ったように、問題点も指摘されています。


■特定分野に経営努力を集中させるリスク

まずコア(中核)という言葉からは、「1つ(単独)の能力」と連想してしまうことです。1本足打法の経営は、当然ながらリスクが伴います。外部環境の変化など何らかの形でコア・コンピタンスが無効化すると、事業全体が立ち行かなくなるからです。

よって多角化している企業では、次の図のように複数のコア・コンピタンスを持つ必要があります。

それぞれのコア・コンピタンスを複数事業間で活かしつつ強化を図るわけです。これについては、似たような図が「コア・コンピタンス経営」(日本経済新聞社)でも示されています。


■コア・コンピタンスは成功モデルの一部に過ぎない

また特定の能力だけで本当に競争優位を確立できるのかという疑問があります。たとえばソニーのコア・コンピタンスが小型化技術力であったとして、はたしてそれだけで高い業績を上げられたのかということです。

製造業の場合、コア・コンピタンスは技術開発力が挙げられるのが一般的ですが、それ以外にも、デザイン力、製造能力、マーケティング力、物流能力など様々なものが求められます。経営は多面的なものであり、コア・コンピタンス論は議論を単純化しすぎているという批判があります。


■組織の常識は急には変えられない

1つめと関係しますが、組織の学習能力(ケイパビリティ)の問題です。コア・コンピタンス経営の前提は、継続的な組織の学習にあります。コア・コンピタンスを練り上げるために、各現場に権限を移譲して、地道な日々の創意工夫・改善を促していくということです。

一方、外部環境の急激な変化により経営危機に瀕すると、もはや日々の地道な改善努力では追いつかず、抜本的な戦略ビジョンの転換が必要になります。

しかしながら、各現場がそれまでのコア・コンピタンスに基づいた学習活動を行っていると、それが組織の常識となり、戦略ビジョンの転換は容易にできるものではありません。


■コンピテンシー・トラップ

特定の経営資源(コア・コンピタンス)に経営努力を集中させることの問題点を指摘したものに、コンピテンシー・トラップと言うものがあります。コンピテンシーとは、組織能力を指す用語です。

企業がイノベーションを実現するためには、「知の探索」と「知の深化」の両立が求められます。「知の探索」とは、「知識の範囲を拡げること」で様々な知識を組み合わせて試そうという活動のことです。「知の深化」は、「特定の分野の知識を継続的に深める活動」のことです。

しかしながら、企業には「知の深化」に偏る傾向があります。
なぜなら、手っ取り早く利益を出すためには、既に実績を上げている分野での知識を進化させたほうが効率がよい一方で、「知の探索」は手間やコストがかかるものの利益に結びつくかは不確実だからです。このことの背景には、人間が持つ認知の限界があります。

「知の深化」に偏ると、やがては視野が狭まり、企業としてのイノベーションが停滞することを、コンピテンシー・トラップと言います。

コンピテンシートラップ


■「知の探索」を図るためには

「知の探索」を図るためには、新規事業担当の部署を立ち上げ、そのビジネスに必要な機能(研究開発・製造・営業など)を全て持たせて独立性を確保すること、さらに経営トップには、新規事業部門が既存事業部門から孤立せずに、両者が互いに知見や資源を活用し合えるよう「統合と交流」を促すことが求められます。

この点については、本ブログの「経営戦略におけるいろいろなジレンマ④(イノベーションのジレンマ:後編)」でも触れましたので、参照してみて下さい。


【参考】
『戦略サファリ―戦略マネジメント・ガイドブック』ヘンリー ミンツバーグ、ジョセフ ランペル、ブルース アルストランドら著 東洋経済新報社
『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』入山章栄著 日経BP社
『経営革命大全』ジョセフ ボイエット、ジミー ボイエット著 日本経済新聞社





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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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