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愛着は他人には分からない(保有効果)①

人間の損失回避的な志向を説明する理論は、前回取り上げたプロスペクト理論以外にも保有効果というものがあります。

■お気に入りの○○をいくらなら売りますか?

あなたの手元には入手が困難なアーティスト○○(○○にはミスチルでもローリング・ストーンズでもお気に入りのアーティストの名前を入れてください)のチケットがあります。

私がそれを売って欲しいといったら、いくらなら売りますか?


おそらくチケットの購入代よりもかなり高い値段を付けたのではないでしょうか。これについては、心理学者のダン・アリエリーによる次の実験があります。

アメリカの大学では母校のチームが出場するバスケットボールの決勝トーナメントの試合はとても人気があり、チケットは抽選に当たらなければ購入できない。
抽選に外れた学生に「いくらなら買うか」と尋ねたところ、平均で170ドルだった。
一方、抽選に当たった学生に、「いくらなら売るか」と尋ねたところ、平均で2400ドルで買値の14倍だった。


コレクションや愛着のあるもの(家や自動車)を売る場合にも同様の傾向が見られます。


■保有効果とは
 
保有効果(授かり効果)とは、自分が所有するものに高い価値を感じ、手放したくないと感じる現象のことです。その結果、何かを売ろうとするときに、妥当な値段よりもかなり高い価格を提示することになります。

保有効果が生じる背景には、次の3つが考えられます。

自分が持っているものに惚れ込んでしまう。

② 手に入るかもしれないものではなく、失うかもしれないものに注目してしまう。

③ 他人が感じる価値も自分と同じだろうと考えてしまう。


■保有効果はどういうときに生じるか?

保有効果はいつも生じるわけではありません。たとえばコンビニの店主は商品を決まった価格で売ることに何ら抵抗感を感じないでしょうし、買い手であるみなさんが支払いするときも特に違和感がないでしょう。

また友人から5千円札を千円札5枚と替えてくれと言われても素直に応じるはずです。

コンビニの商品やみなさんのお金は「交換目的」、つまり他の財と交換するために保有していたものであり、この場合、保有効果は生じません。

一方、入手困難なチケットや愛着のあるものは「所有目的」、つまり消費したり楽しんだりするために保有していたもので、この場合は保有効果が生じやすくなります。

また、実際にあるモノを所有している場合だけでなく、「ほぼ手に入れた」と感じ所有意識を持ち始めた場合にも起きます。
(つづく)

【参考】
『ファスト&スロー (下)』ダニエル・カーネマン著 早川書房
『予想どおりに不合理 増補版』ダン アリエリー著 早川書房
『世界は感情で動く』マッテオ・モッテルリーニ著 紀伊國屋書店

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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
「中小企業診断士のための経済学入門」※絶賛在庫中!
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