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愛着は他人には分からない(保有効果)②

前回に続き、保有効果を取り上げます。保有効果とは、自分が所有するものに高い価値を感じ、手放したくないと感じる現象のことです。また、実際にあるモノを所有している場合だけでなく、「ほぼ手に入れた」と感じ所有意識を持ち始めた場合にも起きます。


■保有効果の罠

保有効果が行き過ぎると、とんでもないことになりかねません。損切りできない株式や、所得が減ったのに変えられない生活習慣・消費活動、ほとんど使わないのに捨てられない私物などは保有効果によるとも言えるでしょう。

・あなたはネット・オークションで欲しかった(ただし、もう売っていない)腕時計を見つけ、入札することにした。他人が入札する気配はなく、ずっとあなたの入札額が最高という状態が続き、「もはや手に入れたも同然」とその腕時計を嵌めて悦に浸っている自分を想像している。念のためオークション終了10分前に確認したところ、なんとあなたの入札額を上回る入札がなされていた。すかさずあなたはオーバービットを試みる。

・あなたはミニのコンバーチブルのパンフレットをずっと眺めている。「天気がよく清々しい日に彼女と一緒にドライブしたらどんなに気分がいいだろう」あなたのイメージは膨らむばかりで、もはや手に入れたかのようである。正直、懐事情は厳しいが、思い切ってローンを組んで買うことにしよう。


企業側もこうした消費者心理につけこんで、あの手この手と手段を講じてきます。たとえばお試し(試着・試乗)は消費者に使わせることで所有意識を持ってもらい、購入してもらおうという側面があります。「30日間返金保証」というのも同じです。


■保有効果から逃れるには?

いったん所有しているという感覚を持ってしまうと執着してしまうのであれば、なるべく所有感を持たないようにすればよいということになります。実際は所有していても、それはあくまで仮の姿だと考えるのです。

買い手に奨められて試しに使うことにしても、あくまで試すだけだと自分に言い聞かせたり、予め買わない可能性があることを示したりするだけでも効果があるかもしれません。

また子供が産まれたり、マイホームのローンを組んでしまい、これまでのような贅沢ができなくなったとしたら、「今までが仮の姿だったにすぎなかったのだ」と思ってみると少しは諦めがつくかもしれません。


【参考】
『ファスト&スロー (下)』ダニエル・カーネマン著 早川書房
『予想どおりに不合理 増補版』ダン アリエリー著 早川書房
『世界は感情で動く』マッテオ・モッテルリーニ著 紀伊國屋書店
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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
「中小企業診断士のための経済学入門」※絶賛在庫中!
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