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なんでもありな経済学②

前回の「なんでもありな経済学①」では、経済学とは「社会がその希少な資源をいかに管理するかを研究する学問」であり、経済学を理解するための4つのヒントとして、インセンティブ、トレードオフ、トレード、マネーを紹介しました。そこから得られる経済学の示唆として、経済学の十大原理というものがあります。

人々はどのように意思決定するか
① 人々はトレードオフ(相反する関係)に直面している
② あるものの費用は、それを得るために放棄したものの価値である
③ 合理的な人々は限界的な部分で考える
④ 人々はさまざまなインセンティブ(誘因)に反応する

人々はどのように影響しあうのか
⑤ 交易(取引)はすべての人々をより豊かにする
⑥ 通常、市場は経済活動を組織する良策である
⑦ 政府は市場のもたらす成果を改善できることもある

経済は全体としてどのように動いているか
⑧ 一国の生活水準は、財・サービスの生産能力に依存している
⑨ 政府が紙幣を印刷しすぎると、物価が上昇する
⑩ 社会は、インフレ率と失業率の短期的トレードオフに直面している

ここでは1つ1つについて取り上げず、回を改めて見ていくことにします。

さてエコノミストによっても立場はいろいろです。テレビ番組での応酬もよく見かけますね。ただし市場での自由な市場競争や自由貿易(TPP)、労働規制撤廃に反対する人はあまりいません。それは上記の経済学の十大原理という共通理解があるからです。市場での自由な競争と取引(個々の利益の最大化)の結果、社会全体の経済的な豊かさ(社会的総余剰)が最大化されるというわけですね。

ただし誤解してはならないのは、経済学でも「なんでもかんでも市場での競争がよくて結果は自己責任だ」と言っているわけではないということです。

市場メカニズムが働いた結果において経済的な効率性が達成されていない現象を、まとめて「市場の失敗」と言います。

たとえばそもそも市場取引に向いていないというもの(言い換えれば価格が付けられないもの)もあり、この場合、供給が過剰(例:公害)となったり過少(例:公共性が高いもの)となったりする場合があります。

このことと関連しますが、個々の利益の最大化(あるいは短期的な効果)がかえって全体の利益(あるいは中長期的な効果)を損なうという合成の誤謬という問題もあります。たとえば個人で考えれば貯蓄は合理的な選択ですが、みんなが貯蓄に励めば国全体の消費が低下し(その結果、モノの値段が下がり)景気は悪くなります(※注)。

自由競争による所得格差が資産格差を生み(このこと自体はあまり問題視しません)、その格差が代々継承される(場合によっては増幅される)ということもあります。このような問題への対応も経済学の重要なテーマです。

こうした共通理解があるにもかかわらず、なぜエコノミストたちはせっせと論争に励むのでしょうか。私には、論争のほとんどが「個と全体、あるいは短期や中長期といった期間の認識の違い」というようにも思えてくるのです。

【参考】
「マンキュー経済学Ⅰ ミクロ編(第3版)」N.グレゴリー マンキュー著 東洋経済新報社

※注:
デフレ不況は、ある意味、このような企業(内部留保を積み増す)や個人(貯蓄に励む)の合理的な選択の結果とも言えます。
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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
「中小企業診断士のための経済学入門」※絶賛在庫中!
連絡先:rsb39362(at)nifty.com
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