fc2ブログ

マズローの偉大なる仮説(欲求段階説)①

「人は何によって動機づけられるのか」「どのような場合にモチベーションが高まるのか」については、これまで様々な理論が提唱されてきました。その中でもとりわけ知名度が高いのが、マズローの欲求段階説です。

それまで(1960年代以前)経済学的な見地から、「人を動機づけるのは賃金である(賃金が高ければモチベーションが高まる)」という受動的な人間観で語られることが多かったのですが、マズローの最大の功績は能動的・主体的な人間観に基づくモチベーション理論の嚆矢となり、その後のモチベーション理論に多大な影響を与えたことです。

一般向けの書籍にも多く登場しますのでご存知の方も多いでしょう。ただし誰かに説明する際にマズローの欲求段階説を引き合いに出すのには注意が必要です。モチベーション理論の研究家の間では、仮説としては面白いものの、実はほとんど学術的な価値を否定されてしまっているからです。

今回は欲求段階説の基本的な内容を確認しましょう。


■マズローの欲求段階説とは

まずマズローの欲求段階説について説明しておきましょう。これによれば、人間には次の5つの基本的欲求があり、それを満たそうとするときにモチベーション(行動に対する動機づけ)が生まれます。

① 生理的欲求
食物、水、空気、温度、休養、性的欲求など、生理的体系として自己を維持しようとする欲求。
② 安全欲求
健康の維持、危険回避、住居の確保、安定した仕事など安全な状況を希求したり、不確実な状況を回避しようとする欲求。
③ 所属・愛情欲求
集団への所属を希求したり、友情や愛情を希求する欲求。
④ 尊厳欲求
他人からの尊敬や承認を得たり、名誉ある地位を求める欲求。
⑤ 自己実現欲求
自己の成長や発展の機会を希求したり能力の実現を希求する欲求。

これらの欲求は生理的欲求から順に階層をなしており、自己実現欲求に近くなるほど高次元の欲求(高次欲求)になります。
欲求段階説

①の生理的欲求から順に満たしていき、一度低次の欲求が満たされてしまうと、より一層それを満たそうとは思わないとされます。たとえば安全の欲求を満たしてしまえば、もはやそれ以上満たそうとせず、次の所属・愛情欲求のみを満たそうとするわけです

ただし⑤の自己実現欲求だけは満たすことができないとされます。それは自己実現は「自分らしい姿を追い求めるという成長の欲求」であり、成長には限りがないからです。

自己実現という欲求概念を持ち出すことにより、人間は仕事を通じて自己の能力を発揮していくことをそもそも望んでいるという説を提唱し、人間性への強い関心を示したのです。


■自己実現を図る人の特徴

マズローは自己実現を図る人の特徴として、次の8つを挙げています。

① 集中(何かに完全に熱中し没頭する)
② 成長の選択(防衛・安全・退行ではなく成長や進歩のために選択する)
③ 自己認識(外部の声ではなく自分の内なる声に耳を傾ける)
④ 誠実(自分に正直である)
⑤ 個我の尊重(選択の積み重ねが自分にとって相応しい姿を形成する)
⑥ 自己開発(自分の可能性を開発し現実なものとする)
⑦ 至高体験(自己実現の瞬間的な達成により恍惚感を得る)
⑧ 自己防衛の放棄(自分自身にオープンになることで自己防衛を放棄する)


【参考】
『組織行動の考え方』金井寿宏・高橋潔著 東洋経済新報社
『現代ミクロ組織論』二村敏子編 有斐閣

スポンサーサイト



コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
「中小企業診断士のための経済学入門」※絶賛在庫中!
連絡先:rsb39362(at)nifty.com
※ (at) は @ に置き換えて下さい
(お急ぎの場合は携帯電話までご連絡ください)

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR