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お金をあげるとやる気がなくなる?(内発的動機づけ理論)②

前回に続き内発的動機づけ理論を見ていきます。内発的動機づけとは、内的報酬によりモチベーションを高めることで、具体的には熟達感、成長感、充実感、達成感、責任感、使命感、好奇心などが挙げられました。そして内発的動機づけは金銭報酬が与えられると低下する可能性があることに触れました。


■向いていて、自らの意思で行う活動はやる気が高い

デシによれば、内発的動機づけは、「有能さ(自分の環境を効果的に処理できる能力・力量)」と「自己決定の感覚(自分の行動の原因が自分自身である)」によって高まるとしています。特に「自己決定の感覚(自律性)」を重視しています。

言い換えれば、向いていて、自らの意思で行う活動はモチベーションが高く、「その仕事に向いていない」「やらされている感覚がある」場合は、モチベーションが上がらないということです。

一方、金銭報酬といった外的報酬はインパクトが高いですから、受け取る側はどうしても外的報酬によって自らがコントロールされている感覚を覚えます。外的報酬には制御的側面があるのです。前回の「内発的動機づけ理論①」で取り上げたバズルの例は、そのことを物語っています。


■外的報酬でも褒めるのはよい

内発的動機づけ理論を職場に応用すると、自己申告制度や目標管理制度を利用して個人の適性に合った仕事を与え、さらに権限委譲によって自主性を持たせればモチベーションが高まることになります。一方で外的報酬は内発的動機づけを低下させるので好ましくないとされます。

しかしながら、外的報酬がかならずしも内なるやる気に水を差すかというと、そういうことではありません。外的報酬には制御的側面だけでなく、情報的側面もあるからです。

たとえば賞賛されたり、褒められたりするといった言語報酬は外的報酬ですが、与えられれば充実感や達成感が高まり、「自分には能力がある」「自分の意志で行動している」という感覚が高まるでしょう。

外的報酬であっても言語報酬(賞賛・表彰)などは内発的動機づけを低下させず、かえって向上させることがあるということであり、これについてはみなさんも異存はないと思います。


■金銭報酬は与え方次第

では金銭報酬についてはどうでしょうか。確かに先述のように金銭報酬には内発的動機づけを損なう機能があります。しかしながら、みなさんも何か成果を上げて褒められたり、ボーナスをもらったりした途端、内なるやる気がなくなるかと言えば、そんなことはないのではないでしょうか。

内発的動機づけというと、単純に「金銭報酬はやる気を損なう」と単純に考えてしまう人もいるのですが、それは適切ではありません。

金銭報酬には、物理的な報酬という面だけでなく、評価(賞賛)というフィードバックによる報酬という面があります。つまり言語報酬と同じ側面があるということです。ですから金銭報酬を与えたからといって、必ずしも内発的動機づけが低下するわけではありません。

またデシは「パフォーマンスと報酬が直接的に結び付けられると、外部からコントロールされている感覚が強まり、内発的動機づけが低下する」と言っているだけです。よって、外部からコントロールされているという感覚を与えなければよいのです。どういうことかと言うと、賞賛や感謝という形で金銭報酬を与えれば、かえって内発的動機づけを高めることもできます。

そのためには与え方も重要になります。成果を上げればその都度、金銭報酬を与えてしまうと、受け取る側はコントロールされているという感覚が強くなります。一方、何かの折に(不定期的に)与えれば、受け取る側もコントロールされている感覚は持ちません。これは賞賛といった言語報酬の場合でも同じです。都度褒められればだんだん嬉しくなくなり、かえって単に機械的に褒めているだけでは?と白々しくなるからです。

また金銭報酬には「自分に対する評価」という面があります。少々の金額を与えると、「自分が行っていることの値打ちはこんなものか」と失望するかもしれません。そうならないためには、パフォーマンスと金額を切り分ける必要があります。たとえば「君の働きに対して感謝の印としてささやかではあるが報奨を与える」という形にするのです。

メダルやトロフィー、賞状はそれ自体は何も経済的な価値はありませんが、もらったらもらったで嬉しいものです。金銭報酬もこれと同じように扱うということです。


【参考】
『現代ミクロ組織論』二村敏子編 有斐閣
『人を伸ばす力』エドワード・L. デシ、リチャード・フラスト著 新曜社
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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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