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成功法則が役に立たない理由(必要条件と十分条件)①

経営書には「○○すればパフォーマンスが良くなる」ということが書かれています。いちいちごもっともとは思うのですが、「本当にそうなのかな」と感じることも多々あり、また実際にベストケースとして取り上げられた企業がその後深刻な業績不振に陥ってしまったという例も数多いです。

こうしたことは何も経営書に限った話ではなく、私たちの身近な環境でもよく見られます。たとえば「どうしたら上手くいくか」と尋ねたら上司や先輩などからそれなりに有難いアドバイスを頂けるわけですが、ふと本当にそうなのかと疑問に感じたり、実際にやってみたが上手くいかなかったりといったことはあるでしょう。

成功要因や問題の原因を推測する際に意識したいこととして、必要条件と十分条件があります。今回はベストセラー経営書「エクセレント・カンパニー(トム・ピーターズ、ロバート・ウォーターマン著 英治出版)」を例にしてみましょう。


■エクセレント・カンパニーの条件

これまでで最も売れた経営書の1つに1982年に出版された「エクセレント・カンパニー」があります。これは超優良企業の条件を導き出したもので、これまで世界で100万人以上の人に読まれたと言われます。

超優良企業43社に共通して見られた条件とは、①行動の重視、②顧客に密着する、③自主性と企業家精神、④人を通じての生産性の向上、⑤価値観に基づく実践、⑥基軸から離れない、⑦単純な組織・小さな本社、⑧厳しさと緩やかさの両面を同時に持つ、の8つです。どれもが確かに否定しがたい成功の条件に思えます。


■エクセレント・カンパニー、急速に輝きを失う

しかしながら、「エクセレント・カンパニー」が出版されたわずか2年後、取り上げられた超優良企業43社のうち、少なくとも14社が深刻な経営不振に陥ってしまったのです。

フィル・ローゼンツワイグ(IMD教授)がエクセレント・カンパニー43社のうち業績が公表されている35社について1980年からの5年間の株主利益率の成長率を調査したところ、市場平均を上回ったのはわずか12社だけ、つまり過半数は超優良どころか平均にも及ばなかったのです。


■もともと調査方法に問題があった?

「エクセレント・カンパニー」での調査には色々な問題が指摘されていますが(注)、適切に調査が行われたとしても十分な結果が得られなかった可能性があります。「エクセレント・カンパニー」での調査方法は次のとおりです。

① 高業績企業を実現している企業をリストする。
② 高業績企業が備えている特質や条件を探す。
③ 共通する特質や条件があれば、それを高業績の条件に認定する。


経営書の多く、そして私たちも何か要因を探る時には無意識的にこのような手順を踏まえていると思います。「いくつかのケースから共通点を探る」ということで帰納法(類似の事例をもとにして、一般的法則や原理を導き出す推論法)的なアプローチと言えます。

しかしながらこの手順には大きな問題があります。成功要因をすべて洗い出しているとは限らないからです。
(つづく)

注:
後に著者の1人であるトム・ピーターズが、まず企業を選んでからデータを揃えたこと、さらにデータを改竄したことを認めています。


【参考】
『ブラックスワンの経営学』井上達彦著 日経BP社
『なぜビジネス書は間違うのか』フィル・ローゼンツワイグ著 日経BP社

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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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