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原因を特定するための方法(一致法と差異法)

私たちは日頃接する様々な事象から何らかの成功パターンを見出そうとします。しかしながら「成功法則が役に立たない理由(必要条件と十分条件)①」で見たように、マッキンゼーのコンサルタントが著者のベストセラーとなった書籍でもエラーを起こしています。短絡的に結論に飛びつかないようにするためには、比較分析の手法について理解しておくとよいでしょう。


■一致法と差異法

原因を推測する比較分析の手法には、一致法と差異法があります。

(1)一致法
一致法とは、同じ結果を示す複数の事例を比較して、そこに共通する要因を探るもので、共通の結果をもたらした要因を推論する方法です。基本的には必要条件を洗い出すのに適した方法です。

分析の結果が下の表のようであった場合、各事例に共通する原因Aを成功要因とするのです。「エクセレント・カンパニー」での調査法がまさに一致法です。しかしながら前回の「成功法則が役に立たない理由(必要条件と十分条件)②」で見たとおり、Aは必要条件に過ぎない可能性はあります。

一致法

(2)差異法

同じ結果を示す複数の事例を比較する一致法とは異なり、差異法とは、異なる結果を比較して、互いに違う要因があれば、それが結果の違いを生み出すものと推論する方法です。


極論すれば、たった2つの事例比較でも有効な推論が可能です。ただし、その2つの事例は、たった1つの要因を除いて、他の要因についてはすべて同じでなければいけません。その条件を満たせば成功するということを明らかにするという意味で、十分条件を明らかにするのに適しています。

分析の結果が下の表のようであった場合、両事例で異なるのは原因Aだけですから、それが成功と失敗を分けたと推論できます。

差異法


■それでも限界はある…

一致法や差異法による比較で原因Aが抽出できたとしても、それが成功の唯一の条件だと断言することはできません。なぜなら比較分析から確かな推論をするためには、次のような条件が必要だからです。

① すべての要因を列挙した上で分析されている
② 相互作用がないことが確かめられる
③ すべての因果関係やパターンが分析されている
④ 一致法の場合、1つの要因を除いて他は異なっている
⑤ 差異法の場合、1つの要因を除いて他は同じである

すべての要因を列挙する、すべての因果経路を把握することは現実的ではありません。また上の差異法の図表において、「Cの要因を満たしつつAの要因を備えたら成功する」という場合、AとCとで相互作用があると判断されますが、この場合、Aだけ満たしても成功にはつながりません。


■われわれの日常レベルでは十分に役に立つ

それまで正しいとされていた経営理論が覆る典型的なパターンは、要因や因果関係の見落とし、相互作用の視点の欠如です。

このように一致法も差異法も限界があるのですが、それでも調査の最初の段階である「仮説の設定」にはとても有効です。(一致法や差異法以外に有効な方法がないとも言えます)。あとは立てた仮説に対し、さらに一致法や差異法による検証を繰り返していくことで結論の精度を高めることになります。

さて、私たちの日常ではとても厳密な調査など望むべくもありません。基本的には一致法で何らかの仮説を立て、試してみて、結果を検証するというサイクルになりますが、それでも十分な成果が得られます。

見聞きするセオリーに対する私たちの心構えとしては、まずは「本当にその成功要因は成功事例に共通するものなのか」「他に成功要因は考えられないか」というクリティカルな視点を持ち合わせなければならないでしょう。

【参考】
『ブラックスワンの経営学』井上達彦著 日経BP社



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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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