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高い目標のほうがやる気がでるのか?(達成動機説①)

人は何か達成感を得られると自分の有能さを確かめることができます。人間の何かを達成したいという欲求は達成欲求と呼ばれ、これに着目したモチベーション理論に達成動機説があります。


■達成動機の強さによってパフォーマンスが変わる

マクレランドらの達成動機説は、達成動機の強い人間の特性を明らかにし、達成動機の強さによって行動の選択やパフォーマンスに違いがあることを示したものです。

人間の欲求を達成欲求、親和欲求(周囲との関係を良くしたいという社会的欲求)、パワー欲求(権力を得たいという欲求)に分け、何か高い業績を打ち立てるには強い達成意欲が必要と考えられることから、達成欲求に注目したわけです。

具体的に言うと、以下の内容に当てはまるほど達成動機が強いとされます。

<達成動機のチェックリスト>
① 絶えず努力を続けている。
② 人生において大きな業績を残すことが何より大切なことだと思う。
③ 仕事上で大きな成果を出したときに気持ちの平安と自信が得られる。
④ 無理な計画を立て、その達成に向けて努力するほうだ。
⑤ 将来を夢見るよりも、目の前の仕事に全力を傾けるほうだ。
⑥ 切羽詰ってくると、自分の仕事に集中するあまり、他人への配慮がおろそかになりがちなところがある。
⑦ 価値ある仕事をうまく成し遂げたときに、はじめて心から安らぐことができる。
⑧ 何かにつけて競争心を刺激されるほうだ。
⑨ 何かにつけて納得のいく結果が得られるまで頑張り続けるほうだ。
⑩ 仕事も遊びと同じように楽しい。

達成欲求の強い人には、次のような特徴があります。

① 成功するか失敗するかの確率が5割程度の課題の場合に最も燃える。
② 達成の水準が運に大きく左右されるのではなく、自分の努力によって自己責任で決まるような課題を好む。
③ 上手くいったかどうかのフィードバックを求める。


頑張れば実現できることには意欲を示すが、あまりに簡単なこと、自分の力では及ばないことにはあまり意欲を示さないということですね。


■誰もが挑戦意欲を持っているわけではない

以上の内容を踏まえると、「部下には(不可能ではない程度に)高い目標や課題を与えたほうが意欲が高まり、成果も上がりやすい」と思われるかもしれません。「チャレンジが人を育てる」という考え方の背景には、このようなことがあるでしょう。

しかしながら注意しなければいけないのは、「頑張れば実現できることには意欲を示すが、あまりに簡単なこと、自分の力では及ばないことにはあまり意欲を示さない」のは、あくまで達成動機が強い人に限られるということです。

達成動機が低い人は、逆に成功確率が極めて高いか低い課題を選択しがちであることが分かっています。簡単な課題を好むことは想像できると思いますが、ほとんど達成できない課題を選ぶのはなぜでしょうか。


■達成か失敗回避かで挑戦意欲は異なる

失敗回避動機とは、文字どおり失敗を回避したいという動機のことです。人間は何かを達成したいという欲求とともに、失敗を回避したいという欲求も合わせて持っています。アトキンソンは達成動機と失敗回避動機のバランスが課題の選択に影響を与えると考えました。

達成動機が失敗回避動機を上回れば、先述のとおり、成功確率5割程度の課題に強い意欲を示します。一方、失敗回避動機が達成動機を上回れば、逆に成功確率が極めて高いか低い課題を選択しがちになります。「失敗するわけがない」課題や「どうせできない(失敗しても当然な)」課題に気軽さを感じるというわけです。これについては他の調査でも同様の結果が得られています。


■達成動機説を部下のモチベーション管理に活かす

達成動機の強さは教育訓練によって多少は改善することができますが、ほぼ幼少期の経験で決まってしまうところがあります。よって1人1人達成動機の強さは異なるという前提でモチベーション管理したほうが望ましいです。

以上の結果を部下のモチベーション管理に活かすとしたら、次のようになるでしょう。

・日頃からやる気がある部下に対しては、少々チャレンジグな課題を与え、「成し遂げたい」という達成動機を刺激することで、「できるようになりたい」という成長欲求をも刺激して、さらなる意欲の向上を図る。

・日頃からやる気に欠ける部下に対しては、失敗への不安を感じさせないように、頑張れば本人の実力で十分こなせそうな容易な課題を与えることで、少しでもできるようになりたいという成長欲求を刺激する。

・やる気がある部下もない部下も成長欲求はあるので、チャレンジして上手くいかなくても失敗とみなして減点するのではなく、チャレンジした積極性を評価する。



【参考】
『経営組織』金井壽宏著 日本経済新聞社 
『モチベーション・マネジメント』榎本博明著 産業能率大学出版部
『モチベーションの新法則』榎本博明著 日本経済新聞出版社

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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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