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最低賃金を引き上げるとどうなるか(労働市場)②

前回に続き、労働供給と労働需要の関係から賃上げの効果を考えてみます。


■実質賃金を上げるためには?

不況下で実質賃金を引き上げると、労働供給が拡大する一方で労働需要は減少するので、失業は拡大します。
では経済政策的にはどのような対応が求められるのでしょうか。
労働市場2

まずは実質賃金を下げて「労働供給=労働需要」の状態(失業がない状態)にすることです。実質賃金は「名目賃金÷物価水準」ですから、金融緩和によって物価水準を上げれば実質賃金を下げることができます(図2のW2からW*)。この過程を通じて雇用者数(労働需要)は拡大します。

次に失業が少ない状態のまま、財政・金融政策によって景気浮揚を図ります。そうなると企業にも人手不足感が出始め、労働需要曲線が右側にシフトし(図2の労働需要曲線1から2への移動)、名目賃金の上昇を通じて実質賃金が上昇に転じてきます。また引き続き雇用者数は増加し続けます。なお労働需要曲線が右シフトするのは、同じ実質賃金でも求人数が増加するからです。

さらに労働需要曲線が2から3のように労働供給の限界を超えてシフトするようになると、タテ軸の実質賃金は急激に上昇するようになります。

現在のアベノミクスはこの過程の途中段階にあると言えます。安倍首相も最低賃金の引き上げを掲げており、産業界への賃上げを要請していますが、もともと企業側でも賃上げをする必要があるのですから、旧民主党時代とは異なり、失業が拡大する恐れは低いでしょう。


■経済政策はタイミング次第

当然ながら景気状況に応じて経済政策は異なります。不況期には金融緩和や財政出動を図って景気浮揚に努め、好況期には金融引き締めや緊縮財政によって景気の過熱を防ぎます。

同じ最低賃金の引き上げでもタイミングによって効果がまったく異なります。旧民主党時代のそれは失業の拡大につながり、第二次安倍政権のそれは経済的要請の追認にすぎません。


■正規雇用優遇の裏にあるもの

また賃金の引き上げは雇用が確保されている人にとっては朗報ですが、その影には学生や非正規雇用、失業者の犠牲がある点に注意する必要があります。日本は正社員の身分保障が厚いと指摘されていますが、その分、不況下では採用が極端に抑制されるという面は無視できません。

中高年のリストラはどんな国でも悲惨なものでしょうが、日本の場合はそれが特に深刻化するのは、正社員の身分保障がまだまだ手厚いことにも原因があります。どの企業も正社員を抱え込まざるを得ないのなら、離職者の再就職口が失われるからです。

国際的に見ると、解雇要件の厳しい国であるほど、就業率(生産年齢人口に占める就業者の割合)が低い傾向があります。

正社員の身分保障を維持し賃金を上げつつ、非正規雇用や求職者の待遇を改善するというのは、よほど景気が良くないと困難です。残念ながら日本の左派政党の主張は、正社員の身分保障を維持するかさらに手厚くするだけで、求職者や非正規雇用にはあまり配慮していないように感じます。

【参考】
『こんなに使える経済学』大竹文雄編 筑摩書房
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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
「中小企業診断士のための経済学入門」※絶賛在庫中!
連絡先:rsb39362(at)nifty.com
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