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東京五輪のエンブレムはまったくのオリジナル?②

他人の思考や経験に触発されずに自分1人で行うことは、どんなによくても、いささかつまらないし単調だ。」(アルバート・アインシュタイン)


前回、「東京五輪のエンブレムはまったくのオリジナル?①」で、制作者の佐野研二郎氏のオリジナリティについて、取り上げました。ここで2つの興味深い心理学者の実験を紹介したいと思います。長いので少し端折っています。詳しくは末に記載してある参考書籍をご覧ください。


(1)マイヤーの実験

大きな部屋に2本のロープを天井から吊るし、その間隔は、片方のロープを掴み、もう一方のロープのほうに歩いて行っても、そのロープには掴めない程度の距離とした。部屋にはポール、ペンチ、椅子、延長コードを置き、個々の被験者に、2本のロープを何らかの方法で結ぶ方法を考えさせた。

ほとんどの被験者がポール、椅子、延長コードを使った3つの解決法を思いつくことができたが、ペンチを使う第4の解決法については浮かばなかった(答えは、部屋の中央に吊るされたロープにペンチを括りつけ、これを壁のほうのロープに向けて振り子のように揺らしておき、今度は壁に近いほうのロープを掴んで中央に戻り、ペンチをつけたロープが手の届くところまで揺れてきたときに、ぱっと掴む)。

そこでマイヤーは、この解決法を10分以内に思いつかなかった被験者(全体の600%)に対し、何気ないヒントを与えた。窓の方に歩き出し、その途中で、一方のロープに「たまたま」触った振りをして、そのロープを揺らしたのである。その結果、1分以内に40%の人に突然、ひらめきが走り、第4の解決策が浮かんだのである。

実験終了後、どうしてこの解決策が浮かんだのか尋ねると、1名を除き、突然のひらめきだったと答え、マイヤーがロープに「たまたま」触れたことがきっかけだったと自覚している者はいなかった。


(2)クリスチャン・シャーンとケビン・ダンバーの実験

2日間、生物学専攻の学生を集め、2つのグループに分け、2日目に「なぜ一定の遺伝子の活動が抑制されているか」について問うた。ただし、第1グループには初日に解答のヒントとなるようなウィルスに関する問題を与え、第2グループにはまったくヒントとならないような問題を与えた。

正答率は、当然、第1グループのほうが高かったが、このグループにいた学生のうち、初日に出されたウィルスの問題がヒントとなったことを意識した者は1人もいなかった。また「初日と2日目の問題の共通点は何か」を具体的に尋ねられても、初日に2日目の問題のヒントが与えられていたことに気づいた者はいなかった。


この2つの実験から言えることは、被験者たちは、自分が独りで洞察を得たと信じているが、実際には何らかの「社会的出会い」が引き金となってアイデアが浮かんだということです。文学であれ、アートであれ、学術上の理論であれ、おおよそアイデアとは、個人の直感的なひらめきなどではなく、過去の社会的な交流やコラボレーション、過去に得た知識・知見がベースとなっているということです。

このことは、ラテラル・シンキング(水平思考)やイノベーションを考える上でとても重要なことなので、また回を改めて考えていきたいと思います。

今回の佐野氏がどうだったかは分かりません。ただし、ベルギーの劇場のものかはともかく、過去に似たようなものを佐野氏が目にしていて、それが五輪のデザインに何らかの影響を及ぼした(ただし本人は自覚していない)と考えることはできないでしょうか。

ただし、この場合、佐野氏に責を問うのは酷な気がします。なにせアイデアとは何らかの模倣なわけですから。劇場のロゴをデザインしたオリビエ・ドビ氏が国際オリンピック委員会(IOC)に使用差し止めを提訴したようですが、果たして盗作だとどのように立証するのでしょうか。どのような判断がされるか興味深いところです。


【参考】
「凡才の集団は孤高の天才に勝る」キース・ソーヤー著 ダイヤモンド社

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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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