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「1人あたりの生産性を上げる」は正しいか?(需給ギャップ)③

■原因と結果が逆なのでは?

1人あたりの生産性を上げるという議論を聞くと、どうも原因と結果の関係が逆ではないかと思えることがあります。

1人あたりの生産性を上げると(原因)、GDPが増加する(結果)と考えがちです。しかしながらデフレギャップが生じている状態では、実際のGDPは総需要で決まるのですから、総需要が増えてGDPが増加すると(原因)、それを労働人口で割った1人あたりの生産性が上がる(結果)というほうが正しいように思えます。

また、安定化政策により景気が上向けば人手不足感が強まり、その結果、必然的に企業は生産性を高めるような施策を取らざるを得なくなります。マクロ的には掛け声よりも必然的に生産性を上げる環境整備(経済成長)のほうが有効と思われます。

経済財政白書等で日本の低成長あるいは1人あたりGDPの低さの要因を成長会計分析という手法を使って、技術・知識、労働力、資本装備率(労働者1人あたりの機械・設備の充実度合い)などの観点から検討していますが、個人的な意見を言えば、あまり意味がないように思えます。

成長すればそれだけ研究開発に回る資金ができ、機械・設備が充実し、失業者も減少するわけです。まさに「成長はすべての矛盾を覆い隠す(チャーチル)」わけです。


■ただし需要増加につながる供給サイドの改革は有効

ここまで「1人あたりの生産性が上がる=1人あたりの生産量が増える」と捉え、その弊害について述べてきましたが、需要の創出につながるような生産性の向上であれば、GDPの押し上げに寄与します。

具体的には規制緩和や民営化はそれを契機にサービスの質の改善や新産業を育て、新たな需要増加につながる可能性はあります。また労働者の時間あたりの生産性が高まり、それだけ労働時間が減ることで消費増加につながる可能性もあります。

単に供給力を上げるのではなく、需要増加につながるようなサプライサイドの改革が望まれるということです。漠然と「1人あたりの生産性を上げると景気が良くなる」と捉えてしまうと、間違った政策的な結論になりかねません。感覚的にとらえるのではなく、具体化・客観化する姿勢が望まれます。


■28兆円規模の経済対策の効果は?

今月2日、政府は臨時閣議で、「未来への投資」の加速を目的として、リニア中央新幹線の全線開業の前倒しなどを盛り込んだ、事業規模が28兆円余りとなる新たな経済対策を決定しました。政府はこれにより、GDPを実質で1.3%程度押し上げることが見込まれるとしています。

今回の予算案をGDPギャップの観点から検討してみます。まず28兆円の事業規模がすべてGDPギャップの解消(GDPの押し上げ効果)に当てられるわけではありません。

通常、GDPの押し上げ効果に直接寄与する予算部分を「真水」といい、具体的には、予算執行側(諸官庁)あるいは企業・国民から見て資金の返済義務のない公共投資や給付金などが該当します。一方、予算執行側(諸官庁)あるいは企業・国民から見て資金の返済義務のあるもの、たとえば低利融資や債務保証などは「真水」には当たりません。

この観点から今回の補正予算の一般会計と特別会計の「真水」部分を概算すると8~9兆円規模となり、現在の日本のGDPギャップの縮小には貢献すると考えられます。


■日銀は絶好のタイミングを逃した?

その一方で7月末の日銀金融政策決定会合では、現在の年間80兆円規模の量的金融緩和規模が維持されることが決まりました。財政政策と金融政策のポリシーミックスが経済成長には不可欠であり、金融緩和の効果はタイムラグが生じることを考えると、日本銀行は絶好のタイミングを逸した形になります。

今回の金融政策決定会合後の総裁定例記者会見を見ると、次回(9月)の金融政策決定会合において、「量的・質的金融緩和」導入以降の政策効果について総括的な検証を行うこととしたとあります。2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するためには、今後、何が必要か、という観点から検証を行っていきたいとあり、今後の追加緩和策に期待したいところです。

【参考】
日本銀行/金融政策決定会合の運営/総裁定例記者会見
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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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