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テロリストに見る組織の病理(承認欲求④)

テレビなどでのテロの解説をみると、貧困などの社会構造説や精神的病理説が多く、あまり社会心理学的な観点からの論評は見られないように思います。別に貧困でなくても、精神的な疾患がなくてもテロを起こす人はいます。ついでにいくつかの社会心理学の考え方を取り上げてみます。


■誤った正義、過度な自信、内向き志向がテロを生む

ゾメルンらは社会運動(反社会運動)に身を投じる者の特徴として、不正義の知覚、自己効力感、社会的アイデンティティの3つを挙げています。

「現在の政治体制は不公正だ」「多くの人が虐げられている」といったことが不正義の知覚です。これは自らの理想と現実とのギャップによって生じます。

自己効力感は「自分が世界を変えることができる」という思いのことです。達成志向や支配欲が強く、他との衝突を厭わない人にこの傾向が強いです。

社会的アイデンティティは集団と自分を同一視している程度のことです。自分の所属集団である内集団が外集団より不利な状況にあれば、不満が高まります。

不正義の知覚、自己効力感は、前回触れた高学歴や富裕層出身の若者と重なります。また社会的アイデンティティについては、国家権力との対立が社会運動集団の行動を先鋭化させることと整合的でしょう。


■自由であることの不安がテロを生む

フロムは、人々は一般に曖昧な状況や不確実な状況におかれた場合、不安になり、その不安から逃れて、安心感を得ようとして権威のある人物に盲目的に追従してしまうという考えを主張しました。自由とは、先が見通せない将来に対し、自己責任を要請することです。そこから逃れるために自己決定を放棄し、カリスマ的なリーダー(宗教的主導者や政治的独裁者を含む)に盲従してしまうのです。

必ずテロリスト集団にカリスマ的なリーダーが存在することは偶然ではありません。


■テロリストであり続けることに意味がある

ディツラーは、テロリストはプロセスの中に生きていることを指摘しています。彼はテロリストにとって目標達成よりもテロリストになって集団と一体化していくプロセスと、それを成員が相互に確認することのほうが大切であると述べています。目標が達成されると、集団内での存在意義を失わないために、より過激な目標が達成され、ますまずエスカレートしていくのです。テロリストには意味のある目標などなく、意味のあるのは自分がテロリストであり続けるプロセスなのです。


■テロリストの行動は会社組織にも当てはまる

以上のようにテロリストは過度に自己効力感が高く承認欲求が強いということがわかります。自分より弱い無防備な人々を狙うのは自己効力感の表れでしょう。

相模原19人殺害事件の容疑者が大森衆院議長に送りつけた文章や自供内容をみても、自信過剰である反面、身勝手な承認欲求が目に付くという相反する二面性が皮肉なところです。

さてテロリストというと縁遠い話に思えます。しかし、「外部からのプレッシャーが過度な内向き志向を生み、自分たちの能力への過信と相まってハイリスクな行動に駆り立てる」「曖昧な状況や不確実な状況におかれた場合、不安にかられ、社内の権力者に盲従する」「それが有効であるかはともかく、組織内での存在感を確保するための方策に邁進する」といったことは一般の組織でも見られる現象ではないでしょうか。

【参考】
『グループ・ダイナミックス』釘原直樹著 有斐閣
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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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