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「分析をしてから結論を出す」は正しいか?(仮説思考)③

経営戦略というと、最初に精緻な分析を行った上で戦略を立案するというイメージがあると思います。これはこれで正しい面もあるのですが、行き過ぎると有効な戦略を立案できないどころか、それを実行するとかえって組織に害悪をもたらすことにもなります。

■分析型アプローチとプロセス型アプローチ

経営戦略のプロセスには、大きく分析型アプローチ(あるいはデザイン学派)とプロセス型アプローチ(あるいはラーニング学派)の2つの考え方があります。

分析型アプローチとは、端的に言えば「最初に精緻な戦略を立てる」という考え方です。一方、プロセス型アプローチとは、「最初は戦略のアウトラインだけ決めておき、実行の過程で得られた結果をアウトラインに反映させ、修正を図る」という考え方です。


■分析型アプローチによる戦略策定プロセス

分析型アプローチを採用した場合、少なくとも半年から1年以上の時間をかけて徹底的に外部環境や内部資源を分析した上で戦略やその実行のための計画が策定されます。欧米の場合、MBAホルダーを集めた経営企画部門がそれを担いますが、場合によっては多額の費用をかけてコンサルティング・ファームの支援を仰ぐ場合もあります。

戦略・計画の策定と実行は二分化され、現場部門は本社部門が作成した計画の実行を求められるのみです。

このような分析型アプローチによる戦略手法は欧米において1970年代後半から80年代にかけて採用され、戦略策定のプロセスが精緻化・ルール化されていきました。しかしながら、こうしたアプローチを採用しても業績が低迷するケースが相次ぐことになったのです。


■最初に精緻な分析を行うことの弊害

なぜ分析型アプローチでは上手くいかなかったのでしょうか。その理由は、黙々と実行だけを迫られる現場部門のモラールが低下する(その結果、計画が実行に移されない)こともありますが、「最初に徹底的に分析する」ことに依存します。

・外部環境の分析の際に、客観的なデータ(たとえば販売データや市場規模など) が重視されるが、それはこれまで起きたことの分析である。よって分析から導出される戦略は過去の延長にすぎず、環境が変化した場合には役に立たない。

・そもそも分析で将来を予測すること自体が無理である。

・新たな動きはデータとしては少なく、統計上の外れ値(例外)として排除されて
しまう。

・他社に打ち勝つためには独創的な戦略が求められるが、どの企業も同じようなデータに基づいて戦略を策定しているので独創性が期待できない。

・新機軸を打ち出すためには(曖昧さのある)定性データによる気づきや現場の洞察・観察が必要だが、(曖昧さのない)定量データでは発想のための情報としては限界があり、創造性が生まれにくい。そもそも定量データが入手できるまでに時間がかかりすぎ入手した後では手遅れになることも多い。

・後に無効であることが明らかとなった戦略でも、多額の費用や時間をかけて策定した以上はそれを修正したり棄却することに大きな心理的な抵抗を感じる。戦略や計画が精緻であるほどこの傾向は強くなる。

・一度精緻な戦略や計画を策定してしまうと、それで安心してしまい、「それを忠実に実行する」ことだけに関心が集まり、修正しようという意欲がなくなる。

・現場部門は細かくスケジュール化された計画の実行に追われ、新しいことを試したり、試行錯誤する余裕がなくなる。そもそも現場部門には独創性は期待されておらず、全体との整合性のみが求められている。


(戦略策定)プログラムは一定の環境であれば有効だが、環境が変われば役に立たないのです。


【参考】
『戦略計画 創造的破壊の時代』H・ミンツバーグ著 産能大学出版部
『戦略サファリ』ヘンリー ミンツバーグら著 東洋経済新報社

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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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