FC2ブログ

「3人寄れば文殊の知恵」か「船頭多くして船山登る」か①

ことわざや格言は往々にして矛盾しますが、これもケースバイケース、あるいはバランスの問題なのでしょう。

今回は「個人の知恵が勝つか、集団の知恵が勝つか」について考えてみたいと思います。とは言え少しややこしい話なので、今回はあくまで導入部です。

さて、チームビルディングやブレイン・ストーミング(※)の必要性が叫ばれています。「みんなの力を結集すれば必ずよいアイデアが生まれる」というわけです。

まさに、まさに。成功した新商品開発の多くが、チームビルディングの有用性を説いています。たとえば世界有数のデザインファームであるIDEOでは、ブレイン・ストーミングによって、次々と斬新なアイデアを生み出しています。ご興味がある方は、「発想する会社!」「イノベーションの達人!」(ともに早川書房)をお読み頂くとよいでしょう。
 
※各メンバーがアイデアを出し合うことによって新たな発想の誘発をねらうもの。

しかしながらその一方で、集まってアイデアを出し合ったものの発散して終わってしまったり、なんとか懇談会のように単なる飲みサークルになったりといったご経験もあると思います。実際、ブレイン・ストーミングは、メンバーが一緒にやるのではなく、各自が別々に考えたものを持ち寄ったほうが効果が高いという結果もあります。

また、優れたリーダーやアイデアマン(個人)による着想が成功を呼んだというケースも多く目にするわけです。歴史上、偉大な功績を残した科学者、作家、アーティスト、あるいはスティーブ・ジョブズといったカリスマ経営者は、そのイメージに近いかもしれません。

つまり「3人寄れば文殊の知恵」とは、「3人寄ればいいアイデアを生み出すこともある」「よい意思決定を行えるかもしれない」という程度で必ずそうなるわけではないということですね。

では個人の意思決定と集団の意思決定では、どちらが勝るのでしょうか。ある研究によれば、次のようになるとのことです。

   グループの平均的な個人の結論(ワースト)
  ≦グループの結論(グッド)
  ≦グループで最も優秀な個人の結論(ベスト)


また、スニーゼックはグループの異なった意思決定の方法の結果を比較してみました。

①話し合いによるコンセンサス方式
②自分の意見のバイアス(偏り)も含めて議論する対話方式
③話し合いで独裁者を決め、その独裁者が最終決定する方式
④話し合うことなく、匿名の意見書を出して共有し、結論が出るまでそれを繰り返す方式
⑤他のメンバーとまったく話し合わず、各個人が出した結論の平均を取る方式。

どれが最も意思決定の質が高かったでしょうか?

おおよそ想像がついたかもしれませんが、①から④は⑤よりも正確性が高く、そのなかでも③が最も質が高いという結果が得られました。ただしその独裁者も自分の意見をグループの平均的意見に調節することが多く、結果として正確性を下げていることが分かりました。

これらの研究は、「優れた個人の意思決定がグループの意思決定に勝る」ということを裏付けていますが、実際にはケースバイケースのようです(集団が優秀な個人を勝ることもある)。その話は今後考えていくとして、今回は「必ずしもグループの意思決定が個人の意思決定に勝るわけではない」と言うに留めておきます。

(参考文献:『経営意思決定の原点』清水勝彦著 日経BP社)

スポンサーサイト



コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
「中小企業診断士のための経済学入門」※絶賛在庫中!
連絡先:rsb39362(at)nifty.com
※ (at) は @ に置き換えて下さい
(お急ぎの場合は携帯電話までご連絡ください)

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR