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トランプ経済学①(保護貿易主義)

先週はアメリカの大統領選の話題一色でした。水曜午前中にトランプ氏優勢が伝えられると、日経平均株価は急激に下落、9日には1000円近く下落したものの、翌日には急反発し、1000円以上の値上がりで終えました。

トランプ氏の勝利演説が好感的に捉えられたからとの報道がありますが、ニューヨークのダウ平均株価が上昇したことを受けて慌てて買い戻したというのが実情でしょう。

トランプ氏については、国内では安全保障面でのリスクを中心に取り沙汰されていますが、経済政策面ではどうなのでしょうか。

ダウ平均株価が上昇したところを見ると、少なくともマーケット関係者の間ではトランプ氏の経済政策はそれほど否定的と見られていないと考えることもできます。実は日本でも以前よりトランプ氏の経済政策は割とまともなのではないかという意見はありました。


■トランプ氏の経済政策

トランプ氏は勝利演説の中で「経済成長率を2倍にする」と宣言しました。またトランプ氏の公約「100日プラン」を見ると、経済政策的には大きく①保護貿易主義②大規模な財政拡大③大幅な減税に集約されると考えられます。

トランプ氏の政策の不確実性は、共和党的な政策と独自色が入り混じっていて、何をやろうとしているのか分かりにくいことにあります。
たとえば大規模な財政政策は大きな政府志向のある民主党的である一方、減税政策は小さな政府志向である共和党的な政策と言えます。オバマ政権下で進められたTPPも従来の共和党の政策とは相容れないものではありませんが、トランプ氏は離脱の立場です。

このあたりの不透明さは今後も世界経済のリスク要因として残り続けるでしょう。


■保護貿易は経済学的に「あり得ない」

トランプ氏の経済政策の中で最も取り沙汰されているのが、保護貿易主義です。保護貿易は経済成長につながらず、結果的には自国民の生活に悪影響を及ぼすことは実証されています。これは経済学的には比較優位説と余剰分析によって説明されます。


■貿易の利益は200年前に明らかにされている

比較優位説とは、イギリスの経済学者、デヴィッド・リカードが19世紀に提唱した交換(トレード)の利益を表したものです。経済学の基本中の基本の考えであり、異を唱える経済学者はまずいません。

比較優位説は、かなり大雑把に言えば、各国が自国内で効率的に生産できる産業に特化し、余剰生産物を取引することで結果的に相互が得をするという考え方です。


たとえばA国(人口6人)は農産物1単位の生産に4人の労働力を必要とし、工業製品の生産に2人の労働力を必要とするとします。一方、B国(人口15人)は農産物1単位の生産に5人の労働力を必要とし、工業製品の生産に10人の労働力を必要とするとします。

この場合、A国はB国に比べて農産物も工業製品も少ない労働投入量で1単位を生産できますが、両方の製品を生産するのは好ましくありません。仮に両国全体で見て極めて生産性の高い工業製品の生産にA国が特化し、思い切って農産物の生産をB国に任せたとします。

この場合、両国で工業製品を3単位(6÷2)、農産物を3単位(15÷5)生産できますから、A国が両方の製品を生産した場合(よってB国も両製品を生産することになる)の「農産物2単位:工業製品2単位」より、両製品の総生産量が増加することになります。あとは国内消費しきれなかったものを貿易によって交換すればよいのです。

比較優位説は全体で見て最も大きな生産が可能となるように分業の仕組みをデザインしようというもので、おおよそ分業とはそういうものであることはややこしい数値例を出さなくてもイメージできるのではないかと思います。国際貿易はそのような分業の仕組みなのです。
(つづく)


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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
「中小企業診断士のための経済学入門」※絶賛在庫中!
連絡先:rsb39362(at)nifty.com
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