fc2ブログ

トランプ経済学⑤(公共投資の効果)

アメリカの株高はトランプ氏の大規模なインフラ投資が景気拡大につながるとの期待から生じているようですが、同時に利子率の上昇期待(予想)につながり、円安ドル高につながっているというのが多方の見方です。
大統領選前にはメディアでは円高株安予想が支配的であったのに、あれは一体何だったのだろうかと思ってしまいます。


■財政支出の鍵は利子率調整

さて前回、トランプ氏の大規模なインフラ投資が利子率の上昇を招き、それが国内の民間投資の減少を招くという点について触れました。

利子率を操作できるのは金融政策を担う中央銀行です。金融政策の目的の1つは、貨幣量をコントロールすることで利子率を操作することです。貨幣量を増やせば資金の調達コストである利子率を低下させることができます。また貨幣量は買いオペ(単純に言えば国債などの債券を買ってその代金を刷って支払う)によって増やすことができます。

トランプ氏の金融政策のポリシーはあまり明確ではありません。その方面に明るくないのか、アメリカの中央銀行にあたるFRB(アメリカ連邦準備制度)の利上げを促す一方で、中所得者向けの低金利を主張するといった具合に、過去の発言には一貫性が見られません。

しかしながら自分の政策を推し進めると、必ず利子率の上昇という壁にぶち当たるわけですから、財政政策と同時にFRBとの協調が求められてきます。


■ヘリコプターマネーとは?

トランプ新大統領は、ヘリコプターマネー政策を行うのではないかという見方があります。

ヘリコプターマネー政策とは、中央銀行が、政府が発行した国債を引き受けるというもので、財政と金融の同時緩和政策(ポリシーミックス)です。これは政府の減税政策や公共投資の原資を中央銀行が貨幣を刷って賄うということを意味します。あたかも中央銀行がヘリコプターで空からお金をばらまいているかのようで、「ヘリコプターがどこに来るのか教えて欲しい」というジョークもあるようです。

このアイデアは、かつてノーベル賞経済学者のミルトン・フリードマンによって論じられ、現在は前FRB議長のベン・バーナンキが主張しています。


■ヘリコプターマネーへの批判は妥当か?

ヘリコプターマネーについては、日本でも導入するべきだという意見があります。

ヘリコプターマネーとは、政府の借金を中央銀行が肩代わりするということなので政府の財政赤字に歯止めがかからない恐れが強く財政ファイナンスであると反対派からの批判が強いです。

しかしながらこの批判はあまり妥当ではありません。まずそもそも既に日本では日銀の国債直接引き受けを行っています。日銀の国債直接引き受けは国会決議が必要ですが、既に毎年7~8兆円の直接引き受けを実施してきています。

次にヘリコプターマネーのリスクは財政赤字の拡大ですが、既に本ブログでも触れたように日本の財政赤字はそれほど深刻ではなく、また政府の負債がその子会社にあたる日銀の資産となるわけですから、統合政府レベルで考えると両者は相殺されるからです。

さらにヘリコプターマネーを行うと確かにインフレになる懸念がありますが、日本のようにインフレ目標(インフレ率の上限)を設定してコミットし、それを超えてインフレになれば実施を止めればよいだけです。日本のようにデフレから脱しきれていない状況では、インフレ懸念は早すぎると言えます。


■行き着く先はヘリコプターマネーか?

既にアベノミクスでは、日本銀行が国債を買い入れていますから、ほとんどヘリコプターマネー政策と同じことをやっています。というより中央銀行の国債の買いオペ自体が広い意味ではヘリコプターマネー政策とも捉えることができます。

ヘリコプターマネーの特徴は、新規の経済政策のための国債発行額を中央銀行が直接買い入れる点(同時性と直接性)にありますが、経済政策と買い入れ額が直接結びついていなくても、また直接引き受けではなく市場から国債を買ってもやっていることは同じだからです。

大規模な財政支出を国債発行で実施するには、FRBの金融緩和による利子率の調整が求められるのであれば、究極的にはヘリコプターマネーに行き着くことになります。


【参考】
高橋洋一の俗論を撃つ!ダイヤモンド・オンライン/「ヘリコプターマネー」の効果はアベノミクスとほぼ同じ/2016/07/14
スポンサーサイト



コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
「中小企業診断士のための経済学入門」※絶賛在庫中!
連絡先:rsb39362(at)nifty.com
※ (at) は @ に置き換えて下さい
(お急ぎの場合は携帯電話までご連絡ください)

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR