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集団でよい知恵が生まれるか?②(少数意見の排除)

■知っていることばかり繰り返される

集団で創発(即興)が生まれるためには、お互いに知らない情報について話し合うことが求められるはずです。しかしながら集団のメンバーは、すでに共有している情報について話し合う傾向があることが分かっています。

スタッサーらの実験によれば、議論の中に共有情報が占める割合は45%だったのに対し、非共有情報はわずか18%にすぎませんでした。さらにグループのメンバーが多くなるほど、その傾向は顕著になることが分かりました
(ちなみに「社会的手抜き」も「各メンバー間の調整の難しさによる生産性の低下」も、グループのメンバーが多くなるほど顕著になります)。

しかも議論の中に投入された共有情報のうちの34%が、少なくとも一度は繰り返し話題にされていたといいます。

つまり話し合いでは確かに情報交換が行われますが、その時間の大部分は既に共有されている(みんな知っている)情報をやりとりすることに費やされていたのです。


■なぜ共有されている情報ばかり話題にするのか?

なぜ人々は共有されている情報ばかり話題にするのでしょうか。これは人間が持つ確証バイアスによって説明されます。

確証バイアスとは、個人の先入観に基づいて他者を観察し、自分に都合のいい情報だけを集めて、それにより自己の先入観を補強するという現象です。

議論の過程で自分にとって最良と思える意見が出ると、それを擁護するような情報のみが検索され、それが議論の俎上に上がることになります。その結果、情報に偏りが生じます。

さらに共有情報は複数のメンバーに共有されているため、他のメンバーからも支持を得やすいことになります。
誰も知らない情報(非共有情報)には同意しにくいものです。

以上より議論が進むにつれ、非共有情報はますます少数派になり、議論の俎上に乗りにくくなります。共有情報ばかり取り上げられれば時間的にも非共有情報について取り上げられることは少なくなります。また非共有情報を言い出しにくくもなります。

会議の雰囲気が出来上がってしまうと、みんなと観点が異なる意見(反対意見)が出なくなる理由はここにあります。


■沈黙の螺旋

議論の過程で少数派が意見を言わなくなる過程をまとめると、次のようになります。

①多数のメンバーが共有する情報は、何度も繰り返し取り上げられ話し合われる。
②多数のメンバーの共有する情報が、話し合いの中で取り上げられる頻度や時間が多くなるほど、少数派のメンバーの持つ情報が取り上げられる機会が少なくなる。
③メンバーは、自分の意見が他のメンバーによって支持されていない(自分が少数派にいる)と思うと、意見を言わないようにする。
④メンバーは、自分が少数派だといったん思い込むと、実際にはそうではない状況であっても意見を言わなくなる。

ここでポイントなのは、実際はともかく少数派だと思い込むことで意見が控えられてしまうということです。
たとえば10人の会議の場で3人が声高に同じ意見を主張し、それに対し1人が反対意見を述べたとします。

この場合、3人が自分たちの主張を裏付ける根拠を繰り返し述べ続けるうちに、1人は少数派であると思い込み、自分の意見を言わなくなります。ただし残りの6人も(沈黙はしているものの)実は同じく反対派であるかもしれないのです。

このように往々にしてその場の雰囲気が議論を支配してしまうことは経験的にもわかるかと思います。


【参考】
『会議の科学』岡本浩一、石川正純、足立にれか著 新曜社
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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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