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私たちは物価上昇を意識するのか?②

前回、デフレがマズイ理由を、フィッシャー方程式(実質利子率=名目利子率-予想インフレ率)から触れました。先日、ラジオ番組で、評論家の宮崎哲弥氏もこの観点からデフレのマズさを説明していました。資金を借りようとする人や既に借りている人にとっては、デフレ(あるいはデフレ予想)は、金利負担の上昇を意味し、資金需要を圧縮させ、設備投資や住宅投資意欲を減退させるというわけです。

フィッシャー方程式は、デフレの説明としては簡便で使い勝手がよいのですが、なかなか庶民感覚には伝わらないように感じます。素朴に「私たちは物価の上昇率を意識するのか?」という疑問にぶつかるからです。


■私たちは実質ではなく名目の世界に生きている?

名目とは額面上の値であり、実質とは名目から物価上昇率や予想インフレ率(期待物価上昇率)を控除したものです。

私たちが給与明細や契約金額で目にするのは、名目の額です。物価上昇率を新聞やニュースで目にすることはあっても、名目の額から物価上昇分を差し引いた実質の値を意識することはほとんどないでしょう。

名目と実質を同一視してしまう現象のことを、経済学では貨幣錯覚といいます。経済学では実質ベースで考えることが基本ですが、さりとて人々の名目と実質を同じに扱うという傾向を無視することはできません。


■実は私たちはインフレ率を予想している

確かに私たちは名目の世界に生きているのですが、さりとて期待物価上昇率をまったく意識しないわけではありません。実は知らず知らず意識しているのです。

物価が上がれば企業の名目上の売上や利益が増えます。そして、よほど渋い会社でなければ従業員1人1人の名目上の所得も増加します。「うちの売上や利益はどれくらい上がるだろう?」「今度のボーナスはどれくらい上がるかな?」というのは、まさに期待物価上昇率を意識したことです。

もちろん景気がよくなって物価が上昇しても、その恩恵は企業によって異なります。物価が上昇しても業界の構造的問題や経営の失敗によって、従業員の給与が上がらないケースは出てきます。

しかしながら、全国の企業の「どれくらい売上や利益が上がるだろう」、従業員の「どれくらい自分の所得が上がるだろう」ということを全体で集計し平均化すれば、それはおおよそ期待物価上昇率に相当することになります。

フィッシャー方程式に当てはめると、期待物価上昇率がマイナスということは、国民全体が、今後、自らの所得が減る率を平均した値を示していますので、いくら金利が低くてもそれでも負担が重く、お金を借りにくい状況ということを意味します。

逆に期待物価上昇率がプラスであれば、企業や人々が今後、自社の売上・利益や、自分の所得が上昇するだろうと思っていることを意味します。よって、実際の上がる前から消費や投資が活発化することになります。


■経済の説明を簡単に!

おそらくデフレが悪い最も簡単な説明は、次のようなものでしょう。今後、物の値段が下がることが予想されるのであれば、人々は今は消費や投資をせず、もっと値段が下がるまで待つだろうというものです。

これは経済学では、「マイナスの期待物価上昇率を人々が期待すると、実質貨幣価値が上昇するため、消費や投資の機会費用が高くなり、経済活動が萎縮する」と表現されます。

経済学に不案内であると、まったく意味不明な文章ですが、意味は同じです。経済活動は人間の活動ですから、本来はもっと分かりやすいはずです。私たち自身が素朴にイメージに合うよう考えることが必要ですが、専門家にはもっと普通の人に分かりやすい説明をして欲しいものですね。


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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
「中小企業診断士のための経済学入門」※絶賛在庫中!
連絡先:rsb39362(at)nifty.com
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