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経済学を学ぶ意義②(ミクロの視点とマクロの視点)

前回に続き、経済学を学ぶ意義、特に経済学的思考はどのように普段の生活に活かせるかを私見ながら考えてみたいと思います。


■ミクロの視点とマクロの視点

経済学と経営学の間を行ったり来たりしていると、同じ事象でも立場によって考え方がまったく異なることに気がつきます。

たとえばシャープなどの日本のエレクトロニクス業界の不振の原因について、経営学者は個別企業の経営戦略に求めがちです。たとえば新興国市場への進出に出遅れたとか、現地ニーズを掴みきれなかったとか、もともとデジタル財は日本企業の組織運営と相性が悪いとかいったことです。

一方、経済学者はマクロ環境要因に求める傾向があります(もっとも経済学者もいろいろですが)。リーマンショック以降、急激な円高が進み、個別企業の努力でなんとかなるレベルではないといったことです

当たり前と言えば当たり前なのですが、景気が悪ければ企業業績は悪化します。にもかかわらず経営学者は優良企業に着目し、「不景気でも儲かっている企業があるのだから、景気のせいにはできない。儲かっている企業に見習うべきだ。」と主張しがちです。


■特殊なケースは参考にできない?

しかしながらこの主張には少し無理があります。まず不景気でも好業績を上げているエクセレントカンパニーは、「同業他社にはなし得なかった何かをなし得た存在」であると言えます。極端に言い換えれば、「普通では不可能な何か」をやり遂げたので他社から収益を奪うことができたということです。

「普通ではできないこと」であれば、同業他社にとっては参考にしにくいでしょう。経営戦略論には常につきまとう命題ですが、仮に利益のパイが一定だとして、すべての企業が成功例と同じことをやったとしたら、すべての企業が沈没してしまうはずです。


■「たまたま」に注目して意味があるのか?

次に不景気でも好業績を続ける企業は、当然ながらレアな存在です。統計学的に言えば「外れ値」であり、参考にならないので通常は分析の対象から除外します。また企業の成功と失敗には偶然性が大きく作用し、当たり外れは終わってみないと分からないところがあります。程度の差はあれ「たまたま」な部分があるのです。

仮に「たまたま」業績が良い企業を分析しても意味はないでしょう。それまで経営学に傾斜していた私のものの見方に大きな影響を与えた書籍の1つに「『なぜビジネス書は間違うのか』フィル・ローゼンツワイグ著 日経BP社」があります。その中には、「網にたまたま最後まで引っかかっていた小石を取り出して分析しても何の意味があるのか?」とあります。


■カリスマ経営者、いち企業目線で日本経済を語る

経営学者のみならず著名な経営者(たとえばユニクロの柳井社長や、日本経団連の榊原会長など)や有名経営コンサルタント(マッキンゼーやBCG出身者など)の発言を聞いていると、いち企業の目線でマクロ経済を語っているふしがあります。たとえば実証的に効果が測定しにくい(短期的な成果が望めない)成長戦略(特に生産性の向上的なものやイノベーション)を、やたらと強調するといったことです。

それはマスコミやそれに登場する評論家の発言の多くにも感じられます。発言を聞いていると、その人のパラダイム(思考の枠組み)がわかってしまうのです。


■スコープのズームを柔軟に調整する

もちろんマクロ環境がどうであれ、企業としては存続しなければなりません。「財政政策をすべきだ」「金融緩和すべきだ」と経営者にアドバイスするコンサルタントはいません。

ここまでミクロ的な視点を批判してきましたが、私はなにもミクロ的な視点が悪いと言っているわけではありません。経営者としての立場と政策提言者としての立場では視点を変えるべきだということを言いたいのです。

このようにミクロの視点とマクロの視点を使い分けることはビジネスパーソンにとっても必要なことだと思います。個々の努力でなんとかなる部分とそうではない部分は必ずあるし、個々の努力が全体にとってはマイナスということがあり得るからです。

経済学の学習を通じて、スコープのズームを柔軟に調整するクセを身につけたいものです。


【参考】
『なぜビジネス書は間違うのか』フィル・ローゼンツワイグ著 日経BP社
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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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連絡先:rsb39362(at)nifty.com
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