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経済成長はどうすれば実現するのか?②(経済成長のための必要条件)

前回見たように、経済成長は「低生産性部門から高生産性部門への労働者の移動」「設備投資」「知識や技術・技能の向上」という3つのステップを経ますが、ここで大きな問題が浮かびます。それは「経済成長のステップがわかっているのに、なぜまったく経済成長ができない国が存在するのか?」ということです。


■経済成長の4条件

経済成長については、これまで様々な議論がなされてきましたが、現在、主流となっている制度派の考え方を紹介しましょう。制度派は、「人間の持っているインセンティブを、上手く繁栄の道につなげるような制度を設計することが重要だ」という考え方をとります。

制度派の1人であるウィリアム・バーンスタインによれば、経済成長の要因として、①私的財産権、②科学的合理主義、③近代的資本主義、④迅速で効率的な通信・輸送手段の4つを挙げています。

自分が努力して勝ち得た富が守られるという保障がなければ、努力する意欲は生まれませんから、私的財産権の保障は経済成長の大前提となります。これは自分が発明したり考案したりした場合の知的所有権の保護も含まれます。治安が極度に悪かったり、独裁的な国家では、自分が稼いだものが奪われるリスクが高く、個人が勤労に励むインセンティブが働きにくいのです。

科学的合理主義については、説明するまでもないでしょう。世界が経済成長を始めたのは、産業革命以降のわずか250年間に過ぎず、それまではまったく経済成長をしていませんでした。その背景には様々な理由がありますが、宗教の力が強く、その教えに反するような科学的な考え方が受け入れられず、産業が発達しなかったことも大きく作用しています。地動説を唱えたガリレオ・ガリレイが宗教裁判にかけられたことは、あまりに有名です。

近代的資本主義とは、ざっくりいえば、「市場経済的なシステム」を重視するということです。

迅速で効率的な通信・輸送手段は、社会インフラを整えて、自由な市場取引を支援するということで、これは政府によって行われます。


■経済成長には、教育が必要

バーンスタインの主張では触れられていませんが、5つめの要因として、高い就学率・識字率が挙げられます。教育がなければ、新しい知識は生まれないどころか、仕事に慣れることすらできないでしょう。「知識に投資することは、常に最大の利益をもたらす(ベンジャミン・フランクリン)」、教育が優れた労働者を生み出すのです。

経済成長のための5つの要因は経済成長のための必要条件(成長のためには必要だが、それを満たしても必ずしも経済成長しない)です。これを満たした上で、成長の3ステップを上手く渡っていく必要があります。いわゆる失敗国家と呼ばれる最貧国は、5つの必要条件の多くを満たしていないと考えられます。

「資源国の呪い」という言葉があります。これはアフリカ諸国など資源が豊富な国は、資源に依存して他の産業が育たず、資源開発を巡って内戦や政治腐敗が起こり、経済が成長しないというものです。このような形で国民が貧困状態に陥ると、さらなり治安悪化や争いが起き、投資が進まず、さらに貧困が悪化するという悪循環に陥ります。これを貧困の罠といいます。


【参考】
「もうダマされないための経済学講義」若田部昌澄著 光文社

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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
「中小企業診断士のための経済学入門」※絶賛在庫中!
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