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経済成長はどうすれば実現するのか?⑤(高齢化社会でGDPは減少するか?)

■国の豊かさより1人1人の豊かさ

「高齢化社会で労働力人口の減少が確実視され、日本のGDPは減少する」との指摘が、多くの識者によってなされています。このような主張は妥当なのでしょうか?GDPの規模は、次の式で示されます。

GDPの規模=人口×1人当たりGDP

この数式から、人口が減少すれば、GDPの規模は減少することになります。ただし、もし人口によってGDPの規模が決まるのであれば、人口が多い国ほどGDPの規模は大きいはずです。しかしながら、日本より人口が多い9カ国のうち、日本よりGDPが多い国はアメリカと中国の2カ国だけです。


さらにGDPの規模は労働人口だけでなく、1人当たりGDPによっても決まります。そもそも国の豊かさを図るためには、GDPの規模ではなく、1人当たりのGDP(1人当たりの豊かさ)に着目したほうが妥当です。仮に人口が多く国全体のGDPが大きくても、1人1人が貧しければ良い状態ではありません。先進国の場合、人口増加が期待できない以上、「どうやって1人当たりのGDPを上げるか」に着目したほうがよいでしょう。


■人口減少対策より生産性を上げることが大事

次に、GDP成長率について、考えてみます。

GDP成長率=労働人口の増加率+労働者1人当たりGDP(生産性)の伸び率

では、GDP成長率に対する人口要因のインパクトはどれくらいなのでしょうか。日本の高度経済成長期の1955年から1970年まででGDPは年平均で9.6%成長しましたが、そのうち人口要因は1.1%に過ぎませんでした。つまり「人口が増えたからGDPが増えた分」は、全体の10%強にすぎず、大部分は国民1人1人の生産性の向上によってもたらされたのです。

人口増加の伸びが弱まり、労働人口が減少するにつれ、GDP成長率に占める人口のプラス要因は減少し、高齢化社会が急速に進展した2010年から2030年では、逆にマイナス0.5%と試算されています。安定成長期の労働人口の生産性の伸び率を1.5%とすると、せっかく生産性を上げてもその3分の1が労働人口減少によって失われてしまうことになります。

以上からいえることは、「確かに労働人口の減少はGDPにマイナスに作用するが、そもそもGDPの成長要因の多くは1人当たりの生産性であるので、1人当たりの生産性をどのように上げるかが課題である」ということです。

安定成長期の労働人口の生産性の伸び率を1.5%としましたが、これは何もしなくても達成できる水準です。人手不足感を契機に、創意工夫や無駄の排除、AIなどの高度技術の活用によって、2%以上の生産性向上を図ることは十分に可能です。

実際、人口の増加率が低い国でも1人当たりのGDPの伸び率が高い国は多くあります。1人当たりのGDPのランキングを見ると、1位ルクセンブルク、2位スイス、3位ノルウェーとなっています。これは、人口が伸びない国は、労働力不足に対応するために、より多くの投資を行い、また家族は少ない子供により多くの教育投資をし、1人当たりの物的・人的な資本を高めるからだと言われています。


【参考】
「日本経済論の罪と罰」小峰隆夫著 日本経済新聞社
「日本はなぜ貧しい人が多いのか」原田泰著 新潮社
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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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