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高度経済成長は本当に官僚主導だったのか?

今となっては昔話ですが、1979年に出版された「ジャパン・アズ・ナンバーワン」を契機に、「日本の経済成長をもたらしたものは何か」への国際的関心が高まりました。

おおよそ日本の雇用慣行(終身雇用、年功賃金、企業別労働組合)と官僚組織による重点分野への積極的支援・育成にその要因を求めるものがほとんどだったと思います。優秀な財務・通産官僚によって高度経済成長がもたらされたというわけですね。いわゆる日本株式会社論です。

テレビドラマ化もされた城山三郎作の「官僚たちの夏」(注1)をお読みになった方もいらっしゃるかもしれません。現在でも経産省に入省すると必ず読まされるとどこかで聞いたことがありますが、本当でしょうか。

さて、「政府が有望分野を見つけ、それに対し補助金や優遇税制などの財政的支援を与え、育てていく政策」のことを、産業政策と言います。今ではあまり使われなくなった言葉ですが、成長戦略と名前を変えて現在でも行われています。

では日本の産業政策は本当に重点産業を育て、経済成長へと導いたのでしょうか。
一橋大学の竹内教授は、主に国際競争力という観点から、20の成功産業(注2)と7つの失敗産業(注3)に焦点を当て、次のように結論づけています。

・成功産業において政府による積極的な支援政策(補助金、税制上の優遇措置、外資規制、カルテル公認などの競争抑制策、官主導の研究開発プロジェクト)はほとんど存在しない。

・一方、失敗産業においては政府の介入は甚だしい(上記の括弧内の政策による競争排除)。


ただし、すべての政策が無駄であったというわけではなく、①資本投資を促進する政策、②基礎教育制度の充実、③工学部卒の人材供給については効果があったとしています。

日本の経済成長の象徴であるソニー(創業期、政府からトランジスタラジオの技術導入のための外貨割り当てを拒否される)やホンダ(産業集約化を進める政府から四輪車事業への進出を強硬に反対される)の例を考えれば分かりやすいかもしれません。また護送船団方式で守られてきた日本の金融機関が世界的な競争力を有しているとは言い難い状況を見れば察しがつくでしょう。

ここから言えるのは、政府が有望分野を見つけることは不可能であること、政府は特定産業には結びつかない基本的な環境(上記①~③)の整備に徹すること、あとは個々の企業の努力に委ねることです。このことはアベノミクス第3の矢である成長戦略の難しさを説明するとともに、イノベーションの難しさ(事前に何が当たるか分からない)についても示唆しています。

注1:高度経済成長期の通産官僚たちの姿を描いた小説。
注2:半導体、VTR、FAX、家庭用AV、タイプライター、マイクロ波および衛生通信機器、楽器、産業用ロボット、家庭用エアコン、ミシン、炭素繊維、合成繊維、カメラ、醤油、テレビゲーム、自動車、フォークリフト、トラック・バス用タイヤ、トラック
注3:民間航空機、科学、証券業、ソフトウェア、洗剤、アパレル、チョコレート

【参考】
「日本の競争戦略」マイケル・E. ポーター、竹内弘高著 ダイヤモンド社
「日本国の原則」原田泰著 日本経済新聞社

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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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