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予算は支出額が大きいほど早く決まる?

今回は「人は無能になるまで出世する」で少しご紹介したパーキンソンの法則について取り上げたいと思います。パーキンソンの法則は、1957年に発表された論文に基づいたものですが、現在でも組織というものを考える上で示唆に富むものです。

パーキンソンはイギリスの社会・政治学者で、「役人の数がなぜ多いのか、会議の運営や決定はなぜ上手くいかないか」を研究しました。これによると、「役人の数は、なすべき仕事の量に関係なく、一定の割合で増加する」という一般則が成立します。この背後には、3つの原理があります。


(1)役人は常に部下を増やすことを望むが、自分の競争相手を作ることは望まない。

(2)役人は相互の利益のために仕事を創り出す。

(3)組織が大きくなると、その組織を運営するための新しい仕事が増える。


さらに会議の効果について、次のような観察をしています。

(1)会議の決議においては、中間派の票が最終的に重要である(中間派の理論)。

(2)財政の1項目の審議に要する時間は、その項目の支出額に反比例する(凡俗の法則)。

(3)委員会の定数は5人が理想的だが常に増加し、20人を超すと上手く機能しなくなる



ここでは凡俗の法則について、「パーキンソンの法則」(C.N.パーキンソン著 至誠堂)から、例を取り上げて説明してみます。イギリスで11人の国会議員メンバーから成る予算委員会が次の3つの議題について、審議しているとします。

議案1:原子炉の設計・調査費の予算審議(1千万ポンド)
議案2:職員のための自転車置き場建設の予算審議(350ポンド)
議案3:福祉委員会での年間茶菓代の予算審議(21ポンド)

原子炉については専門的な知識が求められ、官僚から技術的な説明があっても11人のうち9人は理解できません。そもそも額が大きいのでイメージがつかないということもあります。残りの2人も専門的な話をしても他の委員はどうせ理解できないのだからと発言を控え、その結果、短時間で予算は裁可されます。

議案2・3になるにつれ、他の委員もイメージが沸いてきます。たとえば「屋根を付けるのかどうか」「屋根の材質はどうするのか」「係員の時給はいくらか」「コーヒーは出るのか」「どこの菓子なのか」といった具合です。このように金額が小さい予算項目のほうが、議員のイメージがつきやすく、議論が長時間になるというのです。

みなさんは、ミーティングの場で、「なんでこんなに些細なことを延々と議論しているのだろう」と感じたことはないでしょうか。これは凡俗の法則の例だと言えるのではないでしょうか。

また、新国立競技場についても、大型のハコモノについてはほとんど経験のない文科省(せいぜい学校や美術館レベル)の不手際が指摘されていますが、これも凡俗の法則の結果とも言えるのかもしれません。民主党時代の有識者会議のメンバーも含め、オリンピック組織委員会会長の森喜朗元総理や事務総長の武藤敏郎元財務次官が内容を熟知していなかったことは間違いないでしょう。規模が大きすぎてほとんどイメージできなかったが故にえいっと決めてしまったというような。

その後もパーキンソンは数々の著作の中で、現代社会における行政組織や企業の中の諸現象をとらえて、次のような法則を発表しています。

 「支出の額は、収入の額に達するまで膨張する(第2法則)」

 「拡大は複雑を意味し、複雑は腐敗を意味する(第3法則)」
 
 「ある組織の立派な建造物の建設計画は、その組織の崩壊時点に達成され、その完成は組織機能の終息を意味する(注)」


第2法則については、年度末の予算消化が典型例でしょう。

第3法則については、行政組織などによる各種の規制(業務権限の拡大)がその例でしょう。たとえば6月に道路交通法が改正され、信号無視や酒酔い運転など14項目が「危険運転」に指定され、摘発されると有料の講習受講あるいは罰金が課されるようになりました。罰金は地方自治体を通じて警察の財源になりますし、民間に委託するであろう自転車監視員制度が創設されると新たな天下り先ができます。講習やそのための教材についても然りです。このように規制を増やすと、その分、利権(腐敗)が増えるのです。

パーキンソンの法則は行政組織の逆機能について扱っていますが、どのような組織にも見られる現象です。

注:
「ビジネス版 悪魔の辞典」(山田英夫著 日本経済新聞社)によれば、「本社ビル:業績悪化の前年に完成される記念碑」とあります。

【参考】
「パーキンソンの法則」C.N.パーキンソン著 至誠堂
「経営参謀の発想法」後正武著 PHP研究所
「ビジネス版 悪魔の辞典」山田英夫著 日本経済新聞社
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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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