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エスカレートする交渉(勝者の呪い)

次のケースを考えてみてください。

あなたは交渉術のセミナーに参加しています。講師の大学教授はポケットから100ドル札を取り出してこう告げます。

「これから、この100ドル札のオークションをします。参加するかどうかは自由で、見ているだけでも構いません。5ドルから始めて、5ドル刻みでコールしてもらい、入札者がいなくなるまで続けます。最高価格で落札した人は、その価格を支払ってもらい、100ドル札を渡します。このオークションには、ふつうと違う点が1つだけあります。入札価格が2番目に高かった人にも、その額を支払ってもらうのです。当然ながら100ドル札はもらえません。たとえばAさんが15ドル、Bさんが20ドルで入札し、そこでオークションが終われば、Bさんは「100ドル-20ドル」で80ドル得します。2番目のAさんは15ドル払ってもらいます。」

あなたなら、このオークションに参加しますか?



これは交渉術や意思決定理論の権威であるマックス・ベイザーマン教授が教室でよく試す実験です。大抵は入札額が60~80ドルにつり上がると、上位2人を除いて脱落します。上位2人の心情を考えてみてください。それぞれ既に80ドルをビットしており、ここで負ければ80ドル丸々損しますから、それなら利幅が少なくなっても負けるよりましと考えてさらに高い額でビットします。そうこうしているうちにビット額は100ドルを超えます。100ドルのために100ドル以上(たとえば110ドル)出すのは馬鹿げているのですが、これまでの経緯からそうせざるを得ません。負ければ110ドルの損ですが、勝てば10ドルの損に抑えられるからです。

かくしてオークションは破壊的な結末に終わり、勝者ですら損をすることになります。これを「勝者の呪い」と言います。

結論から言えば、このオークションには最初から参加すべきではありません。勝者の呪いは、親権争い、労働争議、企業買収の入札、相見積もり競争、価格競争など様々な場面で見られます。

交渉に当たっては、勝者の呪いに陥っていないか冷静に見つめ直す余裕がほしいところです。



【参考】
「交渉の達人」ディーパック・マルホトラ、マックス・H・ベイザーマン著 日本経済新聞社


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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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