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システム1とシステム2

今回は、行動経済学の第1回です。いつものように定義づけから入りたいと思います。

行動経済学は、実際の人間による実験やその観察を重視し、人間がどのように選択・行動し、その結果どうなるかを究明することを目的とした経済学の一分野です。歴史は浅く、1970年代末に学問分野として成立したと言われています。

2002年には、ダニエル・カーネマンがノーベル経済学賞を受賞したことで日本でも有名になり、ブームとも思えるほど多数の書籍が出版されました。

さて定義だけ見ると、それまでの経済学と同じではないかと思われるかもしれません。ひとことで言えば、心理学的要素を強く取り入れたということです。

伝統的な経済学は人間を合理的な主体とみなしているのに対し、行動経済学は認知心理学(情報処理の観点から人間の認知活動を研究する学問)の成果をとりあげつつ、専ら人間の非合理的な側面に注目している点が異なります。要は欠陥だらけの人間を扱っているわけですね。そもそもカーネマン自身が心理学者であり、認知心理学との明確な区別は意識する必要はないかと思います。

カーネマンは、人間の思考モードを2つのシステムに分けて考えています。

システム1
自動的に高速で働き、努力はまったく不要か、必要であってもわずかである。また、自分のほうからコントロールしている感覚は一切ない。(自動的、速い、連想的、感情的)

システム2
複雑な計算など頭を使わなければできない困難な知的活動にしかるべき注意を割り当てる。一連の段階を踏み順序立てて考えを練り上げる。(努力を要す、遅い、意識的、規則的、客観的)


基本的には、システム1はヒューリスティック的な思考(これまでの経験や知識をもとに直感的に判断する)であり、システム2は合理的・論理的な思考と考えてよいと思います(注)。

行動経済学の主要なテーマはシステム1です。良く言えば直感ですが、おっちょこちょいの早とちりとも言えます。カーネマンは、システム1の特徴として、次のことを挙げています(一部省略)。人間にはもともとこのような傾向があるということです。

・印象、感覚、傾向を形成する。システム2に承認されれば、これらは確信、態度、意志となる。

・自動的かつ高速に機能する、努力はほとんど伴わない。主体的にコントロールする間隔はない。

・特定のパターンが感知されたときに注意するよう、システム2によってプログラム化可能である。

・適切な訓練を積めば、専門技能を磨き、それに基づく反応や直感を形成できる。

・認知が容易なとき、真実だと錯覚し、心地よく感じ、警戒を解く。

・驚きの感覚を抱くことで、通常と異常を識別する。

・因果関係や意志の存在を推定したり発明したりする。

・両義性(1つの事柄が相反する二つの意味を持っていること)を無視したり、疑いを排除したりする。

・信じたことを裏付けようとするバイアスがある。

・感情的な印象ですべてを評価しようとする。

・手元の情報だけを重視し、手元にないものを無視する。

・意図する以上の情報処理を自動的に行う。

・難しい質問を簡単な質問に置き換えることがある。

・状態よりも変化に敏感である。

・低い確率に過大な重みをつける。

・利得より損失に強く反応する。

・関連する意思決定問題を狭くフレームし、個別に扱う。

これらについては、回を改めて例を取り上げていきたいと思います。

注:
より合理的・論理的な思考であるというだけで、必ずしもその精度は問わない点には注意が必要です。システム1よりは熟慮を伴う思考というニュアンスです。

【参考】
「ファスト&スロー(上)」ダニエル・カーネマン著 早川書房
「経済学的にありえない。」佐々木一寿著 日本経済新聞出版社
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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「中小企業診断士のための経済学入門」※絶賛在庫中!
連絡先:rsb39362(at)nifty.com
※ (at) は @ に置き換えて下さい
(お急ぎの場合は携帯電話までご連絡ください)

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