日本が財政破綻する確率は?②
■リスクプレミアムとは?
ファイナンス論では、「個別債券の金利=リスクフリーレート+リスクプレミアム」と教えられます。リスクフリーレートとは、最もリスクのない(安全な)債券の金利で、通常は国債の金利です。リスクプレミアムとは危険負担料と訳され、個別の債券独自のリスクを反映したものです。
たとえばある企業の社債の金利は、国債の金利に、その企業の財務リスク(経営破綻して社債が暴落する可能性)などのリスク要因から決まるリスクプレミアムが加算されて決まります。投資家から見れば「リスクがあるからその分リターンの上乗せが欲しい」、企業から見れば「リスクがあるからその分リターンを上乗せしないと投資家が自社の債券を買ってくれず資金調達できない」と考えてもらえればよいです。
■日本国債のリスクプレミアム
国債の場合、名目金利の理論値と実際値の乖離からリスクプレミアムを算定する分析が内閣府などで行われています。この場合も将来のリスクに対して投資家が要求する金利の上乗せ分であることには変わりがありません。財政問題が深刻化すれば国債のリスクプレミアムは上昇します。
日本国債のリスクプレミアムの推移を見ると、1990年代前半に0%から1%の間で推移していたのが、1997年くらいからマイナスに転じ、以後、一貫してマイナス領域で推移しています。リーマンショック後に0%近くまで上昇しましたが、2013年4月の量的金融緩和以降は下降に転じ、マイナス2%くらいでの推移になっています。
現在の日本国債のリスクプレミアムの水準を他のG7諸国と比べてみると、アメリカ・イギリス、カナダ、ドイツ、フランスと同程度です。ちなみにリスクプレミアムが20年以上マイナス圏なのは日本くらいなものです。
このことからも投資家は日本の財政問題をせいぜいG7の標準並みにしか捉えていないことがうかがえます。
【参考】
「アベノミクスは進化する」原田泰、片岡剛士、吉松崇編 中央経済社