衆院解散と消費税のゆくえ
■北朝鮮に追い込まれ解散?
25日、安倍首相は衆院解散を表明した。相変わらずマスコミの論調は「大義なき解散」といった政権批判が多く、「モリカケ隠し解散」だの「政権維持解散」といった声もあります。
支持率が回復基調とは言え、十分に上がっていない状況で解散に踏み切ったのは、北朝鮮対応であることは素人にもすぐに分かる話だと思います。衆議院議員の任期満了は2018年の12月ですが、来年になると半島情勢がどうなるか分からず選挙どころではない、今年11月にトランプ大統領の日中韓訪問が予定されており、それまでは戦争のリスクが低いので今のうちに選挙をやるという判断でしょう(もちろん民進党の混乱や小池新党の体制が整う前に解散したほうが有利という判断もあったとは思いますが)。
まさか「来年は戦争になるから」とは言えないでしょうから、25日の首相会見の中では消費税の使途変更の是非を問うことが大義とされましたが、安倍首相も北朝鮮問題についてかなり言及しており、それが解散に踏み切った理由であることがうかがわれます。
■消費税を大義にできない事情
2週間ほど前に解散の話が出始め、それに続いて消費税の使途変更が争点になるとの報道を聞いて、私のようなリフレ的な考え(緩やかなインフレーションを目指す)を持つ人は「これで2019年の10%への消費増税が決まりか」とがっかりしたと思います。
二度の延期からも分かるとおり、安倍首相は消費税引き上げには消極的ですが、与党内は増税派のほうが圧倒的に多く、安全保障問題を優先して、今回は争点にできなかったというのが妥当な見方でしょう。
しかしながら、消費増税による5兆円の税収の使途を、現在の「社会保障の充実:1兆円、国債の返済;4兆円」から「社会保障の充実:1兆円、幼児教育の無償化や高等教育の負担軽減:2兆円、国債の返済;2兆円」とし、2020年のプライマリーバランス(基礎的財政収支)黒字化目標を撤廃したことは、安倍首相が財政再建を最優先しない、景気回復を優先するという意思の表れと見ることができます。
■消費増税は決まったわけではない?
さて報道されているとおり、民進党の希望の党への合流が決まり、俄然政局の不透明感が増してきました。これまでは与党も野党第一党の民進党も消費増税派で消費税凍結は言い出しにくい雰囲気でした。そもそも消費増税を決めたのは野田政権下の民・自・公の三党合意です。
しかしながら、現時点での野党の主張を見ると、希望の党、日本維新の会、自由党、共産党は消費税延期・凍結で、仮に野党サイドの増税派の中核が崩壊すると、改めて消費税引き上げが争点になる可能性が高いです。タイミング的にはぎりぎりなので少し考えにくいかもしれませんが、2019年7月の参議院選挙で消費増税の是非が問われるかもしれません。
繰り返し述べているように、そもそも安倍首相は増税に乗り気ではないと思われますから、野党からの消費税延期・凍結の要求が高まると、これ幸いとそれに乗る可能性は充分あると思います。