囚人のジレンマ①
最近の北朝鮮を巡る米・中・ロの動き、そして小池百合子氏の行動を見ていると、深謀遠慮な駆け引き行動が目につきます。このような駆け引きを考える学問をゲーム理論と言います。ゲーム理論は政治行動のみならず、営業活動や社内の交渉にも応用することができます。自分の望む利益を得るためには、まずは「この取引はどういうゲームなのか」把握する必要があります。
■ゲーム理論とは?
ゲーム理論とは、複数の意思決定者の間に相互依存関係を分析する理論です。たとえば自分の行動が相手の利害に影響を及ぼし、逆に相手の行動も自分に影響を及ぼすということはよくあることです。
このような状況では、お互いに相手の出方を予想したり、自分がある行動をとったら相手がどう反応するかを読んだりするといった駆け引きが行われます。よって、ゲーム理論は、駆け引きを考えるための理論と言い換えることもできます。
■ゲームのパターン
取引(ゲーム)にあたっては、お互いに相手の行動を知らない場合が少なくありません。このような状況下でのゲーム(取引)の代表的なパターンには、次の3つがあります。
●同時手番ゲーム(同時進行ゲーム)
各プレイヤーが同時(あるいは時間的経過を考慮せず)判断し行動する。
●展開型ゲーム(交互進行ゲーム)
各プレイヤーの意思決定のタイミングが順番に訪れる。たとえばプレイヤーAが打った手を受けてプレイヤーBが手を打つといったゲームです。
●繰り返しゲーム
ゲーム(取引)が1回で終わるのではなく、繰り返される。取引が永遠に続くということはありませんが、取引がある程度の期間、継続することを前提とするものです。
■ナッシュ均衡
まずゲーム理論の基本中の基本である同時手番ゲームについて、何回かに分けて見ていきましょう。ゲーム理論では、次のようなペイオフ・マトリックス(利得表)というものを使います。
仮にライバル関係にあるA社・B社の2社があったとします。それぞれ相手と「協調する」「強調しない」の2つの選択肢(戦略)があり、自社と相手の選択によって、利益が変わります。表の数値はそれぞれの場合の利益です。たとえば「A社:協調、B社:協調」なら、A社の利益は10でB社の利益は105です。「A社:非協調、B社:協調」なら、A社の利益は12でB社の利益は4です。
戦略は相手の行動が分からない状態で決めなくてはなりません。では、この場合、互いにどのような選択をする形で落ち着くでしょうか。それぞれの立場から考えてみます。
<A社の戦略について>
A社は、B社の出かたを窺いつつ戦略を決める。
・B社が「協調」を選択すると想定すると、A社は「協調」で10、「非協調」で12の利得を得る。よって、「非協調」に決める。
・B社が「非協調」を選択すると想定すると、A社は「協調」で4、「非協調」で6の利得を得る。よって、「非協調」に決める。
以上から、A社はB社が協調・非協調どちらでこようと「非協調」が合理的な判断となります。
<B社の戦略について>
B社は、A社の出かたを窺いつつ戦略を決める。
・A社が「協調」を選択すると想定すると、B社は「協調」で10、「非協調」で12の利得
を得る。よって、「非協調」に決める。
・A社が「非協調」を選択すると想定すると、B社は「協調」で4、「非協調」で6の利得を得る。よって、「非協調」に決める。
以上から、B社はA社が協調・非協調どちらでこようと「非協調」が合理的な判断となります。
つまり相手がどう出てこようとA社もB社も「非協調」が合理的となり、両社とも「非協調」を選択することになります。
このようにゲームに参加する各プレイヤーが、互いに対して最適な戦略を取り合っているという状況をナッシュ均衡といいます。ナッシュ均衡では、各プレイヤーが互いに最適な戦略を取り合っているため、これ以上戦略を変更する誘因を持たず安定的な状況であるということになります。なぜならナッシュ均衡状態の戦略の組み合わせを変えると必ず各プレイヤーは損をすることになるからです。
(つづく)